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◇「周知」
「玲央の名前」*優月
しおりを挟む「持って来たぞ、玲央」
「見たいけど、ちょっと待って、優月の絵を当ててからでもいい?」
希生さんの言葉に、玲央が、そんな風に答えてる。
「もうオレは見せてもらったからな。教えてやろうか?」
「……やめろよな」
「お前、ほんと口の利き方なってないよな」
「じーちゃんに言われたくないけど。オレの口調って、じーちゃんに似てねえ?」
「似てない」
掛け合いの会話に、苦笑いしてたら、涙も落ち着いて。
「希生が子供っぽくなってるし」
久先生が、オレだけに聞こえるような感じで言って、クスクス笑っている。
「希生と玲央くんって、そんなに似るほど近くに居たの?」
「ああ。元々は神月の屋敷に住んでたけど、希実が結婚した後、オレがその隣に家を建てて――――……小さい頃は玲央は、めちゃくちゃじいちゃん子だったもんな?」
玲央は気恥ずかしいのか、頷きはしないで苦笑いを浮かべてる。
じいちゃんの相手をするから、将棋とか習ったって言ってたっけ。
――――……仲よさそうだもんなあ。
「それがこんな、長い間顔も見せない奴になって。軽く叩ききたくもなるだろ
涙も引いたし、もう大丈夫、と思いながら、絵を見てくれている玲央に近付く。
「玲央のお父さんて、のぞみさん、なんだね?」
そう聞いたら、玲央が、ふ、と笑いながらオレを見下ろした。
「じいちゃんが「希望」と「生きる」でさ。父さんが、その「希」と「真実」で希実」
「へえ……」
頷きながら聞いていると。ふと。
「玲央の名前は、漢字引き継がなかったんだ?」
「ああ、それは……」
「画数とか?」
「じゃなくて――――……あぁ、じいちゃんの名前、知らないのか」
「……うん? 希生さん? あ、そっか。読み方違うって……」
「そう。きおさん、じゃなくて、正しくは、まれお」
「まれお?」
ああ。希望の「希」は、まれって読むもんね。
あ、まれおさん、て言うんだ。
ふむふむ、と納得してると。
「なんか占いかなんかで、希生がいいって言われたけど、読みは、まれおが良いって言われたらしい」
なるほど。
まれおさん――――…… あ。そっか。それで。
「まれおさんからの、れお、なの?」
「そう。 神月の家は、じーちゃんが一番権力あるからな」
クスクス笑う玲央。
「じゃあ、希生さんからお名前もらったんだねーすごい。いいね」
「いいかぁ?」
苦笑いの玲央は、後ろから来た希生さんに肘で小突かれてる。
「良いだろ? ――――……オレは、ほんとの、まれおが好きじゃないけど。玲央はカッコいいだろ?」
希生さんがそう言って笑うので。
「はい」
と頷いて、にっこり笑ってしまうと。
「――――……」
「――――……」
玲央と希生さんに、同じような顔でじっと見つめられてしまう。
「?」
何だろ、と思った瞬間。
希生さんがクス、と笑って。
「……玲央に聞いたんだけど、優月くんが、嬉しそうに、はいって言うから。なんか――――…… はは。可愛いね、ほんと」
クスクス笑う希生さんに、玲央もちょっと笑って。
「玲央ってカッコいいと思ってたのか?」
「……うん」
「オレは、優月の名前のが好きだけど」
くすくす笑う玲央は、希生さんの前だから、すぐにオレから視線をずらして。
「なあ、優月、オレ、3つにしぼってみたんだけど。その中にあったら、褒めて」
「あ、3つにしぼれたの? すごい」
「もう褒めてる」
クスクス笑いながら玲央がオレを見下ろす。
「こっち来て」
背中に手を置かれて、連れていかれる。
「あの、うさぎの絵と。果物の絵とあっちの犬……?」
「1つは入ってる」
のこりの2つの絵も、何となく選んだ理由は分かる気がする。
やわらかい感じのタッチの水彩画。
玲央は、オレの事、こういうイメージで見てるんだなと思うと。
なんとなく、嬉しい気がしてしまう。
1つかあ、と玲央が呟いて、3枚を見返した玲央が、ふ、と笑顔でオレを見つめる。
「じゃあ、うさぎ?」
「わあ、当たり。すごい、玲央」
「ふわふわだからな。これは、優月っぽい」
「おー、すごいね、玲央くん」
久先生も寄ってきて玲央をほめるので、玲央が、ふ、と微笑んだ。
「もう1つも優月ぽいですか?」
「うん。ぽいね。たまに、違うタッチの絵も描くんだけど……飾るのは、優月っぽいのを飾ってるかも」
「――――……んー……も一度端から見ようかな」
そう言いながら玲央は、ふ、と久先生を振り返った。
「まだ見てて、平気ですか?」
「もちろん。優月の、見つけてからでいいよ」
「ありがとうございます」
端まで歩いていく玲央にくっついていって、玲央の後ろを歩く。
もう少し先に、あるけど。
ふふ、と笑みながら後ろについて。
そうすると、玲央が面白そうに、オレを振り返ってくる。
後書き♡
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
恋なんかじゃないの更新も。
今年は終わり♡
玲央と優月をありがとうございました♡
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