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◇「周知」

「カッコ悪いとこ」*玲央

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 しばらく優月の髪を弄っていて、ふと思う。

「……整髪料が欲しいな。さらさらすぎて、セットできない」
「あー……うん。無いね」

 くす、と笑って優月が鏡越しにオレを見つめる。

 まあ泊る気はなかったからな……。

「ま、いいや。これでも少し違うだろ」

 ドライヤーを止めて、優月を鏡越しに見つめると。
 わー、と優月が嬉しそうに笑う。

「なんか整ってるね。ありがと、玲央」
「ん」

「なんか前に玲央がセットしてくれた時さ、皆になんか違うってすぐ気づかれてさ。いいねって言われたんだよ。玲央ってすごいなーって思った」
「そっか」

 ……言い方、可愛いし。
 ドライヤーを片付けながら頷いていると。

「美容師さんも出来そうだよね。こんなカッコいい美容師さん居たら、絶対、予約いっぱいになっちゃうと思うけど」
「そう?」
「絶対そうだよ。予約半年待ちですって言われて、全然やってもらえないの」
「何だよそれ」
「うーん、それだと困る……」

 眉を寄せて、そんな風に言ってる優月に、クスクス笑って。

「万一そうなっても、優月だけは毎日やってやるよ」
「わー……ありがとう、ほんとに??」

 何やらものすごくキラキラした顔で、オレを見つめてくる。

 何なんだもう、可愛いな。

「当たり前だろ。つか、美容師、なんねーぞ?」

 そう言うと、優月は、そっか、と、クスクス笑いながら頷く。
 ふ、と、優月がオレの真正面に立って、オレの髪に手を伸ばす。

「ん?」

「玲央もたまには寝ぐせとかついててもいいのに」
「――――……」

「ずーっとカッコいいって大変じゃない?」

 何とも答えようのない、言葉に、苦笑い。

「玲央はバンドやってるから、ファンとか居るし。外でカッコ悪いってできないのかもしれないから……」
「――――……」

「オレの前でだけ、カッコ悪い時あってもいいよ??」
「んー……そう?」

「うん。全然いいよ。むしろ、玲央がカッコ悪いとこ、見たい」

 あは、と笑って、優月がオレを見上げる。

「……考えとく」
「考えないとカッコ悪いとこないの? ……ん。分かった、考えてね?」

 言いながら、優月が先に歩いて、部屋に戻って行く。

 何となく鏡の前に立って、髪を整えて。
 ふ、と笑み交じりの息をつく。


 優月の前では一番カッコよく居たいと、咄嗟に思った事なんか。
 言わないと、絶対ぇ分かんねーんだろうなあ……。


 カッコよくなくてもいいよ、か。
 かわいーな。ほんと。
  
 そんな風に思っていると。


「ねーねー、玲央、これ、何だろう??」


 優月の楽しそうな声が聞こえてきて。
 ふ、と笑いながら、優月のもとに向かった。









(2022/2/21)




玲央が美容師だったら、行くかなあ。
とちょっと考えてしまいました(*'ω'*)
指名料取られてしかも高そう……笑
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