【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

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◇「周知」

「過去の話」*優月

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 笑ってしまっていたら、「ん?」と見下ろされて、ううん、と首を振る。
 肩はすぐ離されて、部室行くか、と玲央が言う。


「村澤も来れたんだな」

 歩き出しながら、玲央が智也に言うと、智也は苦笑いを浮かべた。

「オレ、ほんとは今日買い物に行きたかったんだけどさー、西野……じゃなく、稔がどーしても来てって」

 あ、智也も稔って呼ばされてる。
 面白いなあ、とクスクス笑いながら。

「だって智也には、優月の昔の事聞きたいし」

 稔って、智也の事ももう普通に呼んでる。智也は呼び直してる位なのに。
 なんかすごいなあ~、稔の方には、全く違和感ない。

 なんて、感心しながら、話を聞いていたら。
 
 ん? 今、オレの昔の事って言った?
 オレが稔と智也の方に顔を向けると、智也はオレと視線を合わせて、苦笑い。

「そう言うんだけど……別に、優月の昔の話って、なんかあるかな??」
「……さあ??」
「優月の事全部話したって、何も困る事ないよなあ?」
「うん……どうだろ……??」

 智也の言葉に首を傾げてると、稔は、クスクス笑って。

「玲央は、昔の話されたら、困る事しか無いだろ」

 面白そうに笑ってそう言う稔に、玲央はジロ、と軽く睨む。
 でも稔はいっこうにめげずに。

「ほんとなんか、色々正反対って感じだな、お前ら。一緒に居て、合うの?」

 笑いながらそう聞いて。返事は待たずに、部室の建物への階段を駆け足で上る。

「今日いっぱい観察させてもらおーっと。ほら、早く玲央たちの部室行くんだろ、いこーぜ」

 ご機嫌で言うと、稔はさっさと建物に入って行った。

 観察……。
 思って固まってると。

 玲央が嫌そうに。

「優月、やっぱりやめとく? かえろっか?」

 そう言ったけど。「早く来ーい!!」と稔の呼ぶ声がして。

 はー、とため息をついて歩き出す玲央の後ろで、智也と苦笑いで顔を見合わせた。
 
「智也、バンドの人達も知らないよね? なんかオレの事で買い物行けなくてごめんね?」
「いや、ていうかそれ言うなら、優月じゃなくて、稔だから」

 クスクス笑って智也がオレを見る。

「まあそうかもだけど、間接的に……?」
「いーよ、オレも、優月が神月の仲間と、どんな感じなのかも、ちょっと見たかったし」

「あ、心配?」
「心配とかはしてないし、優月大丈夫なんだろうけどさ。バンドのメンバー見た事あるけど、結構派手だし? どーやって仲良くしてんだろうとは思った」
「あは。 確かに、派手だね、皆」
「うん。まあ、稔と神月しか知らないけど、まあ優月居るし、別にいいかなと思って、今日はこっち来た」

「智也、誰とでも話せるもんね」
「――――……」

 そう言うと、智也は、ちょっと止まってオレを見た。

「それ、優月に言われると、笑う」
「ん??」

「優月より色んな奴と話せる奴見た事ないけど」
「……そう?」

「……まあ、いいけど。ほら、神月、待ってるよ」
「あ、うん」

 クスクス笑われて。
 前で立ち止まってる玲央の所に急いだ。 


「優月の話は聞きたいけど、優月は聞かなくていいからな」

 玲央がすっごく嫌そうにそう言ったのを聞いて、少し後ろで智也がクッと笑い出す。

「何聞いても、何も変わんないよ」

 オレも笑ってしまいながら、そう答えた。


 

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