【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

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◇進展?

「聞きたい事」*優月

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 やっとトイレから出られた。
 落ち着いたし、顔も、泣いてたとは分からないはず。

 玲央の事考えるとまた泣いてしまいそうなので、考えないように努めて、次の授業に向かう。


「あ、優月ー!」

 この声は。 ――――……勇紀だ。
 良かった。泣いたまま外に出なくて。

 オレが泣いてたっぽいとか、万一でも、玲央に伝わっちゃうかもしれなかったと思うと、ほんと良かった、と思う。

「あれ? 優月、元気ない?」
「……え、なんで?」

「いっつも、もっとにこにこーってするから」

 ……勇紀、鋭すぎるよー……。

「ううん。元気だよ」
「そう? ……なあ、優月」
「ん?」

「優月さ。一昨日玲央のマンション行った?」
「……うん」

 素直に答えると。
 やっぱ優月か、とクスッと笑った。


「玲央がさあ、一昨日一緒にマンション行った奴の事が……だから、優月の事だよね。優月が可愛いんだってさ。オレ、玲央が、そんな事言ってんの、初めて聞いた」

「――――……」

「ついでに言うと、朝、1限無いのについてきてあげてんのも、初めて見たし」
「……ん?」

「あ。1限無いのは聞いてなかった? へー……まあ、いいや。昨日は玲央2限からだったんだよ。付き合って1限から来てたらしいけど、まあ、オレ朝から超驚いたかんね。朝イチ、部室に玲央が居て、幻かと思ったもん」
「――――……」

 あはは、と笑ってる勇紀に、返事が出来ない。

「ていうかそもそも、玲央がマンションに人泊めるのも、あんま無いからさ。他人と寝るの嫌って言ってるし」

「――――……」


 なんか。 
 入ってくる情報についていけない……。


「あ。ごめん、4限いくとこだよな。何の授業なの?」
「えーと……ここから2コマ、児童心理」
「ああ、あのめっちゃ人多い授業か。面白いの?」
「うん。一番大きい教室なのに結構埋まってる」
「そかそか。頑張ってー。オレはこれからバンドの練習。今度見に来なよ?」
「……うん、ありがと」

 バイバイ、と勇紀に手を振る。
 とりあえず、教室に向かって歩き出す。


 ――――……昨日玲央、1限無かったのに、付き合ってくれたんだ。
 人が泊まる事もないって。オレ、2日間泊まらせてもらったけど……他人と寝るのやなの? 我慢してた? ……そうも、見えなかった、けど……。

 ……勇紀に、オレの事可愛いとか……話してたんだ。


 なんかもう。玲央……。
 ……聞きたい事、いっぱいある。


 さっきの、好きかって――――……なんて答えてほしかったのかな。
 どういう意味で、聞いたのかな。

 玲央は、もしかして――――……ほんの少し、は、
 オレのこと、好き、でいてくれてる……?

 オレが好きって言ったら、玲央もそう言ってくれたり……。

 ないかな……。
 ……うーん……。


 ……分かんないけど。
 自惚れかもしれないけど。


 玲央のキスとか。触れ方とか。抱き締め方、とか。
 ――――……可愛がって、くれてる、としか、思えない時も、あって……。


 あんな事するの初めてだから、比べられないけど。

 ――――……あんなに気持ちいいのって。
 玲央がずっとめちゃくちゃ、優しいから、だと思うし。


 ……玲央、練習に行くって言ってた。勇紀も言ってたし。
 何時までだろ。その後――――…… 会いたいって言ってみる?

 ……そんな毎日、玲央と会うの、無理かな。

 そんな事を考えている間に、あっという間に、2コマの授業が終わってしまった。


 ――――……また、授業、聞いてないしーー……。

 教授も出て行って、学生たちも出て行く。

 もう駄目だ、オレ。
 ぱた。と机に倒れた。

「優月どーしたの?」

 顔を上げると、周りの友達がオレの側で立ち止まっていた。
 
「あ、大丈夫……。ちょっと疲れただけ。先帰ってていいよ」
「待とうか?」
「ううん。良い。用が出来る、かもしれないし」
「ん、分かった。じゃーな」

 皆に手を振って。出て行くのを見送る。広い教室に、オレだけ取り残された。

 そのまま再び、ぽて、と倒れる。


 ――――…… 玲央に会いたい、けど。
 バンドの練習って、長いのかな。
 そのあと、ご飯食べに行ったりしそうだよね……。
 
 ……無理、かな。
 ――――……オレもしかして、次に玲央に会えるまで、
 ずっとこんなだったりして。



 ――――……もう会ってくれなかったりして。

 ……どうしよ、やっぱり、ものすごく嫌だ。会いたい。


 思った瞬間、だった。




「……お前、何、してンの……?」


 ――――……え。
 ……この、声。


 顔を上げたら。
 隣に立っていたのは、玲央、で。


 何だか少し決まりが悪そうな顔で立ってる玲央を。
 何も言えず、見上げるしかなかった。






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