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◇「周知」

「あったかい」*優月

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 希生さんの隣で、久先生がクスッと笑った。

「……いつ気づいたの?」

 久先生の言葉に。

 
「――――……最初からかな?」

 と希生さんが少しふざけた感じで言う。


「さすがにそれは無くねえ?」

 もう開き直ったのか、玲央は、もういつも通りで、そう返す。


「……お前が全然違うんだよ、玲央」
「――――……」

「まあ確信は、ライブと2次会って単語? 優月くん、言ってたもんな。個展の手伝いの後、好きな人のライブに行くって。蒼がそれを見に行くって。その話をしだした玲央に、優月くんが、あって慌ててるし。久は遮るし。おかしいだろ」

 く、と笑う、希生さん。


 ………鋭すぎる。

 それを聞いた玲央が、ああ、と笑う。

「そん時じいちゃんと会ってたのか。 優月がライブ来る前にそんな話してたってこと?」

 オレが、うん、と頷くと。


「だからさっき――――……」

 玲央がクスクス笑い出した。


「オレが今日、オレの家族には、まだ言わない方がいいとか言ったからだよな。ごめんな?」

「――――……」

 なんで謝るんだろう。
 別にオレだって、まだ家族に言ってないし。

 首を振って、玲央を見つめてると。ふ、と笑って。


「近々行くから。じーちゃんち。……実家の屋敷じゃなくて、隣のじーちゃんち、な」

 玲央がまっすぐ希生さんを見て、そうはっきり言った。
 希生さんは、ふ、と笑って、頷いてる。


 ――――……なんか。
 そういう笑い方。


 ほんと。玲央とそっくり。
 カッコイイなあ。

 なんて。
 多分オレ、少し現実逃避でそんな事を考えている。


 久先生にもバレちゃったし。
 玲央のおじいちゃんにもバレちゃったし。

 特に玲央のおじいちゃん……希生さんにバレて良かったのかな。

 そう思って、玲央を見上げると。



「大丈夫。じいちゃん、すげーうるせーけど。多分オレの味方だから」

 そんな玲央の言葉に、なんだか、カチンときたのか。
 希生さんが、調子に乗るなと言い出して。


「優月くんが可愛い子ていうのと、久のほぼ孫って事で、だからな。お前じゃない」
「はー? じーちゃんの名前引き継いだ、可愛い孫だろ」
「可愛かったの、小さい頃だけだがな?」
「んな訳ねーし。もう将棋つきあわねーぞ」
「……優月くん、将棋は?」

「え。あ。少し?なら。おじいちゃんとさしてたので……」

 答えると。


「おじいちゃん、か」

 はー、と希生さんがため息。

「思えば、玲央は最初からじーちゃんじーちゃんって。おじいちゃんなんて、可愛い呼び方された事ないな」

「はー? 可愛かったろ、じーちゃんだって」


「ああ、もうお前来なくていいや。優月くんと久だけおいで」
「はー? 絶対行くし」

 もうすっかりいつも通り。
 でもやっぱり。

 可愛い大事な孫に。
 男のオレ、とか。……いいのかな。


「――――……希生さん……あの……オレ、男なのは……」


 口に出したとこまでは良かったけど、なんて聞いたらいいか分からなくて。
 少し黙ってしまったら。 隣で玲央がオレを覗き込んで。ふ、と笑った。


「平気。じーちゃん、知ってるから」

 え。

「じゃねーと、さすがに、あれだけのヒントで、結びつかねえし」

 そんな玲央の言葉に、希生さんがふ、と笑う。


「玲央が男も大丈夫なのは知ってる。それより、不特定だってのに、ずっといい加減にしろって言ってたからな。孫がやっと選んだ相手だし」
「――――……」

「今度ゆっくり話そう。玲央の小さい頃の話とか、聞きたい?」
「あ。はい」

 それはめっちゃ聞きたい。
 うんうん、と頷くと。

 玲央に腕を取られて、引き寄せられた。
 とん、と背中に、玲央の胸。

「それは聞かなくていいし。……絶対優月1人で行かせねえから」



 玲央の言葉に、皆、苦笑い。




 玲央が触れてる腕が。

 なんかあったかい。





 
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