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◇「恋人」

「報告?」*玲央

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「なあ、2人、大学何年?」

 里村さんが急にそう言う。

「2年です」

 そう答えたら、にや、と笑った。

「じゃあ今年成人だよな」
「はい」

「誕生日いつ?」
「オレは11月22日です」
「そうなんだ!」

 里村さんより先に優月が反応した。

「誕生日知らなかった!」
「……言ってなかったかも」
「覚えとくね」

 ウキウキ楽しそうにしてる。そこに里村さんの声。

「優月くんは?」
「……3月3日です」

「へえ。ひな祭り? ぴったりというのか、それは違うのか……迷うなー」

 里村さんに、ははっと笑われて。蒼さんも可笑しそうに笑ってるし。
 優月が超複雑そうな顔をしてる。

「じゃあ、3月3日以降。まだ、大分先だからちょうどいいや」
「何がですか?」

「そん時まで、2人が続いてて、今みたいに仲が良かったら、祝ってやるよ。奢ってやるから乾杯しよ。 いいだろ、蒼」
「――――……2人がいいなら良いよ」

 くす、と笑う蒼さんに、オレと優月は顔を見合わせて。
 すぐに、2人揃って、頷いた。


「めちゃくちゃ奢らせますね」

 つい、そう言ったら、里村さんは一瞬固まって。それから。

「いいねー、面白い」

 ニヤリと笑われた。


 その後、食事を取りながら、色々話している内に結構な時間が過ぎていて。オレと優月は明日も学校なので、先に帰る事になった。里村さんに挨拶をした所で、蒼さんが立ち上がった。

「ちょっと外まで送ってくるから待ってて」

 里村さんにそう言って、オレと優月の前を歩き始める。
 お店の人に、送るだけなのでと断って、蒼さんが店を出た。

「うまかったろ? この店」

 その言葉に頷いて「ごちそうさまでした」と言うと、隣で優月も同じように言って、にこにこ嬉しそうに、美味しかったと笑う。

「今日ありがとな、優月。助かった」
「ううん」
「玲央も。結局ここ迄来る事になったし。悪かったな」
「話せて良かったです」

 ああ、と笑う蒼さん。

「じゃあ、またな」
「あ、オレ明日、教室に絵描きに行くね」
「あぁ。明日はここ最終日だから帰れないと思うけど……頑張れよ?」
「うん。じゃあ、またね」

 2人で蒼さんに別れを告げて、蒼さんが店に入るのを見届けてから、駅に向かって並んで歩き始めた。

「……思いがけずさ」
「え?」

「すぐ報告できて、良かった」
「……ん」

 ふふ、と優月が笑う。


「なんかさ」
「ん?」


「何て言うか…… オレ自身はさ、蒼くんに報告するべきだって、思うんだよね」
「ん」

「今までずっとお世話になってるし。オレが蒼くんに報告するのは、それは当たり前なんだけどね――――……」

 優月がオレを振り仰いで、じっと見つめてから、ふわ、と微笑む。


「玲央は別に、蒼くんに報告しなくてもいいと思うんだよね」

 そう言われて。
 まあ確かに……と初めて思う。

「そう言われると、そうかもな……」
「そうだよね?」

 クスクス笑って、優月はオレを見上げる。

 確かに、オレが蒼さんに報告するって、必要はないかも、しれない。
 でも。

 ――――……そこは、もう必須な気が…。
 優月の両親とかの前に、まずクリアすべきな、もう必須事項だと思うんだけど。


「……なんか当たり前みたいにさ、蒼くんに報告したいから会いたい、とか言ってくれて――――……なんかオレ、すっごく嬉しいんだけど…… この気持ちって、分かる?」

 そうなんだ。……嬉しいのか。
 そう思うと、ふ、と笑ってしまう。

「――――……今初めて、嬉しいんだなって、分かった」

「……だって、嬉しいでしょ、これ」



 ふわふわと幸せそうな顔で笑うのが、めちゃくちゃ可愛いなと思う。



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