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◇そばに居る意味

「惚れてる?」*優月

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 震えが落ち着いてきた頃。
 体をくる、と反転させられて。

 真正面でぎゅ、と抱き込まれた。


「……優月」

 髪を撫でるついでに、首筋に触れてくる指にすら、まだゾクゾクする。

 なんか。 
 中、まだ――――…… 疼く、というか……。

 ……もっと…… 中に、居てほしかった、というか。

 そんなとんでもない欲求に、自分ではっと気づいて、驚く。

 ……わー、バカバカ、オレ。
 何言ってんだー。

 ……ああ、ヤバい。
 中に受け入れても、全然痛くなかったし。

 ……気持ちいいしか無かったし。
 玲央をやっと受け入れられて、すごく嬉しい。……というか。 


 まだ全然、あれって、途中、なのかもしれないけど。

 でも――――……。
 とにかく、今、嬉しいしか、無い。


「……可愛いなー、優月」

 囁かれて、何とか瞳を開けて、見上げると。
 まっすぐ見つめてくれる玲央がすごく色っぽくて。どきん、と胸が大きく弾む。

 もう、何で、こんな、カッコよくて、色っぽいのかな。
 ズルい……。そんなんで、可愛いとか囁いちゃうとかさ……。

 どうしよう、すごく、愛しすぎて。
 抱き締めてくれてる玲央の服を、ぎゅ、と握り締める。

 少し抱き合った後。
 このまま待っててと言われて、玲央が部屋を出て行った。

 起き上がって、乱れたシャツの前を合わせていると、
 玲央がすぐにタオルを持って帰ってきた。

 色々拭いたり、後始末をしてくれてる玲央に、「ごめんね」と言うと。
「これ最近毎晩やってるし」と、玲央はクスクス笑う。

 ……た、確かに。いつもしてくれてるよね……。
 オレ、寝ちゃうから……。

「……ますますごめんね」
 と言ったら、全然いいよ、と、玲央がすごく可笑しそうに笑う。

「あー、ちょっと…ていうか結構、遅刻だなー……ごめんな」

 オレの乱れた服を整えてから、時計を見ながら玲央がそう言う。

「ううん……オレが……」

 最後、して、とか。
 言ったから。余計時間かかったし……。

 玲央が、くしゃくしゃとオレの髪の毛を撫でた。

 タオルをまとめて持ったまま、玲央がベッドの端に腰かけた。
 じっと視線を合わせられて、見つめあう。

「……優月、あのな」
「ん……?」

 まっすぐに、玲央の綺麗な瞳が見つめてくる。

 ああ。ほんとに綺麗だな。
 まっすぐな、瞳。


「オレがお前に、めちゃくちゃ惚れてるって、覚えといて」
「――――……………………」


 ……ん?


 ……ん? 今、なんか。
 ……………………惚れてる???


 ……て言った?


 
「……惚れてる……て、言った?」


 そう聞いたら。
 玲央が、ふ、と笑った。

「言った」

 そう言うと、クスクス笑い出して、よしよしと頭を撫でてくる。


「覚えといてな?」

 笑いながら、ちゅ、と、キスしてくる。


「惚れてるって……好きって、こと?」
「……んー。好きよりももっと?――――……惚れてるってこと」

 ……惚れてる?

 惚れてる……ってどういう意味?
 惚れてるって、好きって事だよね? ……違うの? 

 ただ好きじゃなくて、惚れてる。

 玲央は、そこどう区別してるのかな……。


「――――……分かんねえ?」
「……ん。ごめん」

「オレも、まだよく分かんねえんだけど」
「……うん」

「ただ、今、好きなだけじゃなくて。……ずっと、オレと居てほしいって思う」
「……ずっと?」

「ん。……期限なくずっと」
「――――……」

 期限なく、ずっと????
 

「……つか。分かんねえよな……」
「――――……ごめん」

 オレ頭バカになっちゃったのかな。
 こんなにまっすぐ見つめながら、一生懸命言ってくれてるのに、何だか全然分からない。

「優月が、オレと居たいと思ってくれてる限り、ずっと」
「――――…………」

「……て言い方なら、分かるか?」
「……それ、オレ基準で、考えるの?」

 玲央が居たいと思ってくれている限り、じゃなくて?
 そう思って、思わず、首を傾げてしまう。


「オレはきっとずっと居たいから」
「――――……」

 ますます、分からなくなってきた。
 でも、一緒に居たいと、思ってくれてるのだけは、何となく、伝わってくる。だけど……。

 ずっと……?

 玲央と居られるのは、今だけ、ちょっとの間。
 長くても、学生の今だけの。ちょっとの……。

 …………心の底で思ってた、何となくの、玲央との期限。

 玲央と居る時間に、「ずっと」という言葉は、
 ――――……きっと、あてはまらないと思ってて。

 だから余計にオレ、
 今一緒に居れる限り、一緒に居たいって思ってる気がするし。


 なのに、ずっとって。 玲央が、言うの? 
 オレが、居たい限りずっと……居てくれるって……。


「玲央、どうしよ、オレ、なんか全然……」

 すごく困って、もう素直にそう言った。
 そしたら、玲央は、ふ、と息を付いて。


「……だから……んー。そこ細かく詰めんのは、もう少し後でもいいか?」
「――――……」

「オレまだセフレの状態の奴が居るし。……お前も、オレと会って間もないってよく言うし。まあ確かにまだ、1週間、だし――――……」
「――――……」

「今色々言っても、多分優月、信じられないと思うし。オレもまだ色々中途半端すぎて……時間がちょっと欲しい、かも」

 じっと、玲央を見つめる。


「ただ色んなめんどくさい事抜きにすれば。オレは、お前に惚れてるんだと思う」
「……玲央……」

「こんな風に思うの初めてだから……正直、自分でも驚くんだけど……」
「――――……」

 じっと見つめていると。
 玲央はまた、ゆっくりと、唇を重ねてきた。

「お前のその瞳が好き」
「――――……っ」

「ずっとオレの事見ててほしいと思ってる」
「――――……」


「色んな事が片付いて、お互い納得できるまで、そばで待ってろよな?」
「――――……」

 なんかもう。
 全部、よく分からないけれど。


 ……玲央が、オレを好きだと思うって、伝えてくれてるのは、分かる。



 大好きすぎて、まずいなーと……。
 何回、思わされちゃうんだろうか。






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