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◇気持ち

「ときめくって」*優月

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 朝、学校に着いて、玲央と別れる時。
 ――――……まだ一緒に居たくて。離れたくないなと思ってしまった。

 バカみたいだな、夜からずっと、一緒に居てくれたのに。
 そう思ったから、別れを告げて、振り返らずにダッシュで玲央から離れた。
 教室に着くと、仲の良い友達たちが手を振ってくる。

「優月ーおはよー」

 近くに座った瞬間。

「……なんか、雰囲気違うな、優月」
「あ、オレも思った」

 2人に言われて、更に周りの皆もそういえばと、同意の顔。

「……ん?そう?」

 皆の顔を見てると、皆も、何が違うんだろと、オレを眺めてくる。

「……服かなあ?」
「んー。確かに、服、ちょっと違うよな」

「え。……似合わない?」

「ううん、良い感じ」
「似合うよ」

「髪もちょっといじった?」
「あー……うん」

「どっちも良い感じだな」

 皆もそう言ってくれる。

 玲央が選んでくれた服。
 玲央の好みじゃないと思う。派手じゃないし、目立つ感じでもないし。オレに似合いそうなのを選んでくれたんだと、思う。
 シンプルだけど、着心地良くて。それだけでも幸せなんだけど。

 髪型も。玲央がドライヤーを掛けてくれて、そのまま、「ちょっとだけいじっていい?」と聞いてから、セットしてくれた。
 それが似合うって言われて、めちゃくちゃ嬉しくて。

「ありがと。嬉しいな」

 微笑んでしまうと。
 なんだか皆が急に、ニヤつきだした。

「……ん?なに?」

「優月、彼女出来た?」
「え……なんで?」

「なんか幸せそうな顔してさ」
「え。そう……?? でも別に彼女じゃないよ?」

 ……好きな人は。
 ……できたけど。

 そういうのって、バレるのかな?
 ……え、オレ、幸せそうって、どんな顔してんの??

 関係がセフレとか言ったら、皆に反対されそうなので、言わないけど。

 授業が始まって、皆、前を向く。
 オレも、授業に向かうけれど。

 ……なんか。
 …………浮かれすぎないようにしないと。

 気を引き締めようと思うのだけれど。
 ………無理かも。




 ……なんかオレ。
 ……毎日毎日、どんどん、玲央の事、好きになってくんだけど。

 ……………どうしよう。


 昨日の夜、覚えてない位、やばい位、気持ちよくさせられて。
 させられてばかりで、いいのかって、ほんとに思ってしまうんだけど。

 玲央は、朝目が合ったら、ほっとしたみたいな顔して、謝ってきた。
 ほっとしてるのって、なんだろうって、頭、掠めたけど――――……オレが怒ってると思ったのかなあと、後からふと思った。

 そもそも実際、普通の行為っていうのがよく分かんないし、男同士だから、余計に分からないけど――――……玲央は、ただひたすら優しいし、自分のこと後回しで、触れてくれてる……気がするし。オレが怒る訳ないんだけどな。


 ずっとずっと、あんなに、誰にでも、優しいのかなあ。

 オレだけに優しいとかそんなうぬぼれてる訳じゃないんだけど。
 会う人皆に、あんなに優しすぎると――――……。

 皆が、玲央に本気になっちゃうと思うんだけど。

 それで本気になったら終わりとか言ってたら、
 ……全員すぐ、終わっちゃうんじゃないのかな。

 あ、でも、すぐ新しい人が出来そう。
 ……そうやって、入れ替わってるのかな???


 ……って、オレは一体何を考えてるんだろ。


 うーん、と眉が寄ってしまう。
 オレ、金曜日に玲央に会ってから。

 ……授業、ほんとにヤバいな……。


 玲央の事考えてないで、ちゃんとしよ……。
 
 そう思うんだけど、はっと気づくと、浮かんでる玲央の顔。


 ……だめだなー……。これ……。


 ――――……こんなに、誰かの事が、
 ずっと頭にあるとか。


 生まれて初めてすぎて、どうしたらいいのか、分からない。



 オレ、今までも、好きな子は居た、と思ってたんだけど。
 ――――……なんでこんなに、全然違うんだろう。



 玲央を思うこの気持ちが、好きってものなら、
 今までのは、何だったんだろ……。 




 ていうか。
 ……玲央て……。

 男、なのにな。


 性別のことも――――……すっとばして、
 女の子、好きだったはずの時より、
 好きすぎて、頭から離れないって、自分でも、不思議すぎる。


 ――――……でもなんか。
 ……玲央のこと 思い出すと。


 鼓動が、少し、早くなる。
 心臓を、ぎゅ、と掴まれたみたいな感覚。



 ときめくって、こんな感じなのかな、と、
 身をもって、知る感じ。


 



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