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◇2人の関係
「会いたい気が」*玲央
しおりを挟む今日の授業が終了。
結局、誰の誘いにも乗ってない。
……どーすっかな……。
教授が出て行き、オレがスマホを持ったまま座っていると、周りに居た男連中も先に帰って行った。
だんだん静かになっていく室内。
「――――……」
今頃、絵、描いてるのか――――……。
何描いてんのかな。人? もの? 風景?
――――……ヌードとか? ……てか、あいつ、描けるのかな……。
赤面しながら描いてそうで、そんな想像をしてる自分に苦笑い。
どっちにしても、まだまだ連絡は無いだろうし。
「玲央、どーしたの?」
一旦誰も居なくなってた教室に、近づいてくる声にそちらを見る。
セフレの一人。久美だった。また今日も胸を強調した服、着てるな……。
「暇なの?」
「……んー……まあ、今はな」
「じゃあ、ご飯食べにいかない?」
「――――……いいけど」
「えっ」
「……何?」
久美の驚いたような顔を見上げて聞くと。
「ほんとにいいの?」
「どういう意味だよ?」
「だってこんな風に玲央がつかまる事なんて珍しいから。ご飯も珍しいし」
嬉しそうに笑って。
ふと、影が出来て、キスが重なった。
「ご飯の後も空いてるよ?」
ふふ、と笑う久美。
――――……別に今更キスなんて、何でもない。
その後も、別に――――……久美とするんでも、良い。
「――――……とりあえず飯いくか」
「うんっ」
立ち上がると、細い腕が、腕に絡んでくる。
柔らかい。 ――――……背もだいぶ低い。
香水の匂い。服もアクセサリーも、オシャレに着飾ってて、可愛い。
基本、女の方が好きなんだと思う。
――――……男はほんと数人。何回も続いてるのは、奏人位かな……。
「ね、玲央、掲示板の前通っていっていい?」
「ああ」
言われて、正門を通らず、4号館前の掲示板へと足を向ける。
「あ。玲央」
掲示板で明日の予定を見ていたら、そこで、今思い出したばかりの、白石奏人に遭遇。
「玲央、今週どっかで会える?」
腕を組んでる久美を気にする事もなく、そう聞いてくる。
逆に久美も、気にしてない――――……ようには、見える。
「あー……保留でいいか? 週末ライブだから、練習もあるし」
「あ、土曜、見に行くよ。チケット手に入ったから」
「じゃあそん時な」
「ん、じゃあね、玲央」
奏人は頷いて、離れていった。
「……奏人くんて、綺麗だよねー」
久美がその後ろ姿を見ながら、そんな風に言ってる。
……まあ。男にしては、綺麗だな。派手な顔してて目立つし。
――――……と、そこで優月がふと、浮かんでくる。
……目立たねえよな。優月は。
たぶん、知り合ってなかったら、余裕で素通りするし。
存在すら認識しない感じ――――……。
「……玲央?」
「ん?」
「なんか、笑ってるから。どうしたの?」
クスクス笑われて、久美を見つめ返す。
「……笑ってないだろ、オレ?」
「んーん、なんか、笑顔だったよ? 優しくてイイ感じ」
ぎゅ、と腕に絡みついてくる。
――――……何か腑に落ちない。
優月を、目立たないなーなんて思ってて。何でオレ、笑ってんだ。
笑ってた? 思い出して?
少し腑に落ちないまま。
久美と食事をして、時間を見ると、もう20時を回っていた。
電話はかかってきていない。
夕方から行って、まだ終わんねえのか。
――――……絵の習い事って、そんな時間掛かるものなのかな。知らないから、何とも言えない。
「玲央、この後、どうする? 玲央のマンション行ってもいい?」
「――――……」
別に、優月が来ると約束はしてない。電話しろと言っただけ。
だから、久美をあのマンションに連れて帰って、一緒に過ごしても別に何の問題もない。
――――……ない、のだけれど。
「……今日この後、用事が入るかも。悪いな」
「えーそうなの? 残念……」
店の下で久美と別れて。
スマホを見ても、連絡はなし。
――――……遅くてもいい、とは言ったけど……。
ほんと、遅いんだな……。
……忘れてる、とか?
……それは無いかな。
掛けてみるか。
――――……出れないなら後で折り返してくるだろうし。
いやでも、連絡してと言っといて、自分から連絡するっていうのも……まるで待てないみたいな……。
しばしの葛藤の末。
「――――……」
――――……やっぱり、優月に会いたい気がする。
優月の番号に、発信した。
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