69 / 825
◇気持ち
「ときめくって」*優月
しおりを挟む朝、学校に着いて、玲央と別れる時。
――――……まだ一緒に居たくて。離れたくないなと思ってしまった。
バカみたいだな、夜からずっと、一緒に居てくれたのに。
そう思ったから、別れを告げて、振り返らずにダッシュで玲央から離れた。
教室に着くと、仲の良い友達たちが手を振ってくる。
「優月ーおはよー」
近くに座った瞬間。
「……なんか、雰囲気違うな、優月」
「あ、オレも思った」
2人に言われて、更に周りの皆もそういえばと、同意の顔。
「……ん?そう?」
皆の顔を見てると、皆も、何が違うんだろと、オレを眺めてくる。
「……服かなあ?」
「んー。確かに、服、ちょっと違うよな」
「え。……似合わない?」
「ううん、良い感じ」
「似合うよ」
「髪もちょっといじった?」
「あー……うん」
「どっちも良い感じだな」
皆もそう言ってくれる。
玲央が選んでくれた服。
玲央の好みじゃないと思う。派手じゃないし、目立つ感じでもないし。オレに似合いそうなのを選んでくれたんだと、思う。
シンプルだけど、着心地良くて。それだけでも幸せなんだけど。
髪型も。玲央がドライヤーを掛けてくれて、そのまま、「ちょっとだけいじっていい?」と聞いてから、セットしてくれた。
それが似合うって言われて、めちゃくちゃ嬉しくて。
「ありがと。嬉しいな」
微笑んでしまうと。
なんだか皆が急に、ニヤつきだした。
「……ん?なに?」
「優月、彼女出来た?」
「え……なんで?」
「なんか幸せそうな顔してさ」
「え。そう……?? でも別に彼女じゃないよ?」
……好きな人は。
……できたけど。
そういうのって、バレるのかな?
……え、オレ、幸せそうって、どんな顔してんの??
関係がセフレとか言ったら、皆に反対されそうなので、言わないけど。
授業が始まって、皆、前を向く。
オレも、授業に向かうけれど。
……なんか。
…………浮かれすぎないようにしないと。
気を引き締めようと思うのだけれど。
………無理かも。
……なんかオレ。
……毎日毎日、どんどん、玲央の事、好きになってくんだけど。
……………どうしよう。
昨日の夜、覚えてない位、やばい位、気持ちよくさせられて。
させられてばかりで、いいのかって、ほんとに思ってしまうんだけど。
玲央は、朝目が合ったら、ほっとしたみたいな顔して、謝ってきた。
ほっとしてるのって、なんだろうって、頭、掠めたけど――――……オレが怒ってると思ったのかなあと、後からふと思った。
そもそも実際、普通の行為っていうのがよく分かんないし、男同士だから、余計に分からないけど――――……玲央は、ただひたすら優しいし、自分のこと後回しで、触れてくれてる……気がするし。オレが怒る訳ないんだけどな。
ずっとずっと、あんなに、誰にでも、優しいのかなあ。
オレだけに優しいとかそんなうぬぼれてる訳じゃないんだけど。
会う人皆に、あんなに優しすぎると――――……。
皆が、玲央に本気になっちゃうと思うんだけど。
それで本気になったら終わりとか言ってたら、
……全員すぐ、終わっちゃうんじゃないのかな。
あ、でも、すぐ新しい人が出来そう。
……そうやって、入れ替わってるのかな???
……って、オレは一体何を考えてるんだろ。
うーん、と眉が寄ってしまう。
オレ、金曜日に玲央に会ってから。
……授業、ほんとにヤバいな……。
玲央の事考えてないで、ちゃんとしよ……。
そう思うんだけど、はっと気づくと、浮かんでる玲央の顔。
……だめだなー……。これ……。
――――……こんなに、誰かの事が、
ずっと頭にあるとか。
生まれて初めてすぎて、どうしたらいいのか、分からない。
オレ、今までも、好きな子は居た、と思ってたんだけど。
――――……なんでこんなに、全然違うんだろう。
玲央を思うこの気持ちが、好きってものなら、
今までのは、何だったんだろ……。
ていうか。
……玲央て……。
男、なのにな。
性別のことも――――……すっとばして、
女の子、好きだったはずの時より、
好きすぎて、頭から離れないって、自分でも、不思議すぎる。
――――……でもなんか。
……玲央のこと 思い出すと。
鼓動が、少し、早くなる。
心臓を、ぎゅ、と掴まれたみたいな感覚。
ときめくって、こんな感じなのかな、と、
身をもって、知る感じ。
281
お気に入りに追加
5,207
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる