217 / 825
◇週末の色々
◇大事*玲央
しおりを挟む優月は、可笑しそうに笑って、オレを見上げた。
「でもオレ断らなかったし。それ言ったら、オレもとんでもないんじゃない?」
「――――……何で、拒否んなかった?」
優月は、んー、と少し唸ってから、オレをじっと見上げる。
「……言ってなかった、ていうか……いつか聞こうかなと思ってたんだけど」
「ん?」
「――――……あの時、玲央が、クロにさ」
「ん」
「……お前もぼっち? みたいな聞き方して、クロを抱き上げてた気がして」
「は……?」
「あ、聞き間違いかもしれないんだけど……近づいた時に、そう聞こえた気がして」
「――――……」
思わず、固まる。
聞き間違いじゃない――――……言ったのは、覚えてる。
咄嗟に出た、自分の言葉に、何言ってんだオレ、と思ったのも、覚えてる。
それ、優月に聞かれてたとか。
――――……なんか。
無性に恥ずかしいし。
「……れ、お??」
優月の肩に、はー、と沈むと。
優月はクスクス笑い出した。
「……言ってたってこと?」
「――――……」
無言だけど、肯定してるのは伝わってるだろう。
優月は、くす、と笑った。
「……聞き間違いかなーとも思ってたんだけど……だって、どう見ても、ぼっちとかの人じゃないしさ」
その言葉に、はあ、とため息をついて。
「――――……それ言った、オレ。 なんか自然と出て、自分でも、何言ってんだろって思ったやつ……」
そう言うと、優月は、そっか、と呟いた。
「……聞き間違いかなと思ったけど……なんか、玲央の事が、気になって。側に、居たいなって思って……って、よく分かんないよね」
「――――……」
「クロにさ。すごく優しい声で、話しかけてたから。 どんな人がこんなに優しく話しかけるのかなーって思ったのが最初だったし……だから、玲央と話す前から、玲央のこと、優しいなって思ってたんだよね、オレ」
「――――……」
「……キスも初めてだったのに……なんでもいいから側に居てみたいとか。オレも意味、分かんないから……玲央のとんでもない、も、別にそこまでじゃないよ?」
そう言って、ふふ、と優月が笑ってる。
「――――……」
何か、今、色々と、思っても無かった事を。
――――……しかも、結構大事な事を。
さらっと、言われた気がする。
優月は、大した事だと思って話して無さそうだけど。
そういえば、あの時。
オレと寝てみる? て聞いたオレに、一緒に居たいって、言ったっけ。
――――……最初から。
ぼっちとか、意味わかんねえこと、言ってたオレの側に居たいと、思ってくれたのかと、思うと。
「優月……」
「ん?」
「――――……オレ、お前が、大事」
「え」
「……すげえ大事」
「――――……」
優月の肩から顔を上げて、まっすぐ見下ろしたら。
優月が、みるみる真っ赤になった。
「――――……真っ赤」
すり、と頬に触れる。
「……ほんと、可愛い」
じ、と見つめて、そう言うと。
優月は赤いまま。ふ、と笑った。
「――――……大事とか…… こんな風に言われたの、初めて」
なんだかゆっくりと言葉を紡がれて。
――――……ぎゅ、と抱き締めた。
「オレだって、言うの、初めてだし」
そう言ったら。そっと、優月の手が動いて、ぎゅ、としがみつかれた。
「……オレも、玲央が、大事」
「――――……」
――――……なんか。ものすごく。胸の中があったかいというか。
良く分からない感覚が、広がる。
生きてて、優月に会えて良かった、なんて。 思ってしまった。
さすがに照れくさすぎて、言えなかったけど。
かわりに、すこし強く、抱き締めた。
323
お気に入りに追加
5,207
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる