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◇そばに居る意味

「オレだけに」*優月

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「優月、風呂入ろ」

 玲央のマンションについたらすぐそう言われて。
 ……もう毎日一緒なのに、やっぱり恥ずかしい事に変わりはなくて。

 全然慣れないなーなんて思いながら、体を洗ってたら。
 つ、と背筋をなぞられた。

「……っ!」

 声も出ないで、震えてしまって。
 後ろでクッと笑い出す玲央を、もう涙目になって睨んでしまう。

「弱すぎ……」

 伸びてきた手が脇に触れる。

「ひゃ……っ」

 びくびくっ。体震えるのって、どうやれば止められるんだろ。
 なんかもうすっごい恥ずかしいしっ……。


「お前、何でそんなに弱いンだよ」
「オ、レのせいじゃな――――……」

 玲央が変な風に触るからだし……っ。

 言いたかったのに、唇にキスされて、言葉を飲み込まされる。
 舌、当たり前みたいに入ってきて。ゆっくり絡んでくるのを、感じる。


 初めて、キスした日から、今日で、一週間。

 月曜から毎日ここに来て、毎日、一緒にご飯食べて、学校の中でも会って。
 毎晩、抱き締められて一緒に寝て。

 なんか、一週間で、世界が、全然違くなっちゃった感じ。


 今日。
 …………玲央と。繋がっちゃったし…………っ。

 思い出すだけで、恥ずかしい。
 けど、嬉しくて。


 ずっとずっと、玲央ばっかりが頭の中にあって。


「……ンん……」

 舌、絡んで。
 こんなに気持ち良いなんて、知らなかった。

 ぞくぞくして。
 少し瞳を開けると。

 目の前に、めちゃくちゃ整った顔のドアップがあって。
 どき、と胸がまた弾む。

「……ん、ふっ……」

 息を、奪われるとか。
 ――――……舌、全部、溶けそうとか。

 そんなの、考えたことも、無かったのに。


「――――……優月、やらしー顔してる」

 くす、と笑う玲央が、唇を離してオレを見つめて、そんな風に言う。

 そんな台詞、言われる事なんて、想像した事すらなかったし。


「……っ……玲央のせい、だよ……」
「ん。そーだな」

 クスクス笑って、玲央がぷに、と両頬を手で挟む。


「オレが触ると、すぐやらしくなっちゃうもんな……」

 ちゅ、と首筋にキスされる。

 弱い刺激なのに。
 背筋をゾクゾクしたものが、這い上がってくる。


「は。ほんと、すぐ感じるし――――……かわいーよな」
「…ん……っ!」

 頬をぺろ、と、舐められて、びくんと、震えてしまう。


「……っれお……」

 意地悪しないでよ、と思って。涙が浮かんだ瞳で、じっと見上げると。
 玲央が一瞬、動きを止めてくれたけど。


「――――……ゆづき」

 ぎゅ、と抱き締められて、またキスされてしまう。



 ………誰かの腕の中が、こんなに、幸せなんて、思わなかった。


 そもそもオレ男だから。
 抱き締める方だと思ってたし。


 こんな風に、抱き締められる事があるなんて。
 ――――……それでその相手がこんなに愛しいとか。


 ……正直、ほんとは、意味が分からない。
 あまりに変えられすぎて、怖い位だし。

 あまりに、玲央の事ばっかりで、
 ……これで良いのかなって、思わなくも、ない。んだけど。


 泡がシャワーで流されて。
 二人でバスタブに入った。

 後ろから抱き締められて、すごく密着してて、ドキドキしてると。
 ちゅ、と頭にキスされた。

「――――……お前にしかしてないこと」
「…………え?」

 不意に言われた言葉に、何か分からなくて、振り返ると。

「頭撫でるの、お前にしかしてないって言ったろ」
「――――……あ、うん」

 そういえばさっきそんな話したっけ。
 頷きながらまた前を向いて、抱き締められるままに、お湯の中で玲央の体にすっぽりと埋まっていると。


「こんな風に風呂入るのも、お前としかしてない」
「――――……」

「頭、洗ってやるのも、ドライヤーしてやるのも、お前だけだし」
「――――……」

「……逃げられたのを追いかけたのも、初めてだし。泣かせたって思って、焦って謝りに行くとかも初だし」
「――――……」

「惚れてる、とか、言ったのも初めてだし。一緒に暮らそうとか、何も考えないで言えたのも初めて」

「――――……」

「まあそれは、考えて言えって話かもしんねえけど」

 クスクス玲央が笑う。



 ――――……えっと……。

 なんか…。
 それ全部オレだけにしかしてないの?と思うと。

 …………玲央の言ってる言葉が、嬉しくて。
 何て答えたらいいのか、よく、分からない。



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