上 下
337 / 825
◇「周知」

「カミングアウト?」*玲央

しおりを挟む
「優月さ、そういえば、昼にオレと別れた後どうだった?」
「どうだったって??」

「友達に、バレなかった?」
「あー……うん……? バレては、ないと思う」

 なら良かった、かな。とりあえずは。

「でもね。――――……あの、ほら、クロの所に行く理由が……優月が好きだからって、玲央、言ったでしょ」
「ん。言った」

「……あれについて、色々言ってたよ」
「何て?」

 聞くと、優月は、んー……と、少し考えてから。


「どう反応すればいいの? とか。玲央が迫力ありすぎる、とか」

 言いながら優月は、とても楽しそうにクスクス笑ってる。


「迫力あった? あん時」

 少し不思議で聞くと。


「意味聞いてないけど、立ってるだけでめちゃくちゃカッコイイからだと思うんだけど……?」

 優月って、ほんと、こういう事だけは、あんま照れずにいつも言うよな。
 何でだ? あれか、造形として、ただ淡々と言ってるみたいな感じか?

 絵のモデルにでも、言ってるつもりかな……。


「玲央との接点を聞かれた」
「ああ……まあ。無さそうだよな、オレとお前に接点」

「……うん、なんかそう思うみたいで…… 分かるけど」

 優月もクスクス笑いながら。

「猫の所で偶然会って、話して、って言ったらさ」
「うん」

「そんなんで、よく仲良くなったな?って言われたよ」
「キスされたーとか言わなかったのか?」

 言う訳ないと思いながらそう言うと。


「い、いわないよ……っ」

 ――――……信号青だから、優月のほうは見えないけど、絶対今、恥ずかしがってる。そう、こっちは恥ずかしがるんだよな。


 はは。かわい。


「あ、でもね、玲央」
「ん」


「――――……今度クラス会、行ったら」
「ん」

「……話して来ようと思って」
「何を?」


 少し沈黙。
 その後。

「玲央の事が好きな事とか、付き合ってる事、言っちゃおうかなって」
「――――……」

「クラス会、いつも、座敷とかで締め切って騒いでるし、いっそ、騒がれてもいい場所で、言っちゃおうかなって思ってるんだけど、良い?」

「――――……それって、バレて、とかじゃなくて、自分から言うって事?」
「うん。自分から、言っちゃおうかなって」
「――――……」

 言うのは全然、オレは良いし。
 もちろん、隠さなくていいって思ってるし、言っても良いよって優月にも話してるし。

 でも優月から打ち明ける、か。もしかしてそうなのかとか、そんな感じでバレてしまうならしょうがねえと思うけど。


「言えるのか?」

 バレそうにもなってないのに、わざわざ自分からカミングアウト。
 なんとなく、それは言えるのか? と思って、聞くと。


「言えるよ? めちゃくちゃ、照れちゃいそうだけど」

 とか言いながら、クスクス笑ってる。


 ――――……少し、心配。

 優月が、この感じで、照れながら、オレと付き合ってると自分から告白した時の、こいつの周りって。どんな反応、するんだろうか。


 優月に嫌な事言う奴、そんなに居そうな気はしないんだけど。
 内容が内容だしな。


「優月」
「ん」

「もし気持ち悪いとか、言われたら。どーする?」
「――――……男同士なのが?」

「そう。言う奴も居るかも」
「――――……別にどうもしないかな」

「……傷つかないか?」

 そう言うと、優月はオレを見て、ふふ、と笑った。


「大丈夫」
「――――……ほんとに?」


「なんかね、皆、オレと玲央が居るのがすごく不思議みたいで。何で仲いいの?とかずっと聞かれそうなんだよね……そのたびに、なんか誤魔化してるのも嫌だから話したい」
「――――……」


「……こういうの分からない人は、気持ち悪いって思うかも。それを思うのは自由だからさ。別に気持ち悪いって言われても……大丈夫」

「――――……」


「――――……だって、好きだから、そうなったんだもん。玲央が、オレと居てくれるなら、そんなのは気にならない、かな」

「――――……」


「玲央とオレが仲良くしてたら、いつか分かってくれるかもしれないし。分かってくれなくても、それはそれでしょうがないって思ってるし……大丈夫だよ?」

 最後、にこ、と笑って、オレを見つめてくる。
 しばらく、黙って聞いていたけど。


 なんかこういう所は。


 ――――……オレより、強いのかも。



 強すぎるんじゃなくて――――……。


 柔らかくて、強い。




 なんかこーいうとこも、すげえ好きかも。
 
 と、改めて思ってしまう。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

処理中です...