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◇2人の関係

「恋人」*玲央

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 優月の顔を見つめたままいつのまにか眠りについて。
 もぞもぞ小さく動く気配に目が覚めると。優月がオレに背を向けた所だった。

 変わらず腕の中には居るけれど。
 何となく背を向けられた事が少し不満で、後ろから抱き締めた。


「何で、背中向けたんだよ?」

 聞くと、決まりが悪そうに、「え。何となく……?」と答える。

 その顔から、真正面から抱かれてるのが恥ずかしいとか。そんなとこかな、と思うと。可愛く思えて。


「ふーん?」
 と、わざと耳元に口を寄せると。くすぐったがって、肩を竦める。

 ついさっきまで触ってたのに。
 もっと、声を聞きたくなって。触り心地の良い肌に触れたくなって。
 胸を撫でてると、焦った優月が振り返ろうとしてくる。

 触れたい衝動が止まらなくなって、そのまま乳首を刺激した。

「っ……れお?」
「……ここ、気持ちよくなってきた?……」
「……や……」


 胸と首筋に触れてるだけで、簡単に息が上がって、顎が反る。

 あー……ほんと、感度、良い。


「……ん、ン……っ」


 首を振りながら、手を押さえて、止めようとしてくる。


「……や……」
「――――……嫌か?」

「……すぐ――――……」
「すぐ、なに?」

「……ぞくぞく、しちゃうから……っ」
「して良いよ」

 ――――……逆効果なの、分からないんだろうか。
 そんな事を言われて、ここでやめる男が居ると、思うのかな。

 優月の首筋に舌を這わせながら、早くも反応してるそれを刺激する。びくん、と震えながら。

 自分ばっかり気持ちよくて嫌、みたいなこと言いだした。
 最後までしていいのに、と。

 つーか。お前気持ちよくするのが楽しいって思ってんのに。
 ……自分ばっかりじゃやだとか……ほんと。可愛いな。

 納得させてから、優月をイかせて。優月が落ち着いた時に。
 さっき、考えていたのを、聞いてみる事にした。


「セフレって、意味分かってる?」

 そう聞いたら。優月は、しばし固まってしまった。


「うん、意味わかってる、と思う……どうして?」


 ……ほんとに、分かってんのかよ。
 優月の頬に触れる。


「セフレって何?」
「何って……セックス……する関係?」

「――――……」

 ……そのまんま、だな。
 …………分かって言ってんのか?

 優月との間に、セフレなんて言葉は入れる気はなかった。

 今居る、お互い納得済みのセフレとは違う気がして。
 相手も経験多くて、お互い干渉せずのセフレと、優月を一緒にするつもりは、無かったのに。
 
 ……なのに、セフレになりたいと言いやがって。
 ……ほんとに、意味わかってんのか。と。思ってしまう。

 セックスするだけの、セックスでつながっただけの、関係だぞ。
 お前は、オレとセックスだけ、してればいいって事かよ。


「……お前、ほんとにオレのセフレになりたいの?」
「……だって、玲央と会いたいし……」

「――――……オレ、セフレ、他にもいるけど……」
「それは、最初から知ってるよ……?」

「――――……嫌では、ねえの?」
「――――……」

 オレが他のセフレと会うの、嫌じゃないのかよ?

「……セフレとか――――……優月の柄じゃねえなと思うんだけど」
「――――……」

 黙ってしまった優月に、続けて、そう聞いた。


「玲央じゃなかったら……そんな事言わなかったと思うけど……」
「――――……」


「……だって、もともと……玲央がそういうの、自由なの知ってて、オレ、玲央の所に来たし――――……」
「――――……」


 ……そもそも知ってて来たから、大丈夫、て事か?
 割り切ってる、て事か。

「……玲央、何が聞きたいの?」

 ………何が聞きたい?
 そんなの一つだ。


 優月が、セフレなんてものに、本当になりたいのかって、事。


「――――……セフレなんて、そんな関係……優月はいいのか?」


 そう聞いたら、長い、沈黙。
 その後。


「……セフレでいいのって――――……セフレがやだって言ったら、どうするの?」


 聞かれた言葉に、核心をつかれて、今度は玲央が沈黙してしまう。

 セフレが嫌だって、優月が言ったら。
 普通に恋人になりたい、と言われたら。

 ――――……。

 優月が恋人……。
 ……なら、大丈夫、だろうか。

 過去の色々が脳裏に浮かんで、結論を躊躇う。


「うそ。やだなんて、思ってないよ」
「――――…」

 少し黙ってしまったら、ぱっと表情を変えて、優月が明るく、言った。


「オレ、玲央と会いたいし。……玲央とキスするのも、触ってくれるのも、好き。だから玲央が良いなら、今のまま――――……会ってくれる時に会えたら……嬉しいんだけど」
「――――……」

「オレと会ってない時に、玲央が誰と会ってても、気にしないし」

「……オレが他のセフレと会っても、お前は、いいのか?」
「うん」

「……嫌じゃねえの?」
「……? だって…… もともと知ってて、オレ、玲央と会ったし……」

 優月は、何でもない事のように、そう言う。


「オレと付き合う、とかは……考えねえの?」
「……付き合うって?」


「恋人とか――――……思わねえの?」


 久しぶりに、人に、「恋人」という単語を出した。
 自分でも。まだ相応の覚悟が出来たとはいえない状態だったけれど。

 でも。少しでも――――……久しぶりに、そうなる可能性を。
 少しだけでも、考えて。


 そう聞いたら。



「思わないよ」

 さっきからずっと、考えながらのゆっくりな返答だったのに。
 この質問に対してだけ、ものすごい、即答。
 何だか何も言えずにいると。

「だって、オレ、男だし――――……玲央の恋人なんて……無理」


 その言葉に、ふ、と思考が止まる。


 ――――……男だから。
 ……恋人は、無理、か。優月的に、無い、てことか。


 ――――……確かに。
 ……オレも、男の恋人は、今まで作った事、ねえな。


「――――……分かった」



 今の言葉で、とりあえず、決めた。


「セフレが、良いんだよな? お互い束縛なし、干渉しない。会った時に、楽しむ。で、良いんだな?」
「うん」

「――――……会いたくなったら連絡入れる。お互い都合があえば、会う」
「うん。他には……?」

「……本気になったら終わり。どっちかに恋人ができた時も」
「……ん、分かった」


 何だか――――……言ってる内に、嫌になってきた。
 優月が、普通に、うんうん頷いていくのが、また更にムカつくし。


「――――……いっこ聞きたいんだけど」
「……うん?」

「……オレが、お前以外の奴、抱くの、ほんとに嫌じゃねえの?」
「――――……」


 ――――…完全に割り切って、考えられんの?

 優月は、じっとオレを見つめながら、しばらく考えていて
 その内、うん、と、頷いた。 


「…………」

 ……なんか――――……すげえ、苛つく。


「……優月」
「――――……?」

 
 引き寄せて、唇を重ねて、抱き込む。
 少しも後ろに退けない位に抱きしめて、舌を絡める。


「……ん?……ん、ぅっ……」

 少し藻掻く優月。

 離す気は、無い。

「……ッン……ぅ、ん……っ」

 本気で、キスする。
 舌を絡めて、口内を嬲って、呼吸を奪う。


「……っ……ふ……は……っ……」

「――――……めちゃくちゃ……気持ちよく、してやるよ」



 セックスがつなぐというなら――――……。
 もう無理って、なるくらい。


 ――――……気持ちよく。してやる。


  
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