上 下
198 / 825
◇週末の色々

◇触れるだけで

しおりを挟む

 

「びっくりした、優月。 キスされてんのかと思った」

 蒼くんが帰った後、勇紀がすぐに近づいてきて、そう言った。

「オレもかなり驚いた」
「されてないんだよな?」

 颯也と甲斐も、そう言ってくる。

「うん。ていうか……オレもびっくりした」

 言うと、皆、ふ、と苦笑い。

「面白い人だねー蒼さん。あれ、玲央に反省させるため?」

 勇紀が笑いながらそう言う。
 そこに、玲央が、近づいてくる。

「あ、玲央、あの――――……」
「今聞いたから、大丈夫」

 苦笑いの玲央。

「あ。うん。……ごめんね、びっくり、させて」
「――――……優月が謝んなよ」

 玲央がため息をついて。ますます苦笑いで。
 オレをまっすぐ見つめてくる。

「――――……悪いんだけど……オレ、もう、行って良い?」

 皆と美奈子さんと里沙さんに、玲央が、そう聞くと。
 いいよ、しょうがねーな、と皆が口々に言う。

 美奈子さんと里沙さんが、何だかそー、と近づいてきた。

「ねえ、優月くん、ひとつだけ」
「はい?」

「今ここに居た彼って――――…… 写真家の、野矢蒼さん?」
「あ、はい。絵も描いてます、けど……」
「優月くん、仲が良かったり……?」
「えっと……兄、みたいな人です」

 そうなんだ、と、何だかすごくキラキラしてる、美奈子さんと里沙さん。

「何か……ありますか……??」

「結構芸能人の写真、撮ってるでしょ? すごくファンで」
「あ、そうなんですね」
 
 蒼くんが褒められると、すごく嬉しい。

「ね、優月くん。私たち、彼に、玲央たちの写真をいつか撮ってもらえたらと、ずっと思ってたんだけど……」
「あ。そう、なんですね……いつも忙しそうなんで聞いてみないと分からないんですけど……明日も会うので、聞いてみますね?」

「気に入った人しか撮らないって聞いてて、玲央たちの事まだ知らないだろうし、もっと有名になってからいつか、って思ってたんだけど……もちろん、正式な依頼はちゃんと会社としてするから」

「大丈夫です。ほんっとに、気に入った人しか撮らない人なんで……可能性があるかどうかだけ、さりげなく聞いてみます」

 ――――……有名とか無名とかじゃなくて、蒼くんが撮りたい人しか、撮らない。でもそのかわり、蒼くんに撮られた人は特別に綺麗に写る。そうやって、蒼くんは、自分の価値を上げてきた、気がする。

 でも。……蒼くんが撮った、皆の写真、見たいなあ。
 蒼くんの写真、すごく、素敵な場面を切り取るから。


 撮ってくれる気になってくれたら、いいなあ。
 と、思ってると。


「優月、そろそろ――――……」

 玲央が、オレの腕に触れた。

「あ、うん」

 玲央を見上げて、頷く。

 なんか。
 そんな、接触が、嬉しいとか。
 どき、と、胸が弾む。とか。

 なんか。やっぱり今日、朝から離れてたし。ここに来てからは、視界に居るのにずっと微妙に離れてたから。


 隣に居て、触れてくれるのが、すごく、嬉しい、かも……。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした

雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。 遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。 紀平(20)大学生。 宮内(21)紀平の大学の同級生。 環 (22)遠堂のバイト先の友人。

処理中です...