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◇そばに居る意味

「可愛がられてる」*玲央

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 ……なんか、優月。
 めちゃくちゃ可愛がられてる気がする……。


 優月の希望で、和食メインの居酒屋に来た。

 六人掛けのテーブルに通され、優月を奥に入れてしまおうとしたら、勇紀に止められた。

「優月、初参加なんだから、真ん中に決まってるし」

 そう言った勇紀に、優月は、

「え、オレ端っこで……」

 と言っていたが。
 勇紀が、ダメダメと言いながら、あくまで真ん中に座らせようとしている。

 いいのかな?と聞いてくる優月にオレが頷くと、颯也と甲斐も、座んなとか言いながら、優月がそのまま真ん中に座る事を促していた。

 と言う事で、五人でどう座ったかと言うと。
 通路側から、勇紀、優月、オレ。オレの真正面に甲斐、隣に颯也。
 これで座る事になった。

 優月は最初はど真ん中でどうしようかなと、少し居心地悪そうに座っていたが、普通に皆と話し出すと、楽しそうに笑い出した。

 一時間位経過して、今はもう、いつも通りの優月。


「優月、これ美味しいから食べてみて」
「何?これ」

「盛り合わせんなってたから良く分かんないけど……何かの刺身」
「何それ」

 クスクス優月が笑って、勇紀の前の刺身を口にする。

「うん。美味しい。――――……けど何か、分かんないね」
「だろ」

 あはは、と笑いあってる二人。
 ……こいつらほんと、仲いいな。

「玲央も食べてみて?」

 皿をもって、優月が楽しそうに振り返る。

 これ、優月と二人きりだったら、食べさせてっていう所だけど。
 ――――……んな事言ったら、確実に、餌食だ。我慢。

 箸を持って、その刺身を口にする。

「玲央、何か分かる??」

 期待してる瞳だけれど。


「さあ。全然わかんね」

 言うと、優月が、くすっと笑った。

「美味しいからいっか」

 あは、と優月が楽しそうに笑う。


「颯也も甲斐も、食べる?」

 そんな風に言って、目の前の二人にも差し出してる。

 最初は、颯也と甲斐の名前を呼びにくそうにしてたけど、「ちゃんと呼べよ」と二人に言われて、何回も呼ばされてる間に、すっかり慣れたらしい。


 ――――……何か、優月が居るだけで、いつもの四人の空間と、全然違う。

 まず勇紀がいつも以上に、はしゃいでるし。
 颯也の、たまにひどく冷める口調も、なぜか優月に対しては出ない。
 ……まあ、冷めた口調でつっこむような事を、優月が言わないからかもしれないけれど。

 甲斐は基本ニヤニヤしながら優月を見てるし。
 で、たまにオレに視線を向けて、面白そうにしてる。

 ものすごく、何か言いたげなので、完全に無視を続行中。


「明日優月来るんだろ? 一番前とか来させんの?」

 颯也がオレにそう聞いてくるのを聞いて。

「遅れて行くから、後ろから見ると思う」

 と、優月が答える。

「遅れるのか?」
「うん。絵の先生の個展の受付のお仕事があって。お願いして、少し早く帰してもらえる事にはなったんだけど……」

 ね、と優月がオレに視線を投げてくる。
 あ、その話で思い出した。

「なあ、勇紀」
「んー?」

 勇紀が、優月の後ろからこっちに顔を向けてくる。

「優月のチケットにサイン書いとくから、受付の奴に伝えといて?」
「OK。今回オレの知ってる子だから、頼んどく。優月入ったら、入り口のライトを一度光らせてもらおっか」
「ああ」

 オレと勇紀の会話に挟まれて、優月がオレを見てる。

「お前来たら、こっちから確認できるようにしてもらうだけ」
「――――……」

 良く分からないのか、ただ、うん、と頷いてる。

「なあなあ、そろそろ聞かせて、優月」
「ん?」

 甲斐が少し乗り出してくる。

「うん、なに?」


 あー、何か。
 嫌な予感しか、しない。



「玲央のどこがいーの?」

 皆それぞれ、ぴた、と止まる。

 颯也はため息をつきながら甲斐を見てるし。
 勇紀は、あー…と、優月を見てるし。

 オレは、甲斐をじろ、と睨んで。


 で、優月はと言うと。

「え」

 と言ったきり。かあっと赤くなって固まった。

「あ、と…… どこ、が……」

 優月は、パッとオレを見て、さらに耳まで真っ赤に染まった。


「――――え…………全、部……??」


 優月のセリフに、三人が、一斉に、ぷ、と笑い出した。


「全部なの? マジで?」
「いーの? 優月、全部とか言っちゃって、玲央が調子に乗るから」

 甲斐と勇紀が騒いで、颯也は、クックッと、珍しく笑いを抑えきれないと言った風に笑ってる。


 あー……ダメだな。これ。
 さっきからずーっと、隣で触りたいの我慢してたんだけど。

 ……無理。


「え?――――……ン……っ」

 オレに肩を抱かれた優月は瞳を見開いたまま、オレの腕の中に引き込まれて。キスされた瞬間、ぎゅ、と目をつむった。

 退こうとするけど、逃がさず。
 ほんの数秒、深くキスして。ぱ、と唇を離す。


「……っ……れ……」

 もはや、オレの名も呼べないらしい。
 見開かれた瞳に、ぷ、と笑いながら。


「何で、こんなかわいーかな?」

 優月をよしよし、と撫でながら、思わず3人に向けて、そう言った瞬間。

 優月がもう火が付いたみたいにさらに真っ赤になって。
 三人が信じられないといった顔で、オレを見た。


「マジでやばいな、玲央……」
「ヤバいしか言えない」
「……あーあ、優月真っ赤……」

 颯也と甲斐と勇紀が顔を寄せて、ブツブツ言ってる。


「つーか、ずっと我慢してンのに、お前が全部とか言うから……」


 ぶに、と赤い頬を摘まんでそう言うと。
 オレのせい……??という顔で優月が見つめてくる。






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