【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

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◇そばに居る意味

「ブレーキ」*優月

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「まあ今戻っても、絶対ぇ文句言われるな……」

 面倒くさそうに玲央が言うので、笑ってしまう。


「あ、優月、夕飯どうしたい?」
「んー。玲央の好きでいいけど……なんかずーっと外食だよねー太りそう」
「いいぞ、お前もうちょっと太っても。もちもちしそう」
「…………絶対やだし。何もちもちって。……今の勇紀に言ってもいい?」
「は? 絶対ぇだめ、言うなよ。未来永劫、もちもち言われるから」

 そんな風に玲央が言うのを見ながら、ぷ、と笑ってしまった瞬間。


「玲央」


 涼やかな声が聞こえて。
 声の方を見ると。

 何だか、モデルさんみたいに、綺麗な子が立っていた。

 ……男の子?だよね?
 と、迷う位、綺麗。

 なんかオシャレだし。女の子て言われても、信じるかも。


「奏人? 何でここに居るンだ?」

 玲央がそう言った。

「バンドの友達待ってたら、あそこの窓から玲央が見えたからさ。
 ――……ごめんね、邪魔しちゃって」

 急に、オレに視線を向けて、彼は、にっこり笑った。


 うわー……。
 ――――……ほんと綺麗。

「あ、ううん。大丈夫……」

 そう返すと、奏人と呼ばれた彼はまたにっこり綺麗に笑って。
 今度は、玲央にまっすぐ向いた。


「玲央ちょっと話そうよ」
「――――……これから練習に戻るから、今度でいいか?」

 玲央は、多分、断ろうと、してるのかな。とは思うけど。
  
「すこしでいいから」

 彼がそう言って、玲央に近づいた。

「――――……優月」

 玲央が、少しのため息交じりに、オレの名を呼んだ。

「うん?」
「その飲み物、あいつらに渡して、すぐ行くからって言っといてくれるか?」
「あ、うん。分かった」

 玲央に頷いて見せて、オレは歩き出した。


「――――………」


 ……あの雰囲気って。
 きっと、玲央とそういう関係の、人だよね。


 玲央の相手の人、見るの、こないだの女の子に続いて、二人目か……。


 ……んー。どっちの人も。
 めちゃくちゃキレイ。


 なんだろう、なんか。

 さっきまで、玲央の言葉に浮かれて、すごくウキウキしてたのだけど。

 ……少し冷静になったかも。
 …………ちょっとブレーキ掛かったかな。

 ……そうだよね。

 ああいう、「玲央好み」な人達が、
 玲央の周りには、いっぱい、居るんだよね。

 ――――……玲央が、オレと居るって決めても……。

 ていうか……オレなんかと居る、てなったら、
 相手の人達、怒っちゃうんじゃないのかなあ?


 うーん。
 …………オレがさっきの子みたいに綺麗だったら、
 他の人達も、諦めてくれるかもしれないけど……。


 ………………うーん。
 なんか、何を考えればいいかすら、よく分かんなくなってきた。

 気になるけど、一度も振り返らずに、
 皆の居る建物に、入った。

 階段を上って、さっきの部屋のドアを開ける。


「おっそいよ! 玲央! 何回練習させる気だよ!どーせまた……っと」

 勇紀の気持ち良い位元気な文句が、帰ってきたのがオレだけな事に気付いた所で、ぴたっと止まった。

「あれ?? 優月だけ?」
「うん。玲央、知ってる人に会って話してる。すぐ行くって言ってたよ。飲み物渡しといてって言われたから」

 言いながら三人の元に飲みものを届ける。

「あーそうなんだ。ごめんね、ありがとね」

 勇紀が受け取ってくれて、二人にも渡してくれた。
 甲斐と颯也にもお礼を言われて、「玲央が買ってくれたんだけどね」と笑ってると、甲斐がオレをまっすぐ見つめた。

「玲央は誰と会ったの? 優月も知ってる奴?」

 普通に、優月と呼んでくれてる甲斐に視線を返した。

「知らないんだけど…… 玲央は、奏人って呼んでたよ」

 勇紀と颯也も、ふ、とオレに視線を向ける。

「奏人? ……モデルみたいな奴?」
「うん」

 勇紀に聞かれて頷くと、途端に苦笑い。


「ああ。捕まっちゃった訳ね……」

 甲斐がそう言いながら、飲み物を口にしてる。

「玲央の事、大好きだもんな、あいつ」
 勇紀もふ、と息をついた。

 なるほどー。そうなんだ。
 皆も、知ってる人なんだ……。


「……優月、なんか言われたか?」

 颯也が、オレをまっすぐ見つめながら、そう聞いてくる。

 ん? ……何か? とは??


「何かって……? 邪魔してごめんねって言ってくれたけど」

 三人が、少し眉を寄せた気がする。
 勇紀がすぐ、オレの方に近付いてきて。

「……言ってくれたって……優月って……」

 むぎゅ、と抱き締められて、ぽんぽん、と背を叩かれる。

「勇紀?」
「なんつーのかなー……悪い奴じゃないんだけどね。玲央の事が超大好きすぎなんだよね。玲央に対してはうざい事はしないから、玲央は切ってはないんだけど……」
「――――……」

「まあ、玲央が嫌がってるから、玲央には直接言わないけど、すげー玲央の事を大好きな奴は、結構居るからなー……とりあえず、優月は、そういうのには近寄らないのが一番」

 ポンポンポン、と撫でられてると。

 がちゃ、とドアが開いた。
 勇紀に抱き付かれてるオレを見ると。


「……は? ――――……何してンの勇紀」

 玲央は近づいてくると、オレを勇紀から引き離した。
 腕を掴まれたまま引かれて、玲央の胸に寄りかかってしまった。


「つーか、玲央が優月一人にするから慰めてただけだっつの」
「――――……」

 勇紀のそんな言葉を聞いて玲央がじっとオレを見てくるので、そんな事言ってない、という意味を込めて、首をぶるぶる振った。


「つかもともと、ジュース買いに行くだけで何分かかってんだよ、遅すぎだよ、玲央」

 続けてぶーぶー言ってる勇紀を完全に無視して、玲央はオレをじっと見て。


「ごめんな、一人で行かせて。あんまりお前があいつと絡まない方がいいかと思って」


「つーか、聞け―!」

 勇紀が苦笑いしながら怒り始めたのだけれど、ふっと何かに気付いたみたいに玲央を見つめて。


「あ、そこらへん、分かってるんだ、玲央」
「そこらへんて?」
「優月と絡ませない方がいいとか」

「……分かるっつの」


 玲央の手が不意に伸びてきて、よしよし、とオレを撫でた。




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