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◇そばに居る意味

「ほわほわな気分」*優月

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「優月には最初から優しいんでしょ?」
「んー……優しいけど、比べてないし……」

「まあ確かに、比べようないか。いやでもね、事実としてさ。 毎日同じ奴と会って、泊めてあげて一緒に朝起きて、1限無いのについてきてあげて、それだけでも、おかしいから。泊めてあげるってだけでも、今まで聞いた事無いからね。もう颯也なんか、玲央が誰だか分かんないとか言っちゃってるし」

 あははははー、と楽しそうに笑ってから。
 勇紀は、オレを見つめてくる。

「……セフレいっぱいとかさ。優月にとったら意味分かんない奴なんだろうけど……今、大分面白い方向に変わってきてるから。――――……玲央と居てあげてほしいなー。もちろん、優月が嫌じゃなければ、だけどさ」

「――――……嫌なら、最初から居ないから」
 
 そう言ったら、勇紀は、そっか、とにっこり笑った。


「あ、優月、今日練習見に来る?」
「お昼は会うけど…その後は分かんない」

「ん……って、さっきまで一緒なのに、昼も会うの?」
「カフェに連れて行きたいって言ってくれたから」

 びっくりしたような顔の勇紀は、遂にはため息で、ふー、と顔を横に振り出した。

「もう普通の男ならまだしもさ。玲央がそんなに誰かにべったりってさ……もう……中身が宇宙人になっちゃってるかもとか思うレベル……」
「……宇宙人て……」

 苦笑いを浮かべていたら。
 勇紀がふ、と、校舎の時計を見上げて。

「あ。授業行かなくちゃだよな。またなー、優月」
「うん、またね」

  何やら、ものすごい情報を、ばばーーーっと好きに話して、
 消えて行った勇紀の後ろ姿を見送りつつ。

 ゆっくり歩き出した。

 ……んーと。
 ――――……そうだなー……。

 ……打ち上げ、そっか。
 玲央と関係ある、玲央の事を大好きな人達がいっぱい居るのか……。 

 まあ。考えてみれば、そっか。

 んー。……ますます行きにくいけど。
 でも、もし蒼くんが平気なら、一緒にちらっと覗いて帰るだけでもいいかな。

 ほんとは、お客さんが居る前で、本番で歌ってる玲央を、すっごいすっごい見たいけど。絶対カッコいいよね。見たいなあ。

 端に立ち止まってスマホを取り出して、蒼くんの画面を開く。

「おはよ、蒼くん。明日の受付の事で話があるので、電話が大丈夫な時間を教えてください」と入れて、お願いしますスタンプを追加。

 ほんとは早く帰れて、歌ってる玲央を見れるのが一番嬉しいんだけど。でもお金もらう以上、お仕事だし。駄目だったら諦めよ。


 ……なんか。
 勇紀の話を聞いてたら。

 オレと居てくれる玲央は、色々すごく珍しいのかなと思って。
 ――――……ちょっと、嬉しくなってしまった。

 ……オレが、めちゃくちゃ好きになってる分の、少しでも。
 玲央もオレの事、好きになってくれてたら。

 ……嬉しいな、なんて、思ったり。
 でも、あんまりそんな事、思いすぎない方がいいかな。

 期待しすぎも良くないし。うん。


 でも、なんか、ますます、玲央に会いたくなっちゃった。
 お昼まで、2コマか。長いなぁ。早く、会いたい。


 ……でもでも。
 なんかここ1週間、まともに勉強できてなかったし。そろそろほんとにマズイ気がする。


 頭の中は、相変わらず玲央でいっぱいなのだけれど。
 切り替えて勉強しようと気合を入れた瞬間、手に持ってたスマホが震える。


 蒼くんから返事かなと思ったら、玲央からのメッセージで。


『優月、眠くないか?大丈夫?』

 見た瞬間。
 ――――……ほわ。と、気分が上がる。


「大丈夫。1限頑張ってくるね」

 そう、返事をしたら。


『ん。頑張れ。2限終わったら早く来いよな? オレもすぐ行くから』
「うん。走ってく」
『走んなくていいから』

「うん」の後に、笑ってる顔文字を入れて。
 いってきます、というスタンプを入れた。



 ……もう、やばい位、ほわほわな気分。で。


 ……ダメだこれ。
 

 さっきせっかく気合入れたのに。
 一瞬で崩れたし……。


 
 玲央と別れた時は、かなり時間に余裕があったはずなのに、教室にたどりついた時はギリギリで。
 もうほとんど揃ってる皆の端っこに、急いで座った。

  
 


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