【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

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◇週末の色々

◇考察1*野矢蒼

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 ちびっこん時から、何か、気に入ってた。

 お絵描き教室なんて、やまもりの子供が来る。
 それこそ、始めた頃は、100人単位の子供が来てて、さすがに父さんに、取りすぎだと文句を言った。
 来たいと言ってる子を断れないとか言うから、仕方なく、高校生だったオレも、お絵描き教室を手伝う事になってしまった。

 ガキ、嫌い。
 オレも高校生でまだガキだったけど、それよりもっとガキすぎる幼稚園&小中学生。

 地獄か? 
 しかも、ちょっと若いオレは、ガキが嫌いなのに、何故か大人気で。
 そう、嫌われてんのが、分かんないのが、ガキんちょ達……。まあそんなに無下にも出来ないから、仕方ない。

 お絵描きしにきてんのか、オレと遊びに来てんのか、よく分かんねえガキんちょ達の相手をしている中で。

 1人。
 いつも静かに絵を描いてるちびっこに気付いた。

 オレの所に、遊びには来ない。
 でも――――……挨拶だけはちゃんと来る。

 最初、「蒼先生」とか、呼んでた。
 「先生じゃねえよ」と言ったら、「じゃあなんて呼ぶの?」と聞いてきた。
「くん、とか?」と答えたら、「蒼くん?でいいの?」と見上げてくる。

「いーよ」

 そう言ったら、何だかふんわり、嬉しそうに笑った。
 それが、優月、だった。


 お絵描き教室を開いて、2年も経つと、オレと遊びにきてるのかというような奴らは、皆ほとんどやめて行った。
 やっぱり残るのは、絵を描きたい奴だけ。

 2年も経つ頃には、優月はもうすっかりオレに懐いてて、蒼くん蒼くん言ってた。

 優月の事は、父さんも気に入ってて、最初の頃から、優しい絵を描く子、と褒めまくってた。まあ、分かる。
 上手下手というより――――……なんか、和む絵。

 それが作品として売れるかどうかは、分からねえけど。
 なんか本当に独特な感じ。

 父さんが孫みたいに可愛がってるって事もあって、オレも何だか自然と弟みたいに可愛がるようになってた。

 習い事に来てるだけの奴とは、あのアトリエの中で付き合いも終わるはずなのだけれど、優月だけ違った。あそこに来た、数えきれない子供達の中で、優月の事だけ、外でも色々面倒を見てきた。優月がスマホを持ってから、連絡を取るようになったけど。とにかく、何もかも全部。あれだけの子供が居た中で、優月だけ、特別だった。

 オレにとって、優月は、完全に、可愛い、弟。
 オレは兄弟は居ないから分からないけれど、もしかしたら本物の兄弟よりも、他人だからこそ、余計に可愛いのかも。

 優月の学校の学園祭とかに様子見に行くとか。もう、完全に保護者気分。
 それを、あいつも、喜ぶもんだから、まあ余計に可愛い。普通、中高にでもなったら、嫌がる奴も居るだろうに。

 顔をのぞかせると、「蒼くん!」と、めっちゃ笑顔で駆け寄ってくるし。
 なんだろうなー、こいつ、いつまでこんなかな。と、思い続けて、ここまできてる。


 ――――……人生、そこそこムカつく事なんて色々転がってる。

 父さんが金持ちで、もともと有名な芸術家。
 それは幸運かもしれないけれど、不運でもあって。

 オレがどんなに頑張ったって、そういう後ろ盾があるからだ、という視線。
 組み伏せるまで、苛つく事なんか、いくらでも、あった。今だって無い訳じゃない。

 荒れてる時、優月の側で絵を描いてたりすると、何か和んだ。
 何も言わなくても。
 愚痴らなくても。

 優月が描いてる絵を見ながら。
 優月をからかいながら。自然と笑って。

 優月はいつも助けてくれてありがとう、的な事を言うけど。
 ――――……結構助けてもらってきたのは、こっちかも。と思ってる。



 と。そんな優月が。


 セフレって――――……と言い出した時は、ほんとに驚いた。
 超奥手で、まだちゃんとした初恋もまだで、いつ、どんな彼女を連れてくるかなーと楽しみにしていたのに。

 セフレ?? しかも、男?? は?? 
 一瞬、相手、どーしてくれようか、と思った。


 ――――……けど、どうも優月が、ふわふわ幸せそうで。
 言葉通りの感じの関係じゃないのかなとも思った。

 
 玲央との待ち合わせ場所に送りがてら、見ていたら。

 ――――……優月を見てすごく、嬉しそうに笑った。
 優月が、見ていない所で、優月を、大事そうに見ていたし。
 大事そうに背中に触れていたから。


 まあ、相手どーしてくれようかってのは、とりあえず、保留にしてやった。


 まあ。 ……まだ優月、若いし。 取り返しもきくし。
 恋愛経験まるでないっていうのも、20才になんのにどーなの?とも思うし。

 オレは、どう考えても、優月に恋愛感情は、無い。
 やっぱりどう考えても、男は無い。

 だから、いまいち、優月が男とっていうのが、理解できないんだけれど。

 でも――――…… あまりに一生懸命、恋してるように見えるから。
 見守ってやりたいとは、思う。


 ライブに行きたい、それはOK。早く帰っていいよと言った。
 打ち上げに行きたい、けどちょっと怖い。 ついてくことにした。
 もう少し、「玲央」の事も見てみたかったし。


 そんなこんなで、今。ここに、居る訳だけれど――――……。


 オレの視線の先で、玲央が、色んな奴に囲まれてる。
 まあ派手な女がほとんど。
 男も居るけど――――…… あれはセフレ? 友達?
 こっからじゃさすがに分かんねえな……。


「お待たせしましたー」

 さっき声をかけたスタッフの女の子が、笑顔で現れた。
 飲み物を置いて、オレに、またいつでも呼んでくださいね、と見つめてくる。気づかないふりで、ありがとうと言って、さらっと流した。

 優月に、アイスコーヒーと、ミルクとシロップをほれほれと渡す。
 玲央の居る方を見ながら、ビールを一口、飲むと。



「蒼くんてさ?」

 優月が、じーと、見つめながら、呼びかけてくる。

「ん?」
「モテすぎて困る?」

「……は?」

 何だそれ。
 クスクス笑ってしまいながら、聞き返すと。

「だってさ、受付の子も、さっきの飲み物持ってきてくれた子も、絶対蒼くんに興味あるし……そういえば昔から、蒼くんがオレの友達に会うと、あの人誰って超聞かれたなーて思い出した」
「まあ。嫌って程、モテるけど……」

 ほんと、嫌って程。
 優月は、まあ知ってる事も多いから、そうだよね、と頷いてる。


「蒼くん、悔しいけど、カッコいいもんね……」

 ん?

「なんでそこに、悔しいけどって入るんだよ」

 額をこん、と小突く。

「あ、つい本音が……あ、また言っちゃった……」

 失言を続けて、優月が、やばいと、口を手で塞いでいる。


「お前……なんな訳?」

 苦笑いとともに優月を見ると。

「……だってさ。オレと2人の時は、馬鹿笑いしたり、いじめて喜んでたりするじゃん?」
「オレがいつお前いじめてんの」

 クスクス笑う蒼くん。

「結構いつも……?」
「いじめてるつもり、まったくないけど?」

「ええっ」

 そうなの??とばかりに、オレを必死で見てる。
 何だそれ。腑に落ちねえな。

 可愛がってる、の間違いだな。
 ……まあ、そんな反応も面白いから別に良いけど。





 
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