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◇お互いに。

「ふわふわ」*玲央

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「甲斐 大声出して珍しい。クールなキャラどこいった?」

 心底面白いと言った顔で、勇紀が笑いながら、甲斐の隣に座った。
 オレの隣に颯也。

「つーか、オレ、優月を試したら抹殺されるらしい」
「あ、優月の話? 試すって? 抹殺?」

「……べた惚れっぽい事を散々普通に言うから、優月ってそんなにいいのって聞いたら、それ以上想像したらぶん殴るっていうし。今までこんな会話、散々してきたし、なんなら、勝手に試せば、位の事言ってたじゃんって突っ込んだら」
「うんうん?」

 勇紀、クスクス笑ってる。
 颯也は、声がでかい、とか、注意をしてる。

「……優月を試したら抹殺するって言いやがったんだけど」
「あー……」

 勇紀は、ぷっと可笑しそうに笑い出して。
 あはは、と笑い転げてる。


「……それはしょーがないんじゃない? 甲斐が悪いでしょ」
「はー?」

「あー、オレも玲央に加勢するからね、優月にそんな事したら」

 勇紀の言葉に、甲斐ははあ、とため息。

「……しねーよ。ほんとに、秘密裏に抹殺されそーだし」

 疲れたように言ってる甲斐にクスクス笑いながら。
 勇紀は玲央に視線を向けた。


「なんか、オレは、玲央が優月とって、すげー嬉しい」
「――――……つか、勇紀は何で優月と知り合いなんだよ?」
「あれ、オレこないだ言ったじゃん?」
「そうだったか?」

 2人で首を傾げてると。
 
「あん時、優月が居なくなって、その後玲央も居なくなった」

 颯也がそう言って、勇紀が、思い出した、というように笑った。

「そうだ。優月が逃げちゃった後だ、話したの。――――……あれだよ、オレが駅で具合わるくなった時に、助けてくれて、家までついてきてくれた奴の話、したでしょ?」
「――――……結構前の話か?」
「うん。そん時、助けてくれたのが、優月なんだよね。そっからずっと仲よくしてたんだ」
「――――……その話、人の良い奴がいるなと思って聞いてたけど……優月だって思うと……なんか、あいつらしいな」

 くす、と笑うと。
 勇紀が、笑いを引っ込めて。じ、と玲央を見た。


「――――……オレ、玲央がそんな風にふわふわ笑うの、初めて見たかも」
「……なに、ふわふわって。 そんなのしてねえけど」

「してるしてる。 もうお前、それ、マジでやばいから」

 甲斐が突っ込み入れてくる。


「……してるか?」


 1人何も言わない颯也と目が合って、そう聞いたら。
 真顔で一息つかれて。


「……いいんじゃないの? 色んな奴と遊んでも全然満たされてないお前より、ずーっと良いと思うけど」

 ……結局してるって側の意見か。……それにしても。
 ざくざく刺されるみたいな、颯也の言葉。
 ため息しか出てこない。

 勇紀はぷぷ、と笑って。

「……颯也のが一番、突き刺さるよねー……」


 満たされてないなんて事は無かった、と思うんだけど。
 色んな奴と出会って、遊んで。
 ――――……楽しかったし。


「でもさー……優月が一番いいの? 今までの相手の中で?」

 まだ聞くか。と睨むと、だって気になるじゃん、と甲斐。

「――――……つか、まだ、全部はしてねえし」

 3人、また、え、という顔で見てくる。
 ……なんかこういうやりとり、慣れてきたぞ。

「……だって昨日も、一緒だったんだよね? え? 昨日もしなかったの?」
「――――……色々してるけど。まだ途中」

「途中ってどこまで……」

 言いかけた甲斐に冷たい視線を向ける。


「……別にそっちが良いから、あいつと居る訳じゃねえよ。つか、もう想像すんなっつの」

 そんな風に言って話を終えようとすると、颯也が、ぷ、と笑い出した。
 そんな笑い方も、珍しい。


「――――……優月絡むと、お前が、誰か分かんなくなるんだけど、オレ」


 クックッと笑って、そんな事を言ってる。


「それ分かるー。今までの玲央、どこいった?」

「……うるせーよ」

 そこで知り合い達がまとまって現れ、適当に周囲に座りだした。

 隣に女子が座ったりしてきた事もあって、優月の話はそこまでになった。




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