【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

文字の大きさ
上 下
293 / 838
◇「恋人」

「いつか」*優月

しおりを挟む


「あ」

 咄嗟に声のした方を振り返ると。甲斐と颯也の2人はオレを見て、固まる。


「……何泣いてんの?」
「ほんと良く泣くな、優月」

 苦笑いで颯也と甲斐に言われて、手の甲で滲んだ涙を拭いた。


「もう返せ」

 少し勇紀から離れたオレは、玲央に腕を引かれる。


「何で泣くかな……」
 クスクス笑いながら、玲央の指が目尻に触れる。

「はいはい、入り口でいちゃつくなー」

 甲斐が笑って、声を押さえながらオレ達に言う。

「席とった?」

 颯也の言葉に、「まだ取ってない」と勇紀。

「鞄置いてくる」

 颯也が言って歩き出した時。甲斐がオレを見て、ふ、と微笑んだ。
 
「あ。優月、聞いた。良かったな」

 その言葉に、頷くと、くくっ、と笑って。

「玲央が何かしたら言えよ?」

 とふざけた口調で言われて、ん、と笑うと。

「しねーから」
 玲央が後ろですぐそう言って、甲斐が苦笑いしてる。


「近々祝う会するって勇紀が言ってるから、そん時な」

 微笑む颯也に、うん、と頷くと。

「じゃー席取ってくる」
 と、3人は行ってしまった。

 玲央に引かれて、メニューの前から、少し離れた。

「食べ終わったら連絡入れろよ。早めに行こうぜ」
「うん」

「部室に絵の道具置いてるから、寄るけどいい?」
「うん。その後、コンビニ行っていい?」
「ん、クロのエサだろ? 行くと思ってた」

 玲央を見上げて頷くと、ふ、と笑んで、ぽんぽん、と頭を撫でてくれる。


「――――……」


 なんか。もう。このままくっついてしまいたいんだけど。
 ――――……できる訳ないしな。


 勇紀とは、別に抱き合っていられるのに。
 ……玲央と出来ないのは……… それに、意味があるから、だよね。

 何の意味もないと、抱き合えるけど。
 大好きで抱き付くのは、やっぱり人前じゃ恥ずかしい。

 仕方なく、玲央と離れようとした瞬間。


「……部室で、抱き締めさせて」

 こそ、と囁かれてびっくり。

 …………考えてた事、バレてたのかな。
 かあっと熱くなる。

 クスクス笑われて、またクシャクシャと髪を撫でられる。


「食べたらな」
「うん」

 オレは玲央と別れて、そのままご飯を買いに行って、皆が座ってる所に戻った。


「おー優月、おかえり」
「うん」

 座って、鞄を椅子に引っ掛けて、「いただきまーす」と食べ始める。


「優月がさっき話してた奴って、有名な奴だよな?」
「抱き付いてきた奴もだよな?」

「結構有名なバンドの奴らだろ?」

「あ、うん。そう……」

 頷きながら、もぐもぐ食べ進める。

「最初に喋ってた派手な奴、名前何だっけ」
「ん。玲央だよ」

「ああ、神月玲央か」

 すぐフルネームで出てくるとか。
 ――――……ほんと、玲央、有名人だなあ。

 ってまぁ。オレも知ってた人だし。
 ――――……オレの耳に入ってくるって、よっぽどだからなあ……。

 オレがいくつか知ってた玲央の噂は、もう学校の人は皆が知ってるんじゃないだろうか、と、思ってしまう。

 他人の噂とかにまったく興味が無くて、聞こえても、ふーん位でスルーで、いつもなら記憶に残らないのに。あんまり何回か耳に入るから、覚えてしまったんだよな……。


「優月、仲いいの?」
「……うん。仲いいよ」

「何か接点あんの?」
「接点……まあ、勇紀……あの、抱き付いてきた人は、具合悪かったのを助けたのがきっかけで……」

「神月は?」
「――――……玲央は……たまたま会ったんだけど」


 答えてる内に歯切れが悪くなってしまう。
 これ以上突っ込まないで。とちょっと焦りながら、ご飯を食べ続ける。

 
「外見派手だけど、中身も派手なんだろ?」
「噂結構すごいけどどーなの?」

 ……んーまあ、少し前なら……オレが聞いてた噂は大体合ってた気がするけど……。でも、玲央変わった、思うし……。


「オレ噂は全部は知らないけど……玲央のバンド、皆良い人達だよ」


 言えないまでも、最低限の所は、言ってみた。
 皆、ふーん、と頷いてる。


「バンド4人で固まってると、すごく見た目が派手なのは、そうだと思う」

 4人を思い浮かべて、本当に相当派手な様に、ふふ、と笑ってしまうと。
 

「まあ優月と仲良しなんだもんなー、悪い奴とはお前つるまなそうだしな」


 そんな風に言われて。
 ふと、笑んで、「皆優しいよ」と伝えてみた。



 ……多分玲央は噂なんか気にしない人だと思うけど。

 オレがこうして皆と話してる内に、噂が少しずつでもなくなって、変な偏見が消えて。……とりあえずオレの周りだけでも、玲央の事を少しずつ、分かってくれたらいいなあ。


 それから。

 ……いつか、玲央が相手だって。
 言えたら、いいな。 すぐじゃなくていいんだけど。

 もっとずっとずっと玲央と一緒に居れて、もっともっと大事になってった頃、とかでもいいから。



 大好きなのが玲央だって、言えたらいいな。






しおりを挟む
感想 790

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

偽物の僕は本物にはなれない。

15
BL
「僕は君を好きだけど、君は僕じゃない人が好きなんだね」 ネガティブ主人公。最後は分岐ルート有りのハピエン。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【Stay with me】 -義理の弟と恋愛なんて、無理なのに-

悠里
BL
高3の時、義理の弟に告白された。 拒否して、1人暮らしで逃げたのに。2年後、弟が現れて言ったのは「あれは勘違いだった。兄弟としてやり直したい」というセリフ。 逃げたのは、嫌いだったからじゃない。ただどうしても受け入れられなかっただけ。  兄弟に戻るために一緒に暮らし始めたのに。どんどん、想いが溢れていく。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

処理中です...