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◇週末の色々

◇好きなとこ✳︎玲央

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「めちゃくちゃ美味しいー」

 テーブルに広げた和食を、向かい合って、食べ始めた瞬間。
 優月がほわほわと、笑顔になった。

「お味噌汁、美味しい」

 優月がものすごく美味そうに食べるので、オレも味噌汁に口を付けた。

「ほんとだ。出汁うまいな」
「ねー……幸せすぎる……」

 そんな事を言いながら、こくこくみそ汁を飲んでる。


「和食で良かった?」
「うん、もちろん。ありがとうー」

 何の照れもなく、こんな笑顔で言われると。
 ……めちゃくちゃ可愛い。

「ライブハウス初だったんだろ?」
「うん」

「どうだった?」
「……オレ、全然聞かなかったでしょどんなとこか」
「そうだな」

「テレビとかでたまに見る、地下とかの小さいライブハウスを想像してたの。ていうか、ライブハウスって全部そういうものなんだと思ってたから……だから聞かなかったんだけど」
「あぁ。じゃあ、びっくりした?」

 優月はうんうん、と頷いて、苦笑して。

「建物の名前、合ってるけど、ほんとにここなのかなーって、ドキドキしちゃった。入って、またびっくり。オレ、何人位来るのかとか、聞くべきだったよね」

 クスクス笑ってる優月に、ふ、と笑ってしまう。

「コンサート会場みたいなとこなんだもん。ほんと、びっくりした」
「そっか。――――……どうだった? バンドの演奏は、練習で見てただろうけど。 オレらの初ライブ」

 そう聞いたら。
 優月は、箸をおいて、まっすぐオレを見つめた。


「めちゃくちゃ、良かった。 1曲目から泣いちゃう位だったし。練習で聞いてたけど、やっぱり、音とかも全然違うし、玲央たちの本気度も違うし…… カッコよかったよ」
「――――……そっか」
「うん! ありがとう、呼んでくれて」

 キラキラした瞳で、嬉しそうに言う優月。 

「また玲央たちのステージ見たいなあって……今も、思うよ」
「6月に大学でバンドの大会があるよ。――――……優月、食べていいよ」

 クスクス笑いながら、食べるのを促すと。
 あ、うん、と箸を持ち直す。

「バンドの大会って?」
「あの大学、バンド活動が有名なの知ってる?」
「うん、いっぱいバンドのサークルがあるのは知ってる」

「審査員投票と、スマホ使った観客投票とで、順位が出てさ。3位までを決めるんだよ」
「へえーそんな大会があるんだね。その観客投票って、オレも入れられるの?」
「ああ」
「面白そう。楽しみだなー」

「去年は2位だったから――――……今年は優勝するって、特に勇紀が張り切ってる」
「玲央たちが負けちゃうんだ……すごい大会なんだね」
「4年の先輩達。僅差だったけど――――…… 完成度が、全然違った。その人達、プロになったよ」

「そうなんだ。なるほど……」

 モグモグ食べながら、頷いてる。


 優月の好きなとこ。

 食べ方、可愛い。
 ――――……美味しそうに食べるとこも。

 ふ、と笑ってしまう。


「なに? 玲央?」
「――――……いや……美味そうに食べるの、かわいーなーと思ってただけ」

 一瞬でさっと赤くなって、ぐ、と喉に詰まらせそうな優月に、今度は苦笑い。


「……詰まっちゃうよ」
「分かった、もー言わないから」

 クスクス笑いながらそう言うと。
 優月は水を飲んでから、ふ、とオレを見つめる。






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