【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

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◇週末の色々

◇涙の理由*優月

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 ――――……すっごい、泣いちゃったなー……
 情けない……。

 はー、とため息。

 個室に一旦こもって、泣き止んで、やっと外に出た。
 鏡の前に立って、自分の顔を鏡に映す。


 ――――……顔、もう大丈夫かな。


 何でオレあんな、泣いちゃったんだろ。
 トイレに来てから考えていたんだけど。

 なんか、多分。蒼くんが、玲央と離れなって言ったのが、すごいショックだったんだろうなと、思う。

 蒼くんのアドバイスっていつも、ほんとに的確で。

 迷った時に言われる蒼くんの言葉って、オレにとってはすごい、もう言う事聞いて考えれば大丈夫、くらいの言葉ばかりで。

 今までは、それでうまくいってた。

 美大に行こうか、教育学部に行こうかで悩んでた時も。
 美大で習うような事は教えてやれるし、絵描いて生きていきたいっつーなら、オレと父さんが助けるけど、小学校の先生になりたいかもしれないなら、そっちは行っとかないとなれないんだろ?と言われて。

 もちろん、全部助けてもらおうなんて思った訳じゃないけど。
 確かに、絵は後からでも学べる。ずっと習ってる久先生と蒼くん達がすごい人達だし、そういう意味ですごく恵まれてる。けど、教職課程は大学で取っといた方がスムーズ。卒業しちゃってからだと、なりたくてもなかなか難しい。

 最後は自分で考えて決めてはいるけど、蒼くんのアドバイスは、いつも響いてきて。

 ――――……だから。

 蒼くんに、玲央と居ない方が良いって言われて……。
 もし、玲央が嫌がるなら、好きでも一緒に居るな、と蒼くんが言って。
 それは、そうした方がいいのかもしれないと、一瞬思ったんだけど。


 蒼くんを頼りにし続けてきて、聞いておけば間違いない、と思う自分と。
 ……玲央の事だけは、蒼くんが言っても、やだ、と思う自分とで。 
 

 なんだかすごく、ぐちゃぐちゃになって。
 気付いたら、泣いてて。

 しかも、玲央と離れるのはやだ、なんて言いながら泣くという…。 

 蒼くんが、苦笑いしてるのは分かったけど。
 止められなくて、どうしようと思って俯いたら。


 玲央が、来てくれてて。
 涙を、拭ってくれた。

 
 あれ、オレは、近づかないって言ってたのに。
 玲央が来ちゃった……そう思ったんだけど。


 何泣いてんの、て。
 声が優しくて。見つめてくれる瞳が、優しくて。
 触れてくれる手が優しくて。

 この人から離れるの?て思ったら、余計に、泣きそうになって。


 蒼くんに、ダメだろ、と言われた瞬間、あ、と思い出した。
 で、トイレに、来たんだけど。


 ――――……だめだなー、オレ。
 ……玲央と付き合いのある人達がいっばい居て。
 
 そんな所で、玲央が オレに優しくしてたらあんまり良くないって勇紀とかも言ってて……一応そこらへんも、分かってたのに。
 すぐ玲央しか、見えなくなっちゃうし……。


 ドアが開いて。すぐに、優月、と呼ばれる。

「蒼くん……」
「泣きやんだか?」

 苦笑いの蒼くん。

「うん。ごめんね、もう大丈夫」

「――――……優月、今日夕飯、一緒に食べないかも」
「え? あ、用事?」

「お前に用事が出来るかも?」
「オレに??」

「今、玲央と少し話した」
「何を……?」

「まあ……どういう奴かとか、優月の事どう思ってンのか、少し分かったかな」
「――――……」

 どう、思ったんだろう。
 黙ったまま、蒼くんの言葉を待っていると。


「――――……離れろって言ったの、撤回するから。泣くなよ」
「え」

 顔を上げて、蒼くんを見つめる。


「離れるとか無理だろうなと思いながら言ったけど。ごめんな、泣かせた」
「……撤回?」

「ああ。 あいつ、お前がそれを嫌がっても、嫌って言わねえんだろ?」
「……多分、言わないかな……」

「じゃあさっきの無しにする」
「そうくん……」

 何だかまた泣きそうになってしまうけれど。


「もう、泣くなよ」
「泣かない……」

 ぐっと、堪えるのだけれど。


「……泣いてるし」

 はー、と、笑いながら、ため息をつく蒼くん。
 

「――――……けど、そんなに泣くとは思わなかった。ごめんな?」

 くしゃくしゃと、オレの頭を撫でながら、また苦笑いを浮かべている。


「ううん。……ありがと、蒼くん」


 蒼くんに反対されると、すごく、キツイから。
 さっき、それでも、玲央と離れたくないって言っちゃったけど。

 撤回って言ってくれて。 
 ……やっぱり、嬉しい。


「――――……泣き止んだら戻るか」
「うん。……ね、蒼くん、オレに用事が出来るって、何?」

「んー、さっき、連れて帰っていいのかって聞いたら、良いって言わねえんだよな、玲央」
「――――……?」

「んで、あいつの方に来いってさ」
「え? ……どうして?」

 蒼くんの言葉に、一瞬にして、泣いてた気持ちとかも、真っ白になる。


「来いって、玲央が言ったの?」
「どうなるか分かんねえけど、その方が、動くかなーとか言ってたけど」
「――――……動くって??」

 何だろ動くって。何が??

「さあ……分かんねえけど。何にしても、お前、玲央についてくんだろ?」

 そんな風に言った蒼くんの顔を見て。
 うん、と思ったままに頷くと。蒼くんは、クスっと笑った。


「じゃ、行くか。とりあえずさっきの席戻るから。様子見ながらいこ」
「――――……うん」

 ちょっとドキドキするけど。
 ――――……玲央の側に行って良いって。

 ……やっぱり嬉しい。のかも。オレ。

 
 蒼くんの後についてトイレを出て。
 少し、ドキドキしながら、打ち上げの会場に、戻った。



 

 
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