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◇週末の色々

◇「信じる」*優月

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「そろそろ、あっち行ってみるか?」

 蒼くんの言葉に、少し、躊躇う。

「んー……ほんとに来てって、玲央が言ってた?」
「まあどうなるか分かんないけど、つってたけど」

「……じゃあ少しだけ行って、あんまりだったら、もう帰ろうかな……」
「優月の好きにしな」
「うん」

 蒼くんと一緒に、玲央たちが居る、前の方に近付くと。
 玲央と目が合った。玲央が、ふ、と優しく笑ってくれたので、いいんだ、と思った瞬間。
 
「優月」
 勇紀が笑いながら近づいてきて、オレを引っ張る。

「座って座って」
 と、勇紀の隣に座らせてくれる。

 多分、これはきっと色々からガードしてくれてるんだろうなと、思う。

「そちらの、すっごいイケメンのお兄さんは? 優月の先生?」
「あ、んーと。先生はそのお父さん、なんだけど……うん、蒼くんも先生みたいな感じ」

「オレ、勇紀です。優月には倒れたとこ助けてもらってから、仲良くしてもらってます」
「ん。助けたのか?」
「あ、そう。駅でね」
「家迄ついてきてくれたんだよね、優月」

 ぷ、と蒼くんが笑う。

「よろしく。オレは、優月の――――……先生っつうよりは、保護者、かな?」
「蒼くんも先生だよ? 保護者みたいでもあるけど」

 クスクス笑ってそう言うと、勇紀が、笑った。

「蒼さん?も、座りますか?」
「とりあえず、飲み物もらってくる。優月もお茶でも飲むか?」
「あ、うん。ありがとう」
「ん」

 蒼くんが、に、と笑って、歩いていく。その後ろ姿を見ながら、勇紀がオレを見つめてくる。

「はー、何か、すっげえカッコいい人だね。年上だよね?」
「うん。30才だよ」
「見えない。若い。でも、年上っぽい雰囲気はあるし」
「うん。そうだね」

「玲央にも張る位のイケメンって、珍しい」

 クスクス笑いながら勇紀が言う。

「優月こっちに来ないようにするって言ってなかったっけ?」
「あ、うん。……なんか、玲央が蒼くんに後で来てって言ったって……」

「……ああ、あれだね」
「ん?」

「あのね、玲央さ、ここで好きな人がいるっていう噂を流しちゃいたいんだって。一晩限りのセフレとかは、それが流れればもう連絡してこないだろうって。でね、その噂流してもらう為に頼んだら、その子が優月を見たいって言ったみたいでさ。――――……ああ、今玲央が話してる女の子」
「――――……そう、なんだ」

「玲央本気で、セフレ、解消しようとしてるからさ。さっき皆で相談して、長い子達とは個別にやり取りした方がいいって事になったから、そっちは少し時間がかかるかもしれないけど――――……」

 勇紀をまっすぐ見つめていたら、勇紀が急に、ふ、と笑った。

「玲央は玲央でまあ、自分なりに頑張ってるから。優月は優月で考えな? まあ無理する事でもないしね」
「うん。ありがと」

 勇紀、ほんと優しいな。


 今も玲央、その女の子と、ずっと話してる。

 皆に相談して、セフレをどうしたらいいか、話してくれたって事だよね。

 玲央が色々考えてくれるのは、すごく嬉しい。けど。
 …………そんなに急いで、無理、しなくて、いいのに。

 こんなライブの日にまで、そんなこと……。

「優月、あんまり嬉しくない?」

「……ううん。嬉しい。んだけど……ライブの日でさ。疲れてる時にまで、そんな事してくれなくてもいいのに、て……」

 何となく、少し視線を落として、そう言ったら。

「あー、ちがうよ。ライブの日にまで、やってるって話じゃなくて。ライブの日だからこそさ、Stayを歌ったり、Loveの意味が分かるとか言ったりしたからこそ、今日流したかったんだよ」
「――――……」

「いーんだよ、優月は、そんなの気にしなくて。玲央が勝手に優月を大好きんなって、優月に信じてもらいたいから勝手に急いでるだけ」

「――――……ね、勇紀?」
「うん?」

「玲央は、オレが玲央のこと、信じてないって、思ってるの?」
「……んー? んー……なんか語弊があるかなあ…… うーんと…… あれだよ、玲央がキスしてても平気、とか、優月、言うでしょ?」
「……あ、うん」

「今までしてたんだし、それ分かってて玲央のとこに行ったんだから平気、みたいな」
「……ん」

「それが嫌なんだよ、玲央。他の人としないって、信じて欲しいんだと思う」
「――――……」

 ……玲央って、色々あって「恋人」が、煩わしくなっちゃったけど。
 きっと元々は、誠実な人、なんだろうな……。


 ……過去の玲央の話を色々聞いてて。
 玲央はそういう風に、色んな人と付き合ってきた人だって、知ってて。

 それを、オレが、絶対やめてなんて、言えないと、思ってたから。
 分かってるから平気、と勝手に思い込もうとしてて。

 玲央が別の人と会ったり、そういう事しても、知ってたから平気って言えるように。オレが、傷つかないように。

 オレ、自分でも知らない内に、予防線を張ってたのかもしれない。

 そのせいで、玲央が、今、頑張って、くれてる…?


 ……オレの前に居てくれてる玲央は。
 ずっと、優しくて、本当に、まっすぐで。
 
 本当に、カッコいい人だって。
 オレ、思ってる。 目の前に居てくれてる玲央を、信じてない訳じゃない。


 なんか、自分でもここんとこの気持ち、複雑すぎて。
 どう言ったら、うまく伝わるんだか分からないけど。


 玲央に、言ってみよう。
 オレの前に居てくれてた、玲央の事は、全部、信じてるって。


 これからの、玲央の事も。信じて、一緒に居たいって。


 






  

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