376 / 838
◇「周知」
「過去の話」*優月
しおりを挟む笑ってしまっていたら、「ん?」と見下ろされて、ううん、と首を振る。
肩はすぐ離されて、部室行くか、と玲央が言う。
「村澤も来れたんだな」
歩き出しながら、玲央が智也に言うと、智也は苦笑いを浮かべた。
「オレ、ほんとは今日買い物に行きたかったんだけどさー、西野……じゃなく、稔がどーしても来てって」
あ、智也も稔って呼ばされてる。
面白いなあ、とクスクス笑いながら。
「だって智也には、優月の昔の事聞きたいし」
稔って、智也の事ももう普通に呼んでる。智也は呼び直してる位なのに。
なんかすごいなあ~、稔の方には、全く違和感ない。
なんて、感心しながら、話を聞いていたら。
ん? 今、オレの昔の事って言った?
オレが稔と智也の方に顔を向けると、智也はオレと視線を合わせて、苦笑い。
「そう言うんだけど……別に、優月の昔の話って、なんかあるかな??」
「……さあ??」
「優月の事全部話したって、何も困る事ないよなあ?」
「うん……どうだろ……??」
智也の言葉に首を傾げてると、稔は、クスクス笑って。
「玲央は、昔の話されたら、困る事しか無いだろ」
面白そうに笑ってそう言う稔に、玲央はジロ、と軽く睨む。
でも稔はいっこうにめげずに。
「ほんとなんか、色々正反対って感じだな、お前ら。一緒に居て、合うの?」
笑いながらそう聞いて。返事は待たずに、部室の建物への階段を駆け足で上る。
「今日いっぱい観察させてもらおーっと。ほら、早く玲央たちの部室行くんだろ、いこーぜ」
ご機嫌で言うと、稔はさっさと建物に入って行った。
観察……。
思って固まってると。
玲央が嫌そうに。
「優月、やっぱりやめとく? かえろっか?」
そう言ったけど。「早く来ーい!!」と稔の呼ぶ声がして。
はー、とため息をついて歩き出す玲央の後ろで、智也と苦笑いで顔を見合わせた。
「智也、バンドの人達も知らないよね? なんかオレの事で買い物行けなくてごめんね?」
「いや、ていうかそれ言うなら、優月じゃなくて、稔だから」
クスクス笑って智也がオレを見る。
「まあそうかもだけど、間接的に……?」
「いーよ、オレも、優月が神月の仲間と、どんな感じなのかも、ちょっと見たかったし」
「あ、心配?」
「心配とかはしてないし、優月大丈夫なんだろうけどさ。バンドのメンバー見た事あるけど、結構派手だし? どーやって仲良くしてんだろうとは思った」
「あは。 確かに、派手だね、皆」
「うん。まあ、稔と神月しか知らないけど、まあ優月居るし、別にいいかなと思って、今日はこっち来た」
「智也、誰とでも話せるもんね」
「――――……」
そう言うと、智也は、ちょっと止まってオレを見た。
「それ、優月に言われると、笑う」
「ん??」
「優月より色んな奴と話せる奴見た事ないけど」
「……そう?」
「……まあ、いいけど。ほら、神月、待ってるよ」
「あ、うん」
クスクス笑われて。
前で立ち止まってる玲央の所に急いだ。
「優月の話は聞きたいけど、優月は聞かなくていいからな」
玲央がすっごく嫌そうにそう言ったのを聞いて、少し後ろで智也がクッと笑い出す。
「何聞いても、何も変わんないよ」
オレも笑ってしまいながら、そう答えた。
377
お気に入りに追加
5,436
あなたにおすすめの小説
オメガの復讐
riiko
BL
幸せな結婚式、二人のこれからを祝福するかのように参列者からは祝いの声。
しかしこの結婚式にはとてつもない野望が隠されていた。
とっても短いお話ですが、物語お楽しみいただけたら幸いです☆

無自覚お師匠様は弟子達に愛される
雪柳れの
BL
10年前。サレア皇国の武力の柱である四龍帝が忽然と姿を消した。四龍帝は国内外から強い支持を集め、彼が居なくなったことは瞬く間に広まって、近隣国を巻き込む大騒動に発展してしまう。そんなこと露も知らない四龍帝こと永寿は実は行方不明となった10年間、山奥の村で身分を隠して暮らしていた!?理由は四龍帝の名前の由来である直属の部下、四天王にあったらしい。四天王は師匠でもある四龍帝を異常なまでに愛し、終いには結婚の申し出をするまでに……。こんなに弟子らが自分に執着するのは自分との距離が近いせいで色恋をまともにしてこなかったせいだ!と言う考えに至った永寿は10年間俗世との関わりを断ち、ひとりの従者と一緒にそれはそれは悠々自適な暮らしを送っていた……が、風の噂で皇国の帝都が大変なことになっている、と言うのを聞き、10年振りに戻ってみると、そこに居たのはもっとずっと栄えた帝都で……。大変なことになっているとは?と首を傾げた永寿の前に現れたのは、以前よりも増した愛と執着を抱えた弟子らで……!?
それに永寿を好いていたのはその四天王だけでは無い……!?
無自覚鈍感師匠は周りの愛情に翻弄されまくる!!
(※R指定のかかるような場面には“R”と記載させて頂きます)
中華風BLストーリー、ここに開幕!

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。
N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い)
×
期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい)
Special thanks
illustration by 白鯨堂こち
※ご都合主義です。
※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる