367 / 830
◇「周知」
「初めてなら?」*玲央
しおりを挟むこれ何?……って何だ?
そう思いながら部屋に戻ると、優月が居たのは、小さな扉の前。
扉を開けようとして、手をかけてる。
「玲央、ここ開けてもいい?」
「いいけど、そこ多分――――……」
多分、アダルトなグッズが入ってると思う……。
一瞬、言葉を選ぼうかと言い淀んだせいで、遅れた。
優月は、「いいけど」の時点でもう、扉を開けていた。
「昨日から、何の扉だろうってずっと気になってて……??」
開けて、中を見てる優月は、固まってる。
「何だろう、これ。 自販機??」
開けても、まだ分かってはいないみたいだった。
どんな感じで置いてあるとこなんだろう、と、後ろからのぞき込むと。
ああ、確かに自販機みたいになってるな。
金を入れて、ボタンを押すと、そのグッズが出てくる感じに。
あんまりぱっと見、形状とか分かるようにはなってない。多分ぶら下がってるパンフみたいのに詳しく書いてあるんだろうけど。
まだ多分、優月は、何が入ってるのか気づいてないみたいで。
可笑しくなって、クッと笑い出してしまったら、
え?と優月がオレを見上げてくる。
無邪気な顔に、何だか、イタズラしたい気分が沸き起こるのは、何でだろう。
優月の肩に手をかけて、一緒に覗き込む。
「これさー優月」
「うん?」
自販機じゃなくてオレをまっすぐ見てる優月が可愛いけど。
「見てみな、ここ、何て書いてある?」
これなら分かるかなというのを指さして、聞いてみる。
「んーと…… スーパー、バイ……ブ……――――……」
優月が目をパチパチさせて。
ん?と思ったらしくて。
違う所の名前もさっと見て、目隠しやら手錠やら、また違うあやしげな名前をちゃんと見たらしく。「あ」と、口を覆った。
「これって、もしかして……」
「ん。アダルトグッズだな」
言った瞬間、みるみる見事に真っ赤になる。
あー。
何なの。この、すげー可愛い反応。
オレの周りの奴らが見たら、すっげー楽しそうに、あれやこれや買い出して、騒いでそうなのに。
「ご、めん、へんなとこに呼んで……」
言いながら、ひゅー、と扉を閉めようとしてる優月。
なんかもう可愛すぎて、ますますからかいたくなって。扉を閉める手を止めた。
「玲央??」
何で止めるの?といった顔で見上げられる。
「欲しいのあったら買ってあげるけど」
「……え……ううん、無いよ??」
「何で? こういうのもたまには良くないか?」
「………オレには、難易度が高すぎ」
「難易度って……」
真っ赤。もはや中を直視も出来ないらしい。
ああ、もう。反応が全部可愛い。
「そーいえば、オレもこういうのは使った事ないなー」
「え」
「何? 使ってそう?」
意外そうな顔に、笑ってしまいながらそう聞いたら。
んー、と考えながら。
「……使ってそう、とかじゃないんだけど……」
「けど?」
「……何となく、玲央は色んな事なんでもやったことありそうって思ってるみたい。……そうなんだ。こういうのは、無いんだ?」
「無いなぁ」
そういえば、触った事もねーな。
「……玲央も初めてなの?」
「ん? ああ、そうだな、初めて」
「――――……使いたい??」
「え?」
なんか真っ赤な優月が、少し乗り気??
「玲央が初めてって、あんまり無いから」
「――――……」
「……一緒に初めてなら……」
「――――……」
「オレと」「初めて」なら。
こういう系も、試そうって思ってくれんの?
――――……ある意味、純粋なのかな。
意外だけど、なんか、すげえ面白ぇな……。
……つか、耳まで赤いけど。
可愛くて、両頬に触れながら、耳まで手を滑らせると。
頬も耳も、熱い。
「……玲央?」
「お前、ほんと、何でそんな可愛い?」
「…………?」
言われた優月は、何を可愛いと言われてるのか分からないみたいで、不思議そうな顔をしている。
306
お気に入りに追加
5,325
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる