上 下
307 / 825
◇「恋人」

「独占欲」*玲央

しおりを挟む

 キスを終えて、優月が、めちゃくちゃため息をついてるのを笑いながら。
 そっと、その頬に触れたら。


「……玲央、もう、それ以上したら……」
「ん、したら?」

 そろそろ、怒るかな? と、思ったら。


「……オレ、立てなくなるからね。教室までおんぶだからね」

 そんな台詞に、ぷ、と笑ってしまった。

「いーぜ、全然。してやるよ、おんぶくらい」

 そう言うと、優月は予想外だったのか、もうすっかり眉根が寄って、少しの間黙った後。

「――――……っやだよー、もう。 嫌がってよ、玲央」

 困ったように、そんな風に言う。

「何で。全然いいよ。だったら、もうちょっとしていんだろ?」
「ち、ちがうからっ……っ オレ、ほんとに、体――――……っ」


 そこまで言って、はっと気づいたらしい優月が、ぱっと口を塞ぐ。


「体……が、どーなんの?」

 頭をヨシヨシしながら覗き込むと。

「――――……っ」

 優月は、ぷるぷる首を振ってる。


「なんでも、な……」

 ……あー。可愛い。
 恥ずかしがってるっぽい優月に、最後に軽くキスする。


「――――……とにかく、夜、な?」

 赤い優月を至近距離で見つめたまま、笑むと、ますます真っ赤になる。 
 その両頬をはさんで、ぶに、と顔を潰す。


「顔あっつ、優月」
「……玲央のせい、じゃん」

 もう、頬を挟まれてるのは、拒否らないらしい。
 なすがままに、ぷにぷにされながら、困った顔をしてる。


「はは。だって、すぐ赤くなって、ほんと可愛いんだもんな」
「……わざと、恥ずかしいことしてたりする?」

 むむ。と優月が見上げてきて、ぷ、と笑ってしまうけど。

「いや、わざとじゃねえな。言ってる事とかは全部思ってる事だけど」
「――――……っ……」

 も、余計に恥ずかしい……ぶつぶつ言いながらも、
 ずっとされるがままに頬を挟まれたままの優月。

 ……ほんと、可愛いな。

 優月の頬をすり、と撫でて、笑いながらそっと離した。


「顔の熱引いたら行こ」

 そう言うと、優月は、ん、と頷くと。
 すぐ近くで色々してたオレらに関係なく、くるんと丸まって心地よさそうに寝ているクロの背を撫でる。


「もう4限まで会わないだろうから……気を付けて行けよ、絵の教室まで」
「うん」

「……帰り、ドライブするか?」
「え。いいの?」

 ぱ、と優月が笑顔になる。

「いーよ」
「わー、やったー。楽しみ」

 そう言うと、クロをよしよしと撫でてから、優月は立ち上がった。


「本鈴なっちゃうから、行こう、玲央」
「ん」

「クロ、またね、今度は缶詰もってくるからねー」

 目が覚めたのか、優月を見上げてるクロにそう言って、よしよしと撫でてから、優月がオレの隣に並ぶ。

「あ、荷物ありがとう、玲央」
「ああ」

 ん、と渡すと、オレを見上げて、ふふ、と笑う。

「場所、わかりそうだった?」
「ああ。さっき地図検索した。車停めるとこあるか?」

「うん。蒼くんの家の前に、空き地があって、そこが駐車場になってる」
「分かった。そこに停めて待ってる」
「うん。ありがと、玲央。気を付けて、来てね?」
「ん」


「オレ次こっちだから。 あとでね、玲央」


 バイバイ、と手を振って、優月が離れて行く。



 その後ろ姿を見送りながら。
 ――――……ふ、と。微笑んでしまう。


 優月って、なんかいっつも素朴なカッコしてるけど。
 ――――……着飾れば、結構良い感じになりそうだよな……。

 いろんな服着せてみるか。
 と、ちらっと思いながら歩き始めて。


 ――――……あーでもそれで、色んな奴の目に留まるのも、ムカつくな。
 ……今のままでいいや。可愛いし。

 オレと居る時だけ、今度めちゃくちゃ可愛くしてみよう。


 ……って。独占欲、どんだけだ、オレ……。


 なんて、またしても色々頭溶けてそうな、誰にも言えそうにない事を考えながら、3限の教室へと急いだ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

処理中です...