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◇週末の色々

◇蒼くんの写真*優月

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「沙也さん、お疲れ様でしたー」

 残り1時間、少し空いてきたので、沙也さんが上がる事になった。

「またどこかでね、優月くん」
「はーい」

 頷いて、沙也さんが蒼くんの所に挨拶に行ってるのを見ながら、ふ、と息をついた。


 んー。玲央、今頃、何してるんだろう。

 する事あるって言ってたけど……。そんなに長い事、することあるのかなあ。

 オレは接客してたから、結構あっという間だったけど、玲央は、ものすごく時間長かったんじゃないのかな……。

 この上オレんちまでついて行ってもらって、そこからやっと玲央の家に帰れるって。玲央ってば、疲れちゃうんじゃないかな。


 なんか、すごく――――……何回も思ってしまうんだけど。

 そんなにオレと居たいの?
 そんなにオレに、キスしたいの?って。

 何回思ったかなあ、この1週間。


 まあ、そもそもにして、不思議でならないっていうのがあるから、余計なんだけど。


 客観的に考えると。

 玲央の隣に立つのは――――…… そうだなあ。
 似合うのは、すごい、綺麗な、美人の女の子。が似合う気がする。

 もう美男美女で、誰にも入り込めないような雰囲気で。
 ――――……んー。似合うなあ。


 ……でも。
 ……なんか、毎日毎日、オレの隣に居てくれる玲央を見てると。


 すごく楽しそうに笑ってくれてる気がするから。
 一緒に居て良いのかなって、大分、思えてきたかも。




 そんな事を考えている所に、蒼くんと沙也さんが歩いてきて、沙也さんが帰って行くのを見送った。

 静かになって、蒼くんをふと、見上げて思い出した。


「あ。ねえ、蒼くん。今、話しても平気?」
「ああ。誰か入ってくるまでなら。何?」
「うん、あのね、玲央のバンドなんだけどさ」
「ああ」

「写真、撮ってもいいなあって思う? 撮りたいと思うかどうかを聞きたくて」
 オレの言葉に、蒼くんは、んーと首を傾げた。

「そうだな……。昨日ちょっと見ただけで、全然知らねえからな。ある程度は作品とか調べてから決めるから」
「うん」

「でも優月と仲良くしてる奴らだから、好意はどーしてもあるけど」

 そんな蒼くんの言葉に、ふ、と笑ってしまう。

「好意、は嬉しいけど……蒼くんが撮りたいって思うかどうかだからさ」
「まあな。 でもどっちにしても、今は忙しすぎて、写真集とかは無理かな」

「そっか。うん。分かった」
「――――……撮って欲しいって言ってた?」

「ん、玲央の、レコード会社の人が、蒼くんの写真のファンで、もっとバンドが大きくなったら、いつか……て思ってるんだって」
「へえ……」

「オレも、蒼くんが撮る気になってくれるのか聞きたかったから。もちろん依頼とかしたい時は会社としてちゃんとするって言ってたよ」
「ん。――――……そう、だなあ」

 蒼くんは、んー、と考える。

「撮りたくないとは、思わない、てとこかな」
「あ。そうなんだ。ふふ。十分かなー」

「十分か?」

 蒼くんが苦笑い。

「だって、絶対撮りたくないってならなくて良かったと思って。蒼くんが撮りたいって思って撮ってる写真、ほんと素敵だし。いつか、蒼くんに撮られた玲央たちを見てみたいから。 見れるかもって希望は、残ったから、十分」
「――――……」

 言い終えても、蒼くんの返事がないので、見上げると。
 ぷ、と笑った蒼くんに、不意に髪の毛をくしゃくしゃと撫でられた。


「髪の毛くしゃくしゃにしないでよ、スーツ着てんのに、おかしいしっ」


 整えつつ蒼くんから少し離れると。
 蒼くんは、面白そうにクスクス笑った。


「――――……お前って、ほんとオレの弱いとこ、ついてくるよなぁ」
「え?」

 蒼くんを見上げると、ふ、と蒼くんが笑った。



「いいよ。いつか――――……あいつらが今よりもっと大きくなってきたら、撮ってやる……かもな」

「え。 あ、うん!」

「かも、だぞ? 小さくなってったら撮らねえぞ」
「うん、伝えとく。わー、ありがとう、蒼くん」

 何だかとっても嬉しくて、気持ちがほくほくする。


 蒼くんが撮ってくれた玲央たちの写真かー。
 いつか見れたら、絶対幸せだなー。

 なんて思っていたら、蒼くんが、あ!と声を出して、オレをパッと見下ろした。



「そーだ、前から言おうと思ってたんだ。優月、20才んなったら、写真撮ってやるよ」
「え、ほんと?」

「好きなカッコしていいぞ。スタジオでちゃんと、撮ってやる。考えときな、衣装何着たいか」

「うん。――――……まあでも、3月だからねー……まだまだ先だけど」
「――――……お前3月生まれって感じだよな。そのままって感じ」

「どういう意味……」
「日にちもなんかなー」

「いいの、もう」

 ――――……最初に誕生日を伝えた時、なんか、まだ学生だった蒼くんに、超大笑いされて、小さかったオレには、ちょっとトラウマになったからね。



「ひな祭りの日だもんなあ?」


 クスクス笑う、蒼くんをじっとり睨みながら。
 はー、やれやれ、とため息をついた。



「いいじゃん、ただの3日だし」
「似合うよなーって話だよ」


 くぅぅ……。
 もう、蒼くん、まだ笑うか。







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