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◇そばに居る意味

「胸がざわつく」*玲央

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 黙って考えてるのも性に合わない。聞いてみる事にした。

「――――……なあ、優月さ」
「うん」

「オレが、そういう奴らと居るの――――……嫌じゃねえの?」
「……玲央はさ、なんか……こういう話になるとさ、いつも何か……」
「……ん?」
「……オレに、それを嫌って、言ってほしいの……?」

 逆に質問で返された。
 サンドイッチを置いて、水を一口飲んで。
 そのままコップを握ったまま。


「……だって玲央、重いのとか嫌いなんでしょ?」

 そう言った。

「……オレとだってさ、興味がある、とかで始まったし……玲央がいつもそうなんだろうなっていうのは、分かってて……それでも、オレは玲央と居たいから、居て。玲央、オレと居る時、すごく優しいし、今すごく一緒に居てくれるし」
「――――……」
「……なんかオレ、それで充分、なんだけど……」

 そんな風に言って、オレの言葉を完全に奪って。
 優月は首を傾げた。


「――――……玲央がモテるのはすごい分かるし……玲央が今までそういう関係が楽で、そういう人達と居たのも、最初から知ってるし。別に、それは玲央の自由だし。玲央も相手の人達もそれで良いなら、そういう人達も居るんだろうなって、思うし。……それにオレ、自分も、その仲間入りさせてって言っちゃった位だし……何か玲央に断られちゃったけど……」
「――――……」

 一生懸命話しているから区切るのもどうかと聞いていたけれど。
 色々気になるし。断られちゃったという言い回しも気になるし。
 

「……オレと玲央って、会って1週間位しか経ってないのに。あとは、長く付き合ってる人達ばかりなのに、オレが玲央に、その人達と居るの嫌って言うのは――――…… 違くない……?」

 言ってから、優月は、んー……と考えてる。


「――――……好きって、言っても良いよって、言ってくれて……それだけで嬉しいし」

 少し小さな声で、そう言ってから。
 だから、嫌なんて言わないよ。と、優月は笑う。



 ――――……聞いてて、全然分からなかった部分が、やっと理解できた。


 嫌じゃない訳じゃ、ない。
 嫌だけど、言わない。……言えない、か。

 会ったばかりだから。
 優月以外の他の奴とはもっと付き合いが長いから。
 もともとそうだって知ってて、一緒に居るから。
 優月とも、興味程度で、軽く始まったから。
 他にもそんな感じで始まる人がいっぱい居ると、思ってるから。

 優月が特別なわけじゃないと、
 優月自身が自分で思ってるから。

 オレが、重いのが嫌いなのも知ってるから、
 独占欲ぽいのも出さない。
 
 嫌でも、嫌とは、言わない。

 そう思ってるんだと、やっと、分かった気がした。

 ある意味、最初から、諦めてる状態なんだと。
 分かって、言葉に詰まる。

 どこからどうやって話せばいいのか。
 

「――――……食べて、いい?」

 なんて答えようか固まっていたら、優月はそう聞いてきた。
 頷くと、優月は、食べ始める。


「――――……」


 ……どう話すのが、いいんだ?


「玲央」
「――――……ん?」


「オレ、玲央と居るの好きだから。なんか……そんなに、考えてくれなくて、大丈夫だよ?」


 そんな風に言われると。
 余計に、なんだか、胸のあたりが、ざわつくし。


 とっさに、今はお前の事しか、気になってないと、
 ……抱き締めたくなるし。


 この衝動の意味は。
 ――――……この、胸がざわつく意味は。何なんだ。


 これをどう伝えれば、優月のこの感じを――――……
 どうにか、できるんだろう。





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