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◇「周知」

「幸せ」*優月

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「――――……」


 どアップで見ても、なんかもうほんとにどこからどう見ても、カッコイイし……。
 
 ……何がこんなにカッコいいんだろう。

 瞳? 顔の形……唇かなー。鼻……うーん、でもバランス……?
 どうしてこんなに……と、キスされながら、マジマジと見つめてたら、なんだか、くす、と笑われて。

「……?」

 不意に後頭部に回った大きな手に、あれ?と思うと同時に、ぐい、と引き寄せられて、深く、キスされた。


「……ん、ン……っ……?」


 人気は無いけど。それにすごく暗いから。
 多分、どこか遠くから誰かがこっちを見てても、人影がくっついてるな、くらいしか分からないとは思うけど。こんなキスをしてるなんて、思わないと思うんだけど……。

 外で、ものすごい丸見え感のある場所で。


「……れ…………っン――――……」

 あっという間に、すごい深いキスになって。
 舌、絡め取られて、ゾクゾクしたものが背筋を走る。

 瞳を開けていられなくなって、もう、息するのに精いっぱい。


「……ン、ふ……っ……?」


 涙で滲んで、玲央の顔がぼやける。


「――――……なんか……」

「…………っ?」

 キスを離した玲央が、くらくらしてるオレの顔をまっすぐに見つめて、クスクス笑う。

「――――……キスしてんのに、優月が余裕な顔してると、泣かせたくなるな?」

 すごい至近距離で、くす、と笑われて。
 何やら瞳をキラキラさせて、すごく楽しそう。


 違うもん。
 余裕な顔してたわけじゃない、し。

 ただちょっと。
 ――――……造形として、あんまりにカッコいいから、一体何が、こんなにカッコいいんだろうって、ちょっと研究してただけと言うか。

 すごく顔を見ちゃってただけで。


「……っ……見てた、だけなのに」
「――――……」

 涙に指で触れて拭って、玲央がすごく楽しそうに笑う。


「ほんと、お前、可愛い」

 また唇が、重なってくる。


 どんだけ、キスするんだろう、この人は。
 ――――……なんか玲央と居ると。

 まだ10日くらいなのに。
 そろそろ、オレが玲央と会わなかったらするはずだった、一生分のキスの回数をこえるんじゃないかな。なんて思う位。


 めちゃくちゃ、ちゅーちゅーされる。

 悔しいけど。
 ……こんな風にしてる玲央には、何言っても勝てなそうだし。


 めちゃくちゃキスしてくる玲央に、もうされるがまま。

 でもなんか、くすぐったくて、笑ってしまう。


「キス、しすぎだよー……玲央……」
「んー?」

 クスクス笑う玲央に、頬や額や、あちこちにいっぱいキスされて。

 なんか、キスされるって。
 すごい幸せなんだなあと、すごく思ってしまう。


「あ、玲央」
「ん?」

「ちょっとストップしてて?」
「?」

 オレの言う通り、動きを止めてくれた玲央を下から見上げて。
 その頬や、唇にキスして。額は届かないので顎に、ちゅ、とキスを返してみると。


「――――……何、してンの? オレの真似?」

 優しく緩む瞳に、まっすぐ見つめられて、そんな風に聞かれる。


「うん。……真似」
「何で真似?」


 何でと聞かれると、すごく困るんだけど……。


「……いっぱいされるの、幸せだったから?……かな?」


 そう答えたら。
 玲央は、ぷ、と笑って。


「――――……幸せ、ねー……」


 そう言いながら、まっすぐオレを見つめる。


「……幸せっつー言葉ってさ」
「……?」


「……普通に使われると、すげー照れるな……?」
「…………っ」

 ぷ、と笑われながらそんな風に言われると。
 何だか一気に恥ずかしくなって、かあっと熱くなる。


「……な、無しで、今の」
「無しにしないけど」

「無しにして、恥ずかしいから……っ」
「しないって」

 クスクス笑いながらオレを捕らえる玲央に、ぐい、と抱き寄せられる。

 

「――――……オレも、すげーなんか……幸せかもしんないし」

「――――……」


 あ。もう。なんかもう。
 無理。


 好きすぎて。



 ゆっくり顔が近づいてくる。少し傾いて。
 


 あ、そういえばここ、外なんだよなー……なんて、ちらっと掠めるけど。
 暗いし誰も近くに居ないから、いっか……なんて思って。



 触れる直前で、ゆっくり、瞳を伏せた。







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