【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

文字の大きさ
上 下
226 / 838
◇週末の色々

◇怒ってても*玲央

しおりを挟む



「蒼くん、オレが帰ってからお昼行くって言ってたから、ちょっと早く帰れば……接客してなければ蒼くんと話せるよ」

 優月がそう言うので、まだ大分戻り時間には早かったけれど、店を出る事にした。

「あ、ごめん、玲央、トイレで歯磨いてくる、待ってて」
「ん」
「接客だからさ」

 そんな風に言いながら、優月が鞄を持ってトイレに消えていった。
 先に会計を済ませて、少し待つけれど、まだ出てこない。

「連れがトイレなのでちょっとオレも借ります」
「はいどうぞー」

 店員に声をかけて、トイレに行くと、優月がうがいをしてる所だった。


「あ、ごめん、玲央、今終わるから」

 水を静かに吐き出してから、そう言う。
 狭いトイレの中には、優月しか居ないのが一目瞭然。

「ごめんね、待たせて」
「全然。――――……そうじゃなくて」

 タオルで口を拭いてる優月の顎を捕らえて、くい、と上げさせる。
 
 ちゅ、とキスすると、びっくりした顔。
 笑ってしまう。

「お前、オレにキスされんの、少しは慣れない?」
「……だって、いつも、急なんだもん……」

「もういっそ、いつでもされると思ってたら?」
「……それはちょっと……」

「優月……」

 キスして、舌先だけ、少しだけ触れ合わせる。
 ぴく、と震えた舌を少し絡めてから、すぐ、離した。

「……っ」
「これで我慢する」

 オレがそう言うと、優月はかあっと赤くなって。
 何を思ったか、むー、と口を膨らませて。

 オレに背を向けて、歯ブラシを洗ってる。

「優月?」
「――――……あの……玲央」

「ん?」

「――――……なんか……あの……」
「ん?」

 鞄に歯ブラシをしまってから、優月がオレを振り返って、見上げてくる。


「あのね……した……」
「ん?」

 首をかしげて、歯切れの悪い優月を見下ろしていると。
 優月は、ふ、と視線を落として、恥ずかしそうに。

「こういう所で、舌、入れないで……」

 と、優月が言う。


「ぞく、って、して――――…… くすぐったく、なっちゃうから……」
「――――……」

 優月を引いて、背をドアに押し付ける。
 こちら側に開くドアだから、向こうから押されても最初開かない。

 すぐ出ればいいか――――……。

「優月さ……煽ってんなら、天才」
「…………っ」

 違うから!と目を剥いてる優月に、笑ってしまいながら唇を塞ぐと、優月が、ぎゅうっと瞳を閉じる。

 舌を入れて、深く絡めて。

「ん、ン……っ」

 すぐに、甘い、声が、漏れる。
 何となく、目を閉じずに、優月を見てると。
 ぎゅっとつむってる睫毛が、震えてる。


 は。――――……可愛い。


「……ふっ……は――――……ん」


 ゆっくり、キスを離す。

 ……赤くなって、涙が滲む瞳が、ゆっくり開く。

 ああ。もう。
 ……ほんとに、どんだけ可愛いんだろ。



「だから、玲央……っもう」

 怒ってる優月に、ぷ、と笑いながら。


「出よっか、行ける?」
「……いける、けど……」

 むむむむーーーー。

 ……あ、怒ってる。
 ものすごい、ジットリとした瞳で、オレを見上げてくる。


  怒ってても、可愛いって、なんだろう。






しおりを挟む
感想 791

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

処理中です...