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◇週末の色々

◇恋人*優月

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 キスされて、最初は、焦った。
 涙が溢れてて。なんか、玲央の口に、入っちゃいそうで。

「待っ……」

 一旦離れようとして、俯こうとしたけど、すぐに顎を捕らえられて、口づけられた。

 よろけて、後ろの壁に背を付いたら、壁に囲われるみたいになって、そのまま深く、口づけられる。

 舌が絡んできて、いつも通り、霞がかかるみたいに、ぼうっとしてきて。
 もう涙は、完全に止まった。

 ただ、キスが熱くて、息が熱くて。
 なんかもういつも――――……熱くて、舌、溶けそうて、思う。


「ん――――……っ……はぁ……ン」

 息、できないと思ったら、少し外されて、呼吸したと同時に塞がれる。


「…………っんン……ふ……」


 もう、キス、だけなのに。
 おかしく、なりそう。


 好きな気持ちが、溢れそうになる。


「――――……す、き…… れお……」


 玲央の胸元の服、縋るように握り締めながらそう言ったら。
 少しだけ唇が離れて。

 そっと瞳を開けたら、目の前で玲央がオレを見つめてて。
 めちゃくちゃ照れくさそうに笑った。


 ずき、と痛いくらい、胸が、ときめいて。

 ……ときめくとか。ほんとに玲央に会うまで、こんな強い感情、知らなかったけど。

 絶対これがときめくって感情なんだろうなとしか思えない、胸の痛み。



 玲央の笑顔見てると、何だか、顔が勝手に熱くなる。



「――――……もっ回、言って?」

 もう。
 声が。
 甘すぎて。

 いつもも、すごくイイ声で、大好き、なんだけど。

 囁く時は、ほんとに、声が濡れてるみたいに、聞こえる。

 声が、甘くて。
 超至近距離で囁かれると、もう、なんか。力が、入らなくなる。


「――――……好き、玲央……」

 促されるまま、そう言ったら、ふ、と玲央が笑った。


「優月、あのな――――…… オレ、今日、全部、連絡した」
「……れんらく……??」

「付き合いあった奴、終わりにしてもらった」
「――――……」


 頭がちゃんと、働かない。

「――――……あ」
「ん?」

「もしかして、セフレの、皆さん……??」

 そう言ったら、玲央が一瞬変な顔をして。それからくっと笑った。

「何だよ、その言い方――――…… そう。 その皆さん」
「――――……え、今日?」

「そう。優月が働いてる間。連絡とった」
「――――……用事って……」

「うん。それ。結構やりとり時間かかったけど……」

「……そう、なんだ……」

 やることあるしって言ってたの、それだったんだ……。
 そっか。
 

「だから、今もう、セフレは居ないよ。この先も、その関係は、もう持たない」

 玲央は、はっきりそう言って、オレの両頬をぐい、と挟んで、まっすぐに視線を合わせてきた。


「優月。――――……だらだら何回もは言わない。一度、ちゃんと言うから。聞いてて?」
「……うん」

 まっすぐで、キラキラ綺麗な瞳に、吸い込まれそうになりながら、頷くと。
 触れそうなほど近くで、見つめ合いながら、玲央は言った。


「だらしない事してて、ごめん。お前に会う前だったけど……色んな、嫌な思いさせて、本当に、ごめん」
「――――……」

「……まだ会って間も無いし、オレを、全部信じてっていうのは無理だって分かってる」
「――――……」



「でも、これからずっと、信じてもらえるように、するから」


 まっすぐじっと、見つめ返していると。
 玲央が、ふ、と優しく瞳を緩めて笑った。


「オレ、初めて、こんなに誰かと一緒に居たいって思ってる」
「――――……」


 一度、息を止めて。
 少し緊張した顔で、玲央がオレを見つめた。



「優月、オレと恋人として付き合って。それで、オレとずっと一緒に居て?」


 まっすぐ。玲央を、見つめ返してたけど。
 一瞬も、外されなかった、視線。


 ――――……なんか、もう……。
 

 また涙が滲んでくる。
 一度拭ってから。玲央を再度、見上げた。


「……オレ、玲央のこと、だらしないなんて思ってないよ。めちゃくちゃ、モテる人だなあって……そりゃそうだろうなーて、思うけど……オレの目の前に居てくれた玲央の事は、ずっと、ちゃんと、信じてたし、これからも信じる」

 言ってると、涙が、浮かんできて、困る。


 でも、全部言いたくて、まっすぐ見上げていると。
 玲央の手が、涙をぬぐってくれる。


「……だから……玲央が、オレで良いなら」
「良いに決まってる」

 かぶせるようにそう言った玲央に、一度口を噤んで。
 それから――――……。



 嬉しく、なって。



「……じゃあ、今、から」
「――――……」




「オレ達、恋人、で、いいの……?」



 言った瞬間、ぎゅ、と抱き締められて。






「当たり前。――――……ありがと、優月」



 包み込むように抱き締められたまま、言われて。



 オレは、また感極まって、泣いちゃったけど。

 だけど嬉しすぎて、笑いながら。


 だからもう泣き笑いみたいな、変な感じだったけど。




 涙が止まるまで、玲央がずっと抱き締めてくれていて。

 ――――……めちゃくちゃ、幸せな、時間だった。











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