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◇週末の色々

◇玲央と。1*野矢蒼

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「……蒼くんが言った事――――……オレが、思ってたけど、よく分かんなかったことを……言葉にしてくれたみたいな気がする……」

 一生懸命話してるのを黙って聞いていると、ウルウルした瞳でじっと見つめながら、優月は続ける。

「嫌じゃないと思ってたけど……やっぱり、よく考えたら少し嫌なんだけど…… でも、最初から分かってた事だし大丈夫な気もするしって……でもでも……って、すごく何度も考えてて――――…… だから今、蒼くんが言ったの…… すごく、自分の気持ちが、分かった」

 そんな風に言いながら、見つめてくる優月をまっすぐ見返していると。
 ウルウル潤んでいた瞳から、ぼろ、と涙が溢れた。


 さすがに少し驚く。
 しばらく、泣くのは、見ていなかった。


「ああもう、お前……」

 
 まだ、そんな風に、泣くか。つか、泣けるのか。

 ほんと、すげえなお前。
 ――――……ほんと、変わんねえな。


「――――……でもオレ……」
「――――……」


「玲央と、離れるのは――――……やだ……」


 うーーー、と噛みしめているけど、涙がぽろぽろ溢れてくる。


 思わず、失笑。


 なるほど。納得。
 急にボロボロ泣くから、一体何で泣いたんだと、思ったけど。

 そこね。



 手で、頬の涙を拭ってる優月に、苦笑しながら。


「分かった分かった、泣くな、優月」

 ぷ、と笑ってしまう。

 こんなに一生懸命恋してるのに、離れろとか。無理だと思いながら言ったけど。
 まさか、こんなに泣くとは思わなかった。


 脱いで椅子に掛けてたジャケットから、ハンカチを取り出そうと、後ろを向いた時。
 何だか周囲が、ざわついた気がして。


 なんだ?と思った瞬間。


「優月、どうした?」

 そんな声がして――――……不意に玲央が、優月の前に立った。

 ざわついたのは、突然こいつが、ここに歩いてきたからか。
 急に近くに来た玲央に、まわりの子等が、きゃあきゃあ言ってる。

 その視線をものともせず。
 玲央は、優月をまっすぐ見下ろした。


「――――……何で泣いてんの?」
「……玲央……?」

 ぐい、と優月の頬の涙を指で拭う。


「玲央……」

 突然現れた愛しい玲央の登場で、優月はすっかり忘れているけれど。


 ――――……ここでは、いちゃつかない方が良いはず。


「優月、ダメだろ。 トイレ行ってこい。10分。泣き止んできな」
「え。あ……そっか。うん。いって、くる」

 優月が急いで立ち上がって、足早に出て行った。
 

「で――――……とりあえずそこに座れば」

 玲央に向かってそう言うと、玲央はまっすぐオレを見つめた。


「蒼く……じゃなくて…… 蒼さん、ですよね?」
「ん。――――……そこ座って。オレと話しに来た事にしようぜ」

 頷いて、玲央が座る。

「……何て呼ぶ?」
「玲央で――――……オレは、何て呼べばいいですか」

「いいよ、さっき言ってた、蒼さんで。……じゃあ玲央。初めまして、だな」

 玲央はオレの言葉に頷いてる。

 近くで見ると、ほんと、整った顔をしてる。
 まあそりゃ、モテるだろうし。

 さっきの優月の涙の拭き方とか、視線とか。
 可愛くてたまんないと、思ってるんだろうから――――……。

 そりゃ、あれをされてる優月が、こいつを好きなのも、分かる。

 壁際で、男2人並んで。
 玲央と、オレって――――……一体どんな風に見えてんだか。
 そう思って、ちょっと可笑しくなってると。


「優月から、すごく、蒼さん、の名前を聞きます」
「……へえ? それで、ちょっとヤキモチ妬いてる?」
「――――……」

 無言。否定しないっつーのは、そういうことか。
 ――――……つか、否定しねえのな。面白い。


「今、優月が泣いた理由、聞きたいか?」
「はい」

 まっすぐ、見つめられる。

 
 ――――……遠くからだと、やっぱりチャラいイメージがあったけど。

 違いそうだな、というのが感想。


 まあ、優月が、見た目だけの変な奴選ぶ訳ねえとは、思ってるけど。









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