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◇「恋人」
「恋人っぽい?」*優月
しおりを挟む3限が終わって休憩時間。
とりあえず、なんとか後半は、頑張って授業に取り組んだ。なんとか。
「優月ー」
クラスメート3人に呼ばれる。さっき食堂には居なかったメンバーなので、ちょっとホッとしながら、近づいてくる皆を見上げる。
「うん、何?」
「今週金曜空いてる?」
「何かあるの?」
「クラス会しようぜ? 2年になってからまだしてなかったじゃん?」
「あ、そうだね。うん、い――――……いと思ったんだけど、ちょっと予定確認してからでもいい?」
「まあいいけど……何の確認?」
「予定、入るかもしれないから……」
玲央と、付き合って、初めての金曜だから。
玲央に用事があるかもしれないけど、聞いてからにしようっと。
「なあ、優月彼女でもできた?」
「え、何で?」
「なんかウキウキ、予定入るかもとか言ってるから」
ニヤニヤ笑われて。
オレそんなに分かりやすいのかな。
ドキドキしながら、皆を見上げた瞬間。
「おいおいおーい、優月ー」
あ。さっき食堂で一緒だった皆が来てしまった。
「さっきのあれは、どー反応すりゃいーの?」
「え。あ。……玲央?」
「そうそう、玲央! 何あれ?」
何あれって、言われてもなー。それこそ、何て答えれば……??
「あー……うん……何だと、思った?」
思わず聞いてしまうと。
「あいつ……なんか迫力ありすぎ」
「そーだよ、見られるだけで固まるのにさ」
「なんつったっけ! さっき。 優月が好きだから?」
……優月が好きだからって。そんな風に言ったっけ??
「好きなのは、ね、猫の話だったでしょ……」
確かそういう話だったはず……。
玲央は、オレ達の事、皆に認めても良いみたいだったけど。
さっき食堂にいた皆と、今クラス会の話してきた皆と……ここで認めるの……勇気がいりすぎる。ここ教室だから、叫ばれそうだし。
よし、別の話にしよう!
そうだ、クラス会の話しよう、うん、そうしよ……。
「あのさ、クラ」
言いかけたのに、かぶせるようにして。
「玲央って 神月だろ? 優月、仲いいんだよな。先週も頭なでられてたし」
「そーいや、何であいつ仲いいの? 接点何なの?」
うう。失敗……。
……そうだ、こっちの皆には、先週、玲央といるとこも見られてるんだった。ていうかさ。絶対、玲央が目立ちすぎなんだよね……ただ、話してるだけなのにさ……。
「玲央とは……猫のとこで会って……」
クロを抱っこしてて。話して……。なんでか、キスされて。
寝てみる?て聞かれた。って。なんか言葉にまとめちゃうと、とんでもないな。なんて思うと、可笑しくなってしまう。
皆にはとても言えない。
「猫のとこで会ったからって、よくお前、あいつと仲良くなったよなー?」
「怖くねえの?」
「え。だから、怖くないってば。優しいよ、玲央」
言うと、皆、ふーーーん???と、不思議そうな顔で頷いてる。
「あ、クラス会って、皆行くの?」
皆の言葉が途切れた時を見計らって、そう聞いたら。
「オレらは行く。ていうか、ここの皆と、あそこら辺の女子で、やろうって決めたとこだからさ。あとでクラスのグループに連絡入れるけど」
「優月は行けないの?」
「優月は確認してからだって」
「ふーん? いこーぜ、優月?」
「ん、考えとくね」
金曜の夕方だもんね……。
先週はバンドの練習してたけど、ライブがあったからかもしれないし……。
玲央は、何て言うんだろう。
ずっと一緒に居たい、みたいな事言ってくれてるけど。
先週から、ずっと一緒だったから、普段の金曜日、玲央が何して過ごしてたのか、全然知らないんだよね。
オレがクラス会とかに行くのを、嫌がるとは思えないけど。
とか何だか、一瞬で、色々な事が頭を巡る。
そこまで考えて。
何だかふっと、思ったのは。
わー、なんか。
こういうの考えるのって。
ちょっと…………すごく? 恋人っぽいかも。
だって。
オレがどこに行こうが、普通はオレ以外の人には関係ないはずだし。
……オレの予定を決めるのに、金曜の玲央はどうしてるのかなって、考えちゃうとか。なんか。こういうの、初めてかも。
なんか、嬉しい、かも。
「なんか優月嬉しそう」
「え? あ、別に……」
「何考えてた?」
「ううん、別に大したことじゃないよ?」
ちょっと、1人で、浸ってただけだし。
とその時、4限開始のチャイム。
皆それぞれ座ってた席に戻って行く。
さ。
この授業頑張って。絵を描いて。
――――……玲央に会えるまで、頑張ろ。
なんか。
隠してるよりも、皆に叫ばれても良い場所で、 言っちゃった方が良さそうだなあ。
そしたら、玲央の事も、隠さず、話せる……かな。
ただ仲良くしてるだけでも謎だって言われてるのに。
付き合ってるとか言ったら……信じてくれるかな??
信じてくれないかもなー……なんて思うと、ちょっと可笑しい。
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