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◇「周知」

「仲いい?」*玲央

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 車に戻って、走り出す。

「海、久しぶりで――――……なんかすごい良かった」

 優月が、窓から海を見ながらしみじみ言ってる。
 ふ、と笑みが浮かんで。

「なら良かった」
「ありがと、玲央」

「ん」

 ……何か。ほんと。
 ――――……ありがとうとか。人気遣う言葉とかって。
 ……言うべきだなーと。優月といると、思う。

 まあ。こんな素直にまっすぐ言えるかどうかは、疑問が残るけど。

 ポケットに入れて置いたスマホが鳴り始めて。
 続いてるから、電話か、と。


「優月、ポケットから取って、誰からか見て?」
「うん――――…… あ、勇紀だよ」
「出て?」

 言いながら、音楽のボリュームを下げる。

「うん……あ、もしもし? 勇紀?」

 優月がすぐに、スピーカーのボタンを押した。

『あ、優月ー?』
「うん」

『玲央にかけて優月が出るとか! なんかまだ、不思議』

 ふふ、と優月が笑ってる。

「何だよ、勇紀?」
『あ、玲央。これ、スピーカーになってる?』

「うん、なってるよ」

 優月が笑いながら答えてる。


『あのさあ、明日なんだけど、稔も来れるって。で、なんか稔が誰か誘いたい奴がいるらしくて、それは学校で誘うって言ってたけど』

「村澤?」

『ああ、なんかそんな名前だったかも。玲央達と同じ学部だって』
「分かった。んで?」

『店なんだけど、どんなとこがいい?』

「個室。騒いでも平気なとこ」

 オレが即座にそう答えたら、勇紀は、クスクス笑った。

『何それ、食べ物とかで決めるんじゃねーの?』

「今回に限っては、そっちが一番で」
『何で?』

「絶対騒ぐだろ」
『ああ――――……そう、だね、分かった』

「つか、そこ、騒がないって言わねーの?」

 オレが苦笑いで答えると、勇紀は、めちゃくちゃ楽しそうに。

『騒がない訳ないと思う。稔居るし。そうだね、じゃあもうあれか、カラオケのパーティルームみたいなとこにしちゃおうか』
「ああ――――……いいかもな。うるさくても気にならねーし」

『ていうか、玲央、オレ達の事どんだけうるさいと思ってんの』

 勇紀がむー、とふくれてそうな声で言うけれど。


「否定しなかったじゃねーかよ」


 そう言うと、少し黙って、それから、ははっと、笑う勇紀。

『まあ、否定はしない。――――……分かった、とりあえず、店探して予約しとく』
「ああ。よろしく」

『優月ー?』

 ずっとニコニコ話を聞いていた優月は、呼びかけられて、「はーい」と返す。


『明日、優月、オレの隣ねー』
「却下」

『つか、オレ今玲央としゃべってねーし!!』

 オレの一言に、ぎゃーぎゃー言い始めるが。


「優月オレの隣で端っこで」

 そう言うと。


『はー? ふざけんなー! 優月真ん中。 ていうか、玲央は、ちょっと遅れて来ても良い位だよ』
「却下」

 冷たく却下し続けている横で、優月は楽しそうにクスクス笑っていたけれど。


「明日、楽しみにしてるねー」

 と、のどかに声を出して。
 オレと勇紀のアホな掛け合いを、一瞬で回収した。


『んー。またね優月ー』
「うん、明日ね」


『じゃーなー玲央』
「はいはい」

『優月じゃーねー』
「早く切れ」

『あーもう、冷たいなー。じゃあねー、優月』
「うん、またね」


 と。そこでやっと電話が切れた。
 スマホを手に持ったまま。優月がクスクス笑い出す。


「ほんと、仲、いいね」
「……そーか?」

「うん。いーっつも、会話が面白い」

 おもしろいって。と、思うのだけど。

 優月が楽しそうにクスクス笑ってるから。
 ……まあ、いっか。


 ……やっぱ、明日、うるさそーだなと。
 かなり、げんなりしてると、横で優月が、首を傾げながら、どーしたの??と、笑う。









(2022/2/4)
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