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◇気持ち

「好きなのに」*優月

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 毎日会うのが嫌かと、聞かれた。
 嫌じゃないって、答えた。

 そしたら。普通、セフレって、そんなに会わないって、言われた。


 え、どういう意味だろ?

 ……セフレなんだから、毎日会うのは変って……言いたい?
 確かに、月曜から3日間、玲央と会ってる。……会いすぎって事……?

 戸惑ってる間に、また次の質問が来て。

 オレの事、好き?と聞かれた。


 え。
 ――――……もう。

 パニック。



 セフレはそんなに会わないって言われた後で。
 好きかって。

 ――――……本気になったら終わりって、玲央、言ってるのに……。


 え、どういう意味?
 なんて、答えれば、いいんだろ。

 好きって。
 ――――…… 好きって、言ったら、終わるの?

 セフレはそんなに会わない。
 セフレは本気にならない。

 ――――……。

 え、なのに――――……何で、わざわざ好きって、聞くの?



 だから、嫌いじゃないって、言った。
 でも、精一杯の意味を込めて、一緒に居たい、とも言った。

 でもなんか――――……。
 何回か、嫌いじゃないって何?って、聞かれて。

 ――――……もう、何て答えるのが良いのか、全然分かんなくて。
 ひたすら嫌いじゃないって言葉を選んでたら。


 抱き締めてくれてた手が、ふ、と離れた。
 仕方なく、自分も離して。
 

 そしたら、玲央、もう行くって……。
 でも一緒に出るかっては……言ってくれたんだけど――――……。


 思わず、退いてしまった。


 
 玲央が、トイレ、出て行く気配がして。
 ――――……でも、出れなくて。

 壁に背をついて、俯く。




 ――――……怒った? のかな?

 ……何に?




 好きって。
 ――――……言いたかった、けど。



 だって、本気になったら終わりって……。




 ――――……全然、分かんない。



 じわ、と、涙が滲んできた。




 うわー……。
 ……オレ、こんなことで、泣くの……?

 ……嘘だろ…………。




 昔よく、泣いてたな……。
 ――――……泣かなく、なったのになぁ……。

 さっき、見てしまった、玲央の背中が――――……。
 瞼の奥で、消えない。



 ――――……つい、さっき。

 可愛くてたまんないって、言ってくれてたのに。




 ――――……って、どういう事?

 可愛くてたまんないって、言ってくれてたなら……。
 好きって、言っても、良かったのかな……?


 …………でも……。 
 ――――……だめだ。


 難しくて、全然分かんない。





 ……やっぱりオレ……。
 ――――……セフレなんて、荷が重いのかな。

 よく、分かんない。



 ――――……好きなのに。
 好きって言っちゃいけないとか。


 なのに、好きかって、聞かれちゃうとか。


 ――――……まるで謎かけみたいで。
 なんて答えるのが正解なのか――――……。
 
 オレに分かる訳、無いじゃん。




 …………玲央のバカ。


 なんて思いながら。
 切なくて、拭っても、涙が滲む。



 さっきまで、あんなに触れてくれてたのに。
 ――――……もう、触れて、くれないのかな。


 オレを――――……見つめて、くれないのかな。




 そんなの、本当に、やなんだ、けど。
 


 なかなか涙が引かなくて。

 外で誰に会っても絶対バレないように、元通りの顔になるまで、かなりの時間をトイレで費やしてしまった。






 
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