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◇「周知」

「勇紀と」*優月

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 玲央がオレの為に選んでくれたという香水をつけてくれて。
 それがほんとに、いい匂いで。

 玲央がいつも、オレが居ない時に、オレの為に何かを選んでくれるのが、本当に嬉しい。だって、居ない時も、考えてくれてるって事だし。
 オレはいっつも玲央が頭にあるけど、玲央も、少なくともそう言う時は、絶対オレの事思い出してくれてるんだって、分かるから。
 
 何かをくれるから嬉しいっていうよりは。
 それを選んでくれる時に、オレを思ってくれてるっていう事が、嬉しくて。

 手の中にある香水の小瓶が、もう、幸せの塊みたいで。
 触れてるだけで、本当に、嬉しい。

 玲央と離れたくないななんて思いながら、それを伝えたら。
 玲央も分かってくれて。なんかもうそれで大満足で、離れようとした時。


 急に引き寄せられて、うなじに、玲央が近づいた。

 あ、匂いかなとは思ったのだけど――――……ぞく、と一瞬してしまって。
 それが恥ずかしくて、真っ赤になっちゃった時。


 勇紀が玲央に、突っ込んできた。
 まくし立てる勇紀に、玲央が嫌そうに否定しだす。

 ああ、なんか、いつも通りだなーと思って、笑ってしまう。

 オレと居る時とは、違う感じの玲央。
 ――――……こんな感じも、楽しそうで好きだなあと。


「優月、人前で恥ずかしかったら、断っていいんだよ?」

 勇紀がそんな風に言って、オレを見つめる。
 玲央を見上げると、玲央は、ん、とオレを見つめ返す。


「大丈夫」

 ふ、と微笑むと、玲央の手が、オレの頭をヨシヨシしてくる。

「だからさー、優月が可愛いのは分かるけど、玲央は、すっげー目立つんだからな、それ、ちゃんと自覚しろよ」
「――――……」

 勇紀の言葉に玲央が、んー、と考える。

「……でもオレも優月も、バレてもいいし。な?」
「うん」

「はーやだやだ。まだちゃんとばらしてないんでしょ、優月」
「あ、うん」

「じゃあもう、単なるうわさの的んなっちゃうよ?」
「……ああ、なるほどー」

 確かに、玲央といると、皆がその事聞いてくる。


「確かに、玲央、目立つよねぇ……オレ、目立たないと思うんだけど」
「……でも、オレ、最近一緒に居る見慣れない奴誰ってよく聞かれるけど」
「……それは、オレが目立ってるんじゃなくて、玲央が目立ってて、脇に居るっていうだけなんじゃないのかな??」

 オレがそう言うと、玲央と勇紀が顔を見合わせて、んー、と考えてる。

「玲央の目立つのはダントツだけど…… 今まで玲央が居たタイプと、優月が全然違うからさ、なんか、逆の意味で、すごい目立ってんだよね……」

 と、勇紀。

「だって、オレですら、何回か聞かれたよ」
「何をだよ?」

 首を傾げてる玲央に、勇紀は、くすくす笑いながら。

「玲央が珍しいのと仲良く居るの見たんだけど、あれなに?って」
「誰に?」

「耕人とかー千葉とかー清瀬とかー色々」
「ああ……あ、ずっと今まで一緒の奴らな」

 と、玲央がオレに説明してくれてから、玲央は苦笑いで勇紀を見た。

「お前なんて答えてんの?」
「最近仲いいみたいだよって。それだけにしてる」
「ああ。それでいいよ。な?」

 玲央に聞かれて、うん、と頷く。


「誰に何て言われても別に関係ないけど……優月が何か嫌な思いしたら、すぐ言って。考えるから」

 玲央の言葉に、嬉しくて頷くと。
 隣で勇紀が何とも言えない顔をしていて。

「勇紀??」

 声をかけたら、勇紀が、玲央に急に抱き付いた。


「なんか、成長したな、玲央……」

 玲央は、はーーー、とため息を付きながら。

「なー……。お前、オレが目立つって言ったよなー。お前だって結構目立つんだからな…… オレとお前が抱き合ってたら、こっちのが目立つと思わねえ……?」

 疲れたように言う玲央に、「確かに」と苦笑いで勇紀が離れる。

「だってなんか、玲央がすっごい優しい事、優月に言うから……感動しちゃって」

 勇紀が玲央に言ってるのを見てると、なんか、微笑んでしまう。


 

 





 
 
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