【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

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◇週末の色々

◇怒ってても*玲央

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「蒼くん、オレが帰ってからお昼行くって言ってたから、ちょっと早く帰れば……接客してなければ蒼くんと話せるよ」

 優月がそう言うので、まだ大分戻り時間には早かったけれど、店を出る事にした。

「あ、ごめん、玲央、トイレで歯磨いてくる、待ってて」
「ん」
「接客だからさ」

 そんな風に言いながら、優月が鞄を持ってトイレに消えていった。
 先に会計を済ませて、少し待つけれど、まだ出てこない。

「連れがトイレなのでちょっとオレも借ります」
「はいどうぞー」

 店員に声をかけて、トイレに行くと、優月がうがいをしてる所だった。


「あ、ごめん、玲央、今終わるから」

 水を静かに吐き出してから、そう言う。
 狭いトイレの中には、優月しか居ないのが一目瞭然。

「ごめんね、待たせて」
「全然。――――……そうじゃなくて」

 タオルで口を拭いてる優月の顎を捕らえて、くい、と上げさせる。
 
 ちゅ、とキスすると、びっくりした顔。
 笑ってしまう。

「お前、オレにキスされんの、少しは慣れない?」
「……だって、いつも、急なんだもん……」

「もういっそ、いつでもされると思ってたら?」
「……それはちょっと……」

「優月……」

 キスして、舌先だけ、少しだけ触れ合わせる。
 ぴく、と震えた舌を少し絡めてから、すぐ、離した。

「……っ」
「これで我慢する」

 オレがそう言うと、優月はかあっと赤くなって。
 何を思ったか、むー、と口を膨らませて。

 オレに背を向けて、歯ブラシを洗ってる。

「優月?」
「――――……あの……玲央」

「ん?」

「――――……なんか……あの……」
「ん?」

 鞄に歯ブラシをしまってから、優月がオレを振り返って、見上げてくる。


「あのね……した……」
「ん?」

 首をかしげて、歯切れの悪い優月を見下ろしていると。
 優月は、ふ、と視線を落として、恥ずかしそうに。

「こういう所で、舌、入れないで……」

 と、優月が言う。


「ぞく、って、して――――…… くすぐったく、なっちゃうから……」
「――――……」

 優月を引いて、背をドアに押し付ける。
 こちら側に開くドアだから、向こうから押されても最初開かない。

 すぐ出ればいいか――――……。

「優月さ……煽ってんなら、天才」
「…………っ」

 違うから!と目を剥いてる優月に、笑ってしまいながら唇を塞ぐと、優月が、ぎゅうっと瞳を閉じる。

 舌を入れて、深く絡めて。

「ん、ン……っ」

 すぐに、甘い、声が、漏れる。
 何となく、目を閉じずに、優月を見てると。
 ぎゅっとつむってる睫毛が、震えてる。


 は。――――……可愛い。


「……ふっ……は――――……ん」


 ゆっくり、キスを離す。

 ……赤くなって、涙が滲む瞳が、ゆっくり開く。

 ああ。もう。
 ……ほんとに、どんだけ可愛いんだろ。



「だから、玲央……っもう」

 怒ってる優月に、ぷ、と笑いながら。


「出よっか、行ける?」
「……いける、けど……」

 むむむむーーーー。

 ……あ、怒ってる。
 ものすごい、ジットリとした瞳で、オレを見上げてくる。


  怒ってても、可愛いって、なんだろう。






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