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◇気持ち

「最悪」*玲央

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 結構な時間が経過した。
 3人はテーブルの方で話してて、オレはソファ。完全に横になってふて寝状態。

 昨日寝不足なのに、ちっとも眠れない。
 イライラしすぎて血が巡りすぎてんのかな……。


 ――――……けれどようやく、時間とともに、少し落ち着いてきた。

 落ち着くとともに、後悔ぽいものがすでに浮かんできてる。


 可愛くてたまんねえのに。
 あんな感じで手を離して、置き去りにしてくるなんて……。

 ――――……何してんだオレ……。 

 ……優月は、オレを好きなんだと思ってた。

 ――――……向けてくる言葉や、表情や、触れてる時の反応とか。
 全部、オレを好きだから、ああなんだと、思ってた。

 全部の行為、初めてて、
 男同士なんて、今まできっと考えた事もなくて。

 それでも、オレの腕の中に来てくれるのは、
 オレの事を好きだから なんだと、勝手に思い込んでた。

 だから、当然、好きだと言ってくれると思って、聞いた。


 ――――……嫌いじゃない、と何回も言われて。
 何でか、視線を逸らす優月に。

 …………あんなに、ムカつくなんて。


 ――――……バカか、オレ。


 もともと、恋人と聞いた時、優月は、男同士だから無理、って言ってた。
 だから、オレは、じゃあ言う通りセフレって事にしようって、返して……。

 だから――――……。

 ……もともと優月はオレの事、特別に好きなんかじゃないと、そこで思ったのに。


 そこで、ふっと、考えが止まる。

 
 ――――……好きじゃなくて、優月が、あんなことに付き合うか?


 ……あいつ、オレのこと、好き、だよな?
 じゃあなんで、好きって言わないんだ?

 ……つか、そもそも、オレは、好きって言われたら、何て言うつもりだったんだ。もしあの時、優月がオレを、好きって、言ったら――――……。

 恋人――――…は抵抗がありすぎて、正直、無理。
 ていうか、そもそも、優月が、男同士だから恋人は無理って言ってた。

 恋人は無理だけど……。
 でも、優月を、セフレと呼ぶのが、とにかく、嫌で……。

 ――――……ああ、分かんねえ。

 ほんとなら、別にこんな関係の呼び名なんて、どうでもいいのに。
 何をこだわってんのかも、自分でもよく分かんねえ。



「――――……」

 
 ソファから起き上がると、甲斐が気づいた。

「……起きたか? 玲央」
「――――……寝てねーし」

「あ、起きてたんだ?」
 クスクス笑ってる勇紀。


「――――……なあ」

 一声、出すと。
 3人が一気にオレを見た。



「……嫌いじゃないって、どーいう意味?」


 言いながら、3人を順番に見る。


 ぽかーーーーん。
 という表現がぴったりな、間抜けすぎる顔を、3人が数秒間していて。




「やっぱ、なんでもない」
 

 聞かなきゃよかったと、視線を逸らして、髪を掻き上げると。




「何々その面白い質問!!」

 勇紀が走ってきて、ぴょーん、とオレの居るソファに乗っかってきた。

「……ウザイ、降りろよ」
「何だよ、ちゃんと言えよ。……つか、嘘みたい、玲央がちょっと可愛いし」

「……マジでウザイ」

 勇紀ほどではないまでも、甲斐と颯也も、面白そうにオレを見てる。

「嫌いじゃないって言われちゃったんだ? それ、優月に??」

 勇紀の言葉に、イラッとする。

「――――……だからそれ、どーいう意味だよ」
「えーーー……?」

 うーん、と首を傾げてる勇紀。
 颯也が、テーブルの方から、「……なあ」と声をかけてくる。


「……その、優月と、お前ってさ、結局セフレんなったの? 昨日は、セフレにしてッて言われたって言ってたよな?」
「――――……結局、なるって話した」

 答えると。


「つか、セフレに、好きだとか言われんの、嫌がってるの、お前じゃん」

 甲斐が、そう言って、「逆によく分かんねえんだけど…」と言ってくる。


「オレはさあ、セフレって言っても、割と好きな子たちしかしねえから、好きとか言われても全然イケるけどさ。お前は、セフレの好きとかは無理って言ってるし、本気になったら終わりって。自分が言ってんじゃん?」

「――――……」


 ああ。それは言ってる。
 ――――……でも……。

 ………だから結局、オレの中で、「優月」イコール「セフレ」じゃないから。今甲斐が言った話は、優月には、当てはまらねえんだけど……。


 好きだと言われるのが、面倒なんて。
 ――――……優月に対しては、思わないし。


 …………ん? でも、優月とは、セフレんなるって、話で終わってるから。
 だから……。

 ――――……。



「お前、本気で好きになったら終わりって、セフレに言ってんだろ?優月にも言ったんじゃねえの?」


 甲斐の一言に。
 思考が止まる。


 ……本気になったら終わり、恋人できても終わり。

 ……優月にも言った。 我ながら、かなり、投げやりに。正直、投げやりに言いすぎて、言った事も今思い出した。そういや、言った。


 ――――……つか。
 

 …好き、と言わなかった理由って。



「じゃあ玲央、優月にもそれ言ってるのに、好きか聞いたって事?」


 自分が今考えていた事を、勇紀にかわりに言われる。


「……えーそれで嫌いじゃないって言ったなら、すげえ可哀想…。ていうか、それで玲央、こんな怒ったの?」


 直接、怒っては……ねえけど。


 優月の手は――――……離した。



 ……ほんとにそういうことなら。
 ――――……最悪。

 


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