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◇週末の色々

◇涙*玲央

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 雪奈と話していると、優月と蒼さんが勇紀達の所に来た。
 雪奈に、優月の事を教えると。

「何であそこ2人スーツみたいな服着てるの?」
「優月はバイト帰りだったから。もう1人の人の仕事の手伝い」

「ふーん。ていうか、あのお兄さん、すっごいイケメンすぎ。優月くんの元彼とか?」

 オレの表情を見て、雪奈は「冗談だよ」と、クスクス笑う。

「優月くん、ここから見る限り、今までの玲央の相手とは、イメージ違うね」
「……そーかもな」

 ……もう言われ慣れてきた。
 つい、苦笑い。

 オレが、今までと全然違う。
 優月が、オレが選ぶタイプじゃない。

 まあ――――……自分でも思うし、何度も言われたし。


「ねね、優月くん、お話してみてもいい?」
「……いーけど。変なこと」
「言わないけど。……言われて困るのってどのあたり?」
「……まあないけど。オレがどんな感じで来てたか、知ってるし」

「じゃあいいじゃない。玲央は来ないでね、あたし優月くんと話したいから」

 クスクス笑いながら雪奈が立ち上がって、いってきまーす、と優月に向かって歩いていく。

「――――……」


 ふ、と息をついてると。
 今まで雪奈が座っていたと所に、奏人が座った。

「玲央、お疲れ」

 雪奈より、かなり距離が、近い。

「ああ。……ありがとな」

「あのさ……玲央、いつ会える?」

 ――――……奏人とは別のところで話そうと思ったけど……。
 今、誤魔化すわけにも、いかないか。もう、分かってるような、言い方な気がする。

「――――……奏人、あのな」
「……無理」

 言いかけた所で、奏人が遮った。

「――――……セフレやめるとか、嫌なんだけど」
「――――……」

 まあ。鋭い奴なのは分かってるから、驚きはしないけど。

「……オレ、玲央に本命が居ても気にしないし」
「――――……」

「…………今まで通りで良いじゃん。たまに会ってさ。何でダメなの?」


「……昨日夕方一緒に居た奴でしょ?」
「――――……ああ」

「……オレ、今まで通りセフレでいいし。 玲央と切れるのは、嫌だよ」


「奏人……悪い」
「――――……」


「セフレの関係続けたままじゃ、向き合えないから」
「――――……何、向きあうって」

「……オレ、今、あいつに信じてもらいたいんだよ」
「――――……」

 奏人が、黙ってオレを見つめる。


「……オレが今までセフレ何人もで、過ごしてたから。ちゃんと信じてもらうの、ただでさえ時間かかりそうだから」

「今までの皆と、何がちがうの? ていうかさ。ほんとは、分かってるよ。……セフレ、恋人が出来たら別れるって、約束だったし。でも、恋人じゃないんでしょ? まだどうなるか、分かんないんじゃないの?」

「それでも……悪い」
「……また話そ、玲央。今日は、ここまででいいや」

「奏人。……悪いけど、また話しても、変わらない」
「――――……」

「ごめんな」

 まっすぐ見つめると。
 奏人は、小さくため息を吐いた。

「とりあえず、今は聞いた」

 そう言うと。
 そのまま、奏人はオレから離れて、知り合いの方に歩いていった。

 もう今日は――――……これでしょうがないか。
 ふ、と息をついて、顔を上げて。

 雪奈と話してる優月が気になって視線を向けると。


 ――――……って。
 何だ? また泣いてるのか、優月。

 蒼さんに、泣かせるなって、言われたんだけどな……。
 引き取られたら、困るし。


 立ち上がって、優月に近付くと。

「……やっぱり、玲央が好きだなって思ってたら……」

 話しかける直前で、そんな声がした。

 奏人との話で、少し憂鬱になってた心が、ふ、と浮上した。


「――――……何、また泣いてんのかと思ったら……何言ってんの、優月?」

 笑ってしまう。――――……振り返って、あ、と見上げてくる涙目の優月が可愛すぎて、抱き締めたいけど、ここでは我慢。


「お前、どんだけ今日泣くの」

 クスクス笑ってしまいながら、優月の頭をクシャ、と撫でた。
 今は、これが精一杯。


「……もう大丈夫。もう、泣かないよ」
「――――……」

 微笑んだ優月が、オレをまっすぐ見つめて、そう言った。

 ――――……なんだかすごく、まっすぐな瞳。
 キレイな瞳だな。

 もう大丈夫、という言葉が何だか少し気になるけれど後で聞こう、と思いながら、オレは頷いた。

 隣で、面白そうにオレを見てる雪奈に目を移す。

「――――……雪奈、優月と話したいこと、話せた?」
「うん。話せたよ」

「そっか。……感想は?」

 自分でも良く分からないオレの質問に。
 雪奈は、んー、と唸って。それから、クスクス笑った。

「……涙がさぁ。 綺麗すぎて、ズルい、かな」

「何だ、それ」

 その言葉に、ぷ、と笑ってしまう。真下で聞いてた優月も、え、という顔で雪奈を見て固まってる。
 

 まあ。分からなくはないけど。

 急に、びっくりするような、涙を、ぽろぽろと、こぼす。
 ――――……多分、オレとの事が無かったら、こんなに泣いてないのだろうけど。

 早く、落ち着いて。
 そんな風に、優月が泣いたりしないようにしないといけないのだけど。


 ……でも、優月が、自分で気づいてないような感じで零す涙は。
 まあ――――……本当に、可愛いと、思ってしまうけど。

 優月と雪奈から離れ、蒼さんの隣に、腰かける。


「お。何?」

 ふ、と面白そうに笑む。

 こういう感じが、多分、いつもからかわれてると優月が言うのかなと、なんだか納得しながら。


「――――……もう今日は、これ以上はオレ動かないので。……優月に迷惑かからない程度で自分で動きます。オレ今からステージで少し歌ったりしなきゃいけないんで、その間に何かあったら――――……優月おねがいしていいですか?」
「ふうん。ていうか、そこは言われなくても、だけどな」
「……迷惑かけたらすみません」

「可愛い優月の為だし、別に何も迷惑でもないけどな」
「――――……」

 返事に困ったオレに、蒼さんは、可笑しそうにぷっと笑った。

「深い意味ねーよ? 恋愛感情なんて無いっつったろ? まあ今はふざけたけど。そんなあからさまに困った顔すんなよ、意外に素直なー、お前」

 クックッと笑う蒼さんに。

 ――――……ああ、これか、からかわれてるって。
 と、また実感する。

「――――……なあ、今奥で話してたの、セフレ?」
「……はい」
「……手強そうだなー」
「……かも、ですけど……まだ納得はしてくれてなさそうですけど、まあ、話すしかないんで……。そのほかの事も、少しずつ、解消できると思うので」
「思うので、何?」

「優月が多少泣いても、引き取らないでくださいね。あと今日、オレ、優月連れて帰っていいですか?」

「――――……」


 オレのセリフに、蒼さんは、ぷ、と笑って――――……はいはい、と、頷いた。
 





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