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◇「恋人」

「ノロケ?」*玲央

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「おはよ、玲央」

 勇紀が言いながら、近づいてくる。


「……ああ。また彼女と早く来たのか?」

 そういえば先週もそんな事してたよな。


「うん、そう。で、玲央が見えたから寄ってきたら、奏人が居たから、隠れちゃった」
「聞こえたか?」

「うん。悪い。なんかもう動けなくて」
「別にいーけど。なんか飲むか?」

「その白いコーヒー」
「すげー甘そうだけど」
「それが美味しいんじゃん」

 ぴ、と購入して、勇紀に渡す。

「サンキュー」
 受け取って、蓋を開けてすぐ飲んでる。

「うまーい」

 そんな声を聞きながら、自分は無糖の紅茶を買った。


「奏人、ちょっと落ち着いてたね」
「……そうだな」

「まだまだ玲央の事は好きそうだけど」
「――――……」

 紅茶を流し込んで、ふ、と息を付く。


「部室行くか?」
「ん。行く」

 2人で歩き出しながら、勇紀が笑う。


「玲央が1時間目に居ても、驚かなくなってきた」
「あ、そ」

「優月は元気? まだ会ってないんだよー、良かったねって言いたいのに」
「――――……連絡すれば?」
「嫌だよ、直接言いたい」

 結構な勢いでそう言われて、苦笑いしつつ頷く。
 部室について、オレがさっきの席に座ると、向かい合う席に勇紀が座った。


「……奏人だけどさ」
「ん?」

「――――……さっきの聞いてたら、まあ大丈夫そう、かなぁ」
「……」


「あいつが一番、玲央の事好きだと思ってたから、ちょっと心配してたんだけど…… こないだもキスしてたしねー、最後に」

 苦笑いの勇紀。


「……まあ、玲央の事が好きすぎたんだよな、あいつって」
「――――……」


「あいつ、男にも女にも、すげえモテるらしいのに、玲央以外とそういう関係持ったとか聞いた事ないし。玲央とも寝るけど彼氏もいるとかいう女の子とかより、一途すぎたもんなー」

「――――……何でオレなんか 好きなんだか……今までのオレ、結構最低だったけどな」


「あ、自覚した」


 クスクス笑う勇紀に、ふ、と苦笑いで肘をついた。


「……最近すげえ自覚してる」

「はは、素直、玲央。 優月と一緒に居るとそういうのが移っちゃうのかな?」



 クスクス笑って、勇紀がそんな風に言う。
 ふーと息を付いて、シャーペンを手に持った。


「詞つくる?」
「ん」


「めちゃくちゃラブラブな詞、書いてみたら?」
「――――……恥ずい。無理」

「……ていうか、いつも結構恥ずいこと、最近普通に言ってるけどね」
「そうか?」

「――――……いっつも考えてる事書いてみればいいじゃん」


 クスクス笑いながら言う勇紀に、んー、と少し考えていると。



「あ、そういえば……雪ちゃんのSNS見た?」

 勇紀が不意にそう言った。


「あー……見てない」

「お前ー……頼んどいて何で見てないんだよー」
「優月と居るとあんまスマホ触んねーから……」

 苦笑いでそう言うと、勇紀は、ああなるほど、と呟いてから。



「……だからそういうのだよ」
「ん?」


「そういうのは、恥ずかしくないの? スマホに触んないほど、優月に集中してるって事でしょ??」

「――――……」



「そういうさー、自分で気づかずノロケてる事、最近の玲央、多いよ」



 勇紀がニヤニヤしながら言ってくる。




「でもそっか、気づかずノロケてるから詞にすんのは難しいのかな??」



 
 

 ――――……スルーしよう。




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