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◇気持ち
「最悪」*玲央
しおりを挟む「悪い、待たせた」
「ううん」
にっこり笑った由香の腕が、するっと絡んで、並んで歩き出す。
別に誰かと腕組んで歩くのも、普通の事で。気にもならない。
裏の駐車場側。優月と会った場所に近付いてくのにつれて。
あー……ここ、優月がいるかも。
そう思って。
そしたら、なぜか急に気になって。何となく、腕を離させた。
「玲央?」
「悪い。少し、離してて」
「?……うん」
……何でこんな事、気にしてんだオレ。
今更、腕なんか組んでたって何も関係ないのに。
でも何となく。
密着してた由香と、少しだけ離れる。
その場所を通り過ぎながら、茂みを覗くけれど、優月は居なかった。
――――……そんな、毎日居る訳じゃないのか。
何でだか、すこし、ほっとして。
「……玲央?」
「――――……あぁ、なんでもない」
言ったオレの腕に、細い腕がまた絡んでくる。
今度は外させずに、ま、いつもの事だし。と思ってそのまま歩いて、カフェのそばまで来て。
……このコンビニ こないだエサ買った――――……。
一瞬優月が浮かんだけれど、さっき居なかったのもあって、そんな会う訳ないか、と思いながら、コンビニを通り過ぎる。
自動ドアが開いた気配がして。
何となくオレが、そちらに視線を向けた瞬間。
「――――……」
優月が出てきた所、だった。
完全に由香の腕が絡んだままで。
優月と、完全に目が合って。
最悪――――……。
思わず、そんな風に思ってしまった。
瞬間。ふ、と優月が瞳だけで微笑んで。
オレには話しかけず、学校の方に歩いて行った。
振り返りもしないで。
「――――……」
――――……分かってる。
女と一緒だから。
気を使ったんだって事は。
束縛も干渉もしないって。
約束、したし。
優月と居ない時のオレが、何をしてても気にしないと、優月は言ってたし。
むしろ気まずいと、オレが思うのが……おかしいし。
「玲央? 入っていい?」
いつの間にかカフェの前にたどり着いてた。
「……ああ」
ドアを開けてやって、由香が中に入る間に、優月が歩いて行った方を見るけれど、もう、姿はない。
思ったより空いてて、すぐ座れた。
由香の話に答えながら、なるべく普通に過ごす。
由香には関係ない話だし、なるべく平静を装うけれど。
――――…内心のイライラが消えなくて、自分でも驚く。
つーか……。
――――……何、平気な顔して笑ってンの。
……ほんとに全然いいのか?
なんか……すげえイライラする。
オレがイライラする立場じゃないってのは分かっているのだけれど。
――――……嫌な思い、するとしたら、優月の方だと、思うのだけれど。
でも、優月は、普通に、一瞬の嫌な顔も見せずに、普通に微笑んだ。
……くそ。
――――……何でこんなにイライラするんだ。
「――――……なあ、由香」
「ん? なあに?」
「……今日やっぱり、無理だと思う」
「えー……ほんとに遅くてもいいよ?」
「無理。悪いな」
「……分かったけど。でも今日も、遅くなってもいいから、大丈夫だったら連絡して?」
「……ん」
頷いた時、ちょうど食事が運ばれてきた。
由香の気がそれて、その話は終わった。
オレは、ふ、と小さくため息をついた。
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