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◇「周知」

「なんでそんなに」*玲央

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「――――……」


 なんとなく、気配を感じて、閉じていた瞳を開くと。

 優月、瞳を閉じないでじっと見てる。
 キスしながら、見つめ合う。

 すげー可愛いんだよな、これ。
 でもって。


「……っ」

 見つめ合いながら、オレが少し瞳を細めると。
 すぐ、もう無理になるみたいで、ぎゅっと瞳を閉じる。

 口の中、そんなにきつくなく、優しく触れて。
 舌を絡めて、甘いキス、繰り返す。


「……ン、ん……」

 それでも、息があがってきて。ぎゅ、とオレの服を握る。
 その手と繋いで、玄関に軽く、押し付けて。

 また深く口づける。


「――――……」

 今迄、無いんだよな。

 優月としたいと思う事。
 今まで、他の誰とも、したいと思わなかった。

 こんな風に帰ってすぐ、外で出来なかった分、キスしたいなんて事も。
 これ、延々、ずーっとキスしてられるなと、思う事も。
 見つめ合うと照れて、ぎゅっと瞳を閉じるそれだけの仕草が、こんなに、愛しいとか、思う事も。

 なんかもう。
 くっついて、溶けて、ひとつになっちまえばいいのにとか。

 ――――……とても口には出せないような事も、普通に、浮かぶ。


 オレにとって、恋愛とかは遠いもので全然意味も分からないし、別にそんな感情なくても、ただ気持ちいい事できればいいやと思っていたのに。

 可愛いとか愛しいとか思ってすると、もっと気持ちよくなるんだって事も。
 優月とで、初めて分かった。


 だから今日も何か色々言われてたけど……。
 普通に考えて、オレが優月を可愛いと思ってる限り、他の奴に行くとかは無いだろうなと思ってる。

 優月を素直に愛せなくなるかもとか、優月がまっすぐにオレを見れなくなるかもとか。そっちの方が、絶対きついと思うから。
 
 体だけ重ねてても全然満足できていなかった事も、今となっては、分かってるし。


「……ん」

 ちゅ、と最後に舌に触れて、ゆっくりと離す。
 頬に触れて、じっと見つめると。

 おわり?という顔で、ぼーー、とした優月が瞳を開ける。


「――――……優月」
「……うん?」

「キス、息できるようになってきた?」

 くす、と笑って、頬にキスしながら言うと。

「んー……? ……今の感じのなら、ちょっとは吸える、かなあ……」

 ふふ、と笑いながら、答える優月。

「……吸うだけ? 吐くのは??」
「――――……吐くのって、むずかしくない?」

 見上げられて、可愛いと。感じるとか。
 ――――……大体、オレより背の低い奴としかした事ないし、見上げられるなんて、いつもの慣れた事なのに。



「何でお前は、そんな、可愛いの」
「――――……」

 急に漏れた心の声に、優月は、数秒固まって。
 何か言おうとして口を開けた後。言えずに、かあっと赤くなった。


「…っそんな事、まじめに言わないでよ……恥ずかし――――……」


 ああ、玄関でずっとキスしてるのもなーと思って、せっかく離してあげたんだけど……。



 ダメだな。可愛すぎ……。

 オレは、真っ赤な優月の顎を捕らえて、キスして。そのまま、抱き込んだ。







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