【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

文字の大きさ
上 下
324 / 838
◇「周知」

「そっくり……」*優月

しおりを挟む

「よく分かったね、玲央くん。見る目あるよ」
「あんまり褒めないで、久。――――……調子に乗るから」


 先生の言葉に、希生さんが笑いながら答える。

「優月っぽい絵を探しただけなので。見る目がある訳じゃ……」

 玲央もそんな事を言って、苦笑いしてる。

「優月っぽい絵ってちなみにどんなの?」

 久先生が玲央に聞くと。

「どんなの――――……雰囲気で選んだので……」

 うーん、と考えてるので。

「玲央、佐田さんと西本さんの絵も候補に挙げてて……犬のとか……」

 オレが先生にそう言うと、それを聞いた先生は、なるほどねーと笑う。

「優月のイメージが、柔らかくて優しい、て思ってるって事だね」
「そう、ですね。自然とそういうの探したかも……」
「まあそれで当てたんだから大したもんだけど」

 にっこり笑ってから、先生は、ふと、気づいたように玲央を見た。


「ここに無いんだけど、優月が描く人物画は、全然違うんだよ」
「そうなんですか?」

「人物画を描くと、優月じゃなくて、その描かれてる人の内面の雰囲気になるから。優月っぽいのを探しても見つからないよ。ちょっと面白いよ、優月に絵を描かれるのは」

 先生の言葉に、クスクス笑う玲央。


「じゃあ、今度オレを描いて」

 玲央に言われて、何秒か固まる。


「何、その顔? 嫌なのか?」

 ぷ、と笑って、玲央がオレを見る。


「そうじゃない、けど…… すっごく見て描くから……」


 照れるなあ――――……なんか。ドキドキしちゃうよね、きっと……。
 うーん、すごく恥ずかしいかも……。


 と。
 希生さんが居るんだった。

 い、言えない……。


「こ、んど――――……描く、ね?」


 辛うじて、そう言うと。
 玲央は、ふ、と微笑んで。「ん」と頷く。

「あ、じーちゃん、蒼さんの写真見せて」
「ああ」

 丁寧な包装を解いて、額に入った写真を取り出して見せてくれると。


「わー……」


 やっぱり、というとこなのか。
 何なのか分かんないけど。


 ……玲央が見てた、空の写真。だよね。
 すごいな。同じもの好きなの。
 こういう、好き、とかも遺伝てするのかなあ。


 思いながら、隣の玲央を見上げると。
 なんかすごく嫌そう。

 あれ?? なんで?


「――――……オレ、感性がじーちゃんと同じとか、すげえ嫌なんだけど」

 なんて事言うんだろ、玲央……。
 と思うような事を、ものすごーく嫌そうな顔で、玲央が希生さんに言ってる。案の定、希生さんがムッとして。

「何だ、お前、これが欲しかったのか?」
「――――……欲しかったけど、やめたんだよ」

「やめた? 何で?」
「――――……それは。まあ色々」
「何だ色々って」

 玲央は少し黙ってたけど、言わないと話が進まなそうと思ったのか、また、ものすごく嫌そうに、口を開いた。

「だから……もうちょっと、平常心で見れるようになったら、蒼さんの買うって」
「平常心? ……何言ってんだか分からんが。……蒼に対抗心でも燃やしてるのか?」
「……別にそう言うんじゃねえし」
「はあ? じゃあなんだ、平常心って」
「じーちゃんには関係ない話」
「――――……それがわざわざ車から持ってきて、見せてやってるおじい様に言う言葉か」
「つか、久しぶりに会ったけど、ほんと変わってねえし。もうじいさんなんだから、もーちょっと丸くなったら?」

 なんかそんなやりとりをぼー、と見つめながら。

 あ、希生さんて、蒼くんのこと、蒼って呼ぶんだなあ、とか。
 よくこの2人って、この速さでポンポンと噛まずに話せるなあ、とか。
 希生さんて、玲央に会うまでは、久先生と同じような穏やかなオシャレな人だったけど……なんか、口うるさいおじいちゃんに……。孫の玲央が可愛いのか心配なのか……。

 なんか、可笑しくなりながら、ぼんやりと考える。
 
 多分。仲、いいんだと思うんだけど、この2人。
 何かすごく、似てるし。

 言葉の選び方とか。ちょっとからかうみたいに喋るとことか。
 特にお互い相手だと、それに、ちょっと喧嘩かなと思うようなツッコミモードになるのかな。

 まあオレには中に入る事は出来ないし、久先生はニコニコしながら見てるだけだし。オレもそうしとこ。


 なんて思ってたら。
 希生さんが急にこっちを見た。


「ほんと、迷惑かけてないか、優月くん」
「い、えいえ、全然」

「ほんと、相変わらず、口も悪いし……」

 はーとため息をついているけれど。


 そっくりなんだけど……。
 とは言えず、苦笑い。すると、久先生も苦笑いで。

「そっくりだけどね」

 そう言った。

「似てな――――……」

 きっと希生さんは、先生に何かを言おうとしたんだと思うんだけど。
 堪えきれなくなって、オレがぷ、と笑ってしまった。

「――――……」

 久先生に向かおうとしていた希生さんが、ん?とオレを見て。

「優月くん、笑った?」
「あ、いえ……あの――――…… はい」


 もう笑うしかない。
 だって、そっくりなんだもん。


 口元を押さえながら、困ってると、なんか玲央は面白そうにこっち見てるし。ちょっと助けて、と見つめてしまうと、玲央、おかしそうに笑ってるし……。





(2022/1/6)
しおりを挟む
感想 790

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

勘弁してください、僕はあなたの婚約者ではありません

りまり
BL
 公爵家の5人いる兄弟の末っ子に生まれた私は、優秀で見目麗しい兄弟がいるので自由だった。  自由とは名ばかりの放置子だ。  兄弟たちのように見目が良ければいいがこれまた普通以下で高位貴族とは思えないような容姿だったためさらに放置に繋がったのだが……両親は兎も角兄弟たちは口が悪いだけでなんだかんだとかまってくれる。  色々あったが学園に通うようになるとやった覚えのないことで悪役呼ばわりされ孤立してしまった。  それでも勉強できるからと学園に通っていたが、上級生の卒業パーティーでいきなり断罪され婚約破棄されてしまい挙句に学園を退学させられるが、後から知ったのだけど僕には弟がいたんだってそれも僕そっくりな、その子は両親からも兄弟からもかわいがられ甘やかされて育ったので色々な所でやらかしたので顔がそっくりな僕にすべての罪をきせ追放したって、優しいと思っていた兄たちが笑いながら言っていたっけ、国外追放なので二度と合わない僕に最後の追い打ちをかけて去っていった。  隣国でも噂を聞いたと言っていわれのないことで暴行を受けるが頑張って生き抜く話です

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

処理中です...