上 下
300 / 825
◇「恋人」

「ああ、もう」*優月

しおりを挟む
 おやつをじっと見つめるふりをしながら、頭の中、何も考えられず。
 少し時が過ぎた所で、隣で玲央がまた笑いながら。

「優月、おやつ選ばねえの?」
「……ん」

「早く行かねーとクロに触ってる時間なくなるぞ?」

 じ、と見つめて笑う玲央に、ん、と頷いた。

「……これにする」
 もう早く買って、クロの所に行こう、と立ち上がると。

「飲み物も買ってこうぜ」

 ひょい、とおやつを奪われて、玲央がドリンクコーナーに歩いて行ってしまう。

「玲央、それ……」

 咄嗟に呼んだら、くる、と振り返った玲央が、真顔で。


「あのさ、優月。一緒に居る時のは、オレが払う」
「――――……」

「と思ってるけど――――……言いたい事ありそうだから」


 玲央は、クスクス笑いながら。
 また頭ポンポンしてくる。 

「帰ったら話そ。とりあえずここは払う。飲み物どれがいい?」
「……麦茶」
「ん」
「……ありがとう」
「ん」

 ふ、と笑って、玲央は歩いてく。
 ――――……何だかなー、玲央。ほんと、カッコいいんだけど。
 うーん。……なんだかな。
 玲央は良いって言うけど。……オレが気になるだけ、かー……。

 ちょっと考えていたのだけれど、前方に、レジでおばちゃんたちが待ち構えている雰囲気が見えて、一気に、そっちに気を取られた。こっちは後で話そう……。まずこのおばちゃんたちをクリアしないと……。


「お願いします」

 玲央が言って、台に商品を置くと。
 1人のおばちゃんがピッピッとレジ作業。

 なぜか、というか、理由は分かってるけど、もう1人のおばちゃんもすっかり品出しをやめて、隣に居るし。

 このレジにおばちゃん達が2人並んでるの、普段、見ない。
 いつも1人がレジで、1人は品出しとか掃除とか。混んで来たらもう1台のレジには入るけど。

 ……もう、興味津々な視線が……。

 玲央が会計をしてる間、手の空いてる方のおばちゃんがオレを見て。

「優月くん、玲央くんとは……」
「――――……」

「……すっごく、仲良く見えるけど……」

 遠回しすぎて。

 もう、いっそはっきり聞いてくれた方がー!と思った瞬間。
 会計を終えた玲央が、ふ、とオレを見てから。


「すごく仲良いですよ? な、優月」

 この場に必要ないんじゃないかと思うような、キラキラの笑顔で。
 玲央は、おばちゃん達に微笑みかけてから、オレに視線を向ける。

 何て顔で笑っちゃうんだと思いながら、おばちゃん達に視線を向けると。
 ……おばちゃんたちがすっかりやられてた。


「それってもしかして……」

 もうすでにおばちゃん達、叫びそうなのに。
 ふ、と玲央がまた笑んで。――――……ていうか、もうとどめ、みたいな。


「てことで。また優月と一緒に来ますから、よろしく」

 おばちゃんたちが何か言う前に、玲央が、「優月行こ」とオレを引いて、コンビニを出た。
 自動ドアが閉まって、すこし急ぎ足で離れてから、ぷ、と笑ってる玲央。

「玲央、おばちゃんたち、絶対叫んでる……」
「だろーな」


 クスクス笑う玲央。


「あんまり期待されてたから」
「そうだけど……」

「面白かったな?」
「――――……」


 悪戯っぽい顔して。
 ――――……じっとオレを見つめてくる。


 こんな顔も、するんだ。玲央。

 ――――……なんかもう。
 ……ああ、もう。


「うん」

 ふふ、と笑ってしまう。


 ほんと――――…… 好き、玲央。
 
 そんな風に思ってると、また、めちゃくちゃヨシヨシされた。













◆ ◆ ◆ ◆ ◆

(2021/12/11)

次めちゃくちゃ甘いです(∩´∀`)∩

2人、お好きですか(*'ω'*)?
とたまに聞いちゃう('∀')
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

転生令息の、のんびりまったりな日々

かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。 ※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。 痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。 ※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!

冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。 「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」 前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて…… 演技チャラ男攻め×美人人間不信受け ※最終的にはハッピーエンドです ※何かしら地雷のある方にはお勧めしません ※ムーンライトノベルズにも投稿しています

処理中です...