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◇お互いに。

「べた惚れ?」*玲央

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「玲央」

 食堂でもう座ってた甲斐に呼びかけられて、その向かいに鞄を置いた。


「お前今日も1限の時居たって?」

 愉快そうに笑って、甲斐が見上げてくる。

「何で知ってんだ?」
「朝から玲央を見ちゃったって、同じ授業の女の子たちが喜んでたから」

「優月が1限だったから一緒に来ただけ」
「――――……はー……」

 一瞬びっくりした顔をして、甲斐が、またおかしそうに笑った。


「べた惚れっぽいな、お前」
「――――……」

 ……べた惚れ?
 そんな言葉が、オレに使われる日が来るとは思わなかった。


 一瞬否定しようとして――――……何となく口を噤んだ。


「ずっと優月と一緒に居んの?」
「……ずっとって――――……まだ今日で4日目だけど」

「……2日だって、続けて同じ奴と会わなかったじゃん、お前」

 甲斐が呆れたように言ってきて。

「しかも夜の間ずっと一緒に居るって聞いた事ないんだけど。夜の間遊んでて、深夜とか明け方からセフレんち、とかは聞いた事あるけど。お前、マンションに泊まらせる事もなかったじゃん。寝てる間に何かされても嫌とかって」
「――――……それは色々あったからだろ」

「それそれ。色々あったから、お前、信じてなかったんじゃん、そういう相手をさ」
「――――……」

 まあ、信じてなかったというか。
 疑いたくもなかったし、信じてストーカーぽくなられるのももう見たくないし。だから最初から、可能性すら無くしただけで。

「……優月は、信じられるのか?」
「――――……」


 信じられる?
 ――――……まあ。

 信じるも何も、ずっとオレの側に居させてるから、
 変な事する機会もねえし。

 ……まあ、そんだけずっと、そばに居させてるって事か。
 寝る時も抱き締めてしまってるから、オレから離れられるわけがないし。

 でも……優月なら、1人で家に置いといても、心配しないでいられるな。
 変な事する奴じゃない気がする。

「――――……信じてるかもな」

 何となく口から洩れた言葉に、甲斐は、何度か瞬きをして、苦笑い。

「なんかすげー、驚くんですけど。 何? 怖いなお前」
「……話せば分かると思うけど。疑う必要ねーと思う」

「まあ、いい奴そうだけど……でも、お前の付き合ってきた奴だって、別にそんなひどい奴らじゃないじゃん。彼女にしてた頃は確かに束縛とかもひどかったし、めんどくなってたのも分かるけどさ。 結構長いセフレの子達は、イイ子が多くない?」
「――――……」
「お前、外も中もどっちも良くないと、セフレにしねえんだと思ってたし」
「――――……」

 まあ確かに。
 ……そう言われてみると、そうな気もしてくる。
 そこそこ中も外も気に入ってないと、そんな事してない。


 ――――……じゃあなんで、そん中で優月だけ特別……?


「そんなに優月って、 良いの?」
「――――……あ?」

「だから。 優月って、そんなに良いの?」
「――――……つか、お前、それ以上想像したら、ぶん殴る」

「はーーーー??? 何それ、オレら今までこんな会話、死ぬほどしてたじゃんか」
「死ぬほどはしてねえだろ」

「つかお前、今まで?、具合いいのとかオレが聞いたら、なんなら、試してみればくらいの感じだったじゃんか!」

「……は?  優月を試したら、抹殺するからな」


「はあああああ??」

 甲斐がうるさい。
 そこに、嫌そうな顔の颯也と、面白そうな顔の勇紀が一緒に現れた。



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