【恋なんかじゃない】~恋をしらなかった超モテの攻めくんが、受けくんを溺愛して可愛がるお話。

悠里

文字の大きさ
上 下
3 / 838
◇出逢い

「初kissと」*優月

しおりを挟む


 最初は、何が起きているのか、さっぱり分からなくて。
 オレは、至近距離の整った顔を、ただ見つめていた。

 ふ、と唇が、離れて。
 呆然としたまま、数秒間、綺麗な瞳と見つめ合ってしまう。

「――――……なに……?」
「なにって……キス」

 その答えを聞いた瞬間。かあっと、顔に血が上った。
 あんまりびっくりしすぎて、返事が出来ない。

 だって。

 オレ、キス――――……初めて、だったのに。
 いきなり。数分前に現れた人に、ファーストキスを奪われた、なんて。

 ただただ謎すぎる、目の前の整った顔を見つめていると、また顔が近付いてきて。指で、唇に触れられた。

 ぞく、と背筋がざわついて、自分でも驚く。

「――――……口、少し開けれる?」
「……っ」

 触れそうな位近くで、囁かれて。
 ――――……なぜなのか、オレはつい、唇を薄く開けてしまった。

 すると、ふ、と笑んだ唇が重なって、少しして、舌が入ってきた。

 その未知の感触に、ぎゅ、と目をつむる。

 オレ――――……なに、してんだろ……。
 突き飛ばせば、いいだけ、なのに。


「……っふ……」
「――――……」


「……っ……」
「――――……抵抗、しねえの?」

 唇が離れたかと思ったら、そう囁かれて、見つめられて。
 動けずにいたら、また唇が重なってきて、さっきよりも遠慮なく入ってきた舌に、舌を絡め取られた。


「……っん……」

 ……舌って、こんな、熱いんだ……。
 なんだか、熱くて、すごく動いて。……舌じゃなくて、別の生き物みたい。

 激しすぎて。
 ――――……振りほどけない。


 口内を好きに舐められて、感覚全部が甘く、蕩けていく。 
 頭の中が、真っ白。


「……っん……っ……ふ、っ……」


 酸素を求めて少し顔を背けた。
 少し離れた唇に、すぐにまた、舌が捻じ込まれた。


「――――……ん、んん……っ」


 何。
 ――――……何、これ。


「…………ふ……っ……」


 息が、できなくて。
 自然と瞳に涙が滲む。

 頑張って瞼を開いて、瞳の伏せられた目の前の顔を、見つめて。
 また、ぎゅ、とつむる。


 しばらくして、ゆっくりと、唇を離された。
 やっと息ができて、目の前の整った顔を、ぼんやりと、見上げる。


 じ、と見つめあって。そしたら、彼は、少し眉を寄せた。
 なんか戸惑ってるみたいな顔で。


「……悪い――――……なんかあんまり無邪気に猫と戯れてるから」
「……え?」

 ……クロと、戯れてるから……?
 今何を言われてるのか、頭がぼんやりしすぎて、よく分からない。


「……感じたらどーなんのかなって、すっげえ、興味が湧いて……」


 ……クロと無邪気??……無邪気に、戯れてるから?
 …………感じたら……? 興味……?

 意味の分からない言葉を、平気で色々並べて。
 呆然としてる、オレに向けて。

「……そんな顔、すんだな……」

 超イイ声でそう言って。
 ふ、と笑って、頬に触れてきた。




「なあ――――……オレと寝てみない?」


 ほんとに、頭が、真っ白になる。


 ――――……なんか……
 怒っても、いいとこだと、思うんだけど。


 なんでなのか、もう。
 全然、分からないけれど。




 ――――……すごい、ドキドキする。


 この状況でドキドキするのって――――…… 
 絶対おかしいぞ、オレ。




 まっすぐ見つめてくる、瞳を、ただ、見上げる。





「正直、好みのタイプじゃねえんだけど……」
「……っ」

「そんな顔されると……すげえ興味ある」

 クスっと笑って、頬に触れられる。

 好みじゃないなら、しないでよ……。
 興味って。……興味って……っ。

 ……ていうか、好みじゃないって、ちょっと傷つくし……。

 と、冷静な自分は、頭の隅っこの方でその言葉に反応してるんだけれど、なぜなのか何も言葉に出てこない。

 心臓が、ドキドキしすぎて、
 その瞳を見上げるしか、できない。

 そしたら、ふ、と笑う、形の良い唇。

 ――――……この唇が、オレの、口に……
 意識した瞬間、かあっと、顔に血が集まるのを感じる。 

 ……っていうか。
 オレは本来、こんないきなりなキスに、怒るとこじゃないのかな?

 ファーストキス、だったんだよ?
 いいのかオレ、こんなとこで、こんな意味分からなく、奪われて。


 ――――…………



 ――――……だめだ。オレ、おかしい。


 ……いいかも、と、思ってしまった。


「……何で、お前、何も言わねえの?」
「――――……びっくり、して」

 声が、掠れてしまう。
 そしたら、ふ、と彼の瞳が緩んだ。

 ドキ、と、また心臓が、音を立てる。
 自然と、胸を手で押さえてしまう。


「……っ」

 目の前に居るだけで、こんなにドキドキして惹かれる人。 
 ……今まで、居ただろうか。

 何なの。ただでさえカッコいいのに。
 そんな風に、瞳を細めて笑ったり、しないでほしい……。


「……い、いつも……こんなこと、してるの?」
「ん? こんなことって?」
「会って、ちょっとで、こんなこと……」

「んー……こんな所で、こんな風にはしたことねーな。完全に合意の、してほしそうな奴にしかしないんだけど……」
「……っ――――……じゃ、なんで、オレに……」

 オレ、絶対、してほしいなんて、思ってなかった。
 ……しかも好みじゃないとか言われてるし。

 そう聞いた優月に、彼は、少し黙って。
 それから首を傾げた。

「……悪い。ほんとに、わかんねえ。 すっげえ興味が湧いたとしか……
 びっくりさせて、ごめんな」

 言いながら、そっと、頬に触れられる。
 触れ方がくすぐったくて、びく、と、体が震える。


「……なあ、どうする?」
「……どうするって?」

「――――……オレと寝てみる?」
「――――……」


 ほんとに、この人は……
 謎すぎて……。

 全然、分からない。

 寝てみるって……
 オレ達が、エッチな事、するってこと……だよね…?

 オレ、会ったばかりの人に、そんなことに、誘われてるの?
 そんなのに乗るように、見えてるの??

 ……しかも、好みじゃないって言われてるのに??

 好みじゃない、てのが、かなり引っかかってる自分。

 ……引っかかるべきは、そこじゃないと、思うのだけど。
 ……じゃあ何、好みだって言われたら、良いのか、オレ??とも思うのだけど。


「……会ったばっかり……だし」
「――――……こういうのって感覚だから、したいかどうかなんてすぐ分かると思うけど。 無理な奴はどんなに会ったって、無理」
「――――……」

「お前は? ――――……オレ、無理?」

 瞳が、妖しく、揺れる。



 ダメだ。
 なんか……吸い込まれそう。


 少なくとも、オレの平穏な世界には、さっきまで微塵も存在してなかったような無茶苦茶なこと、されてるし、言われてるのに。


 なんでオレ――――……
 全然嫌だって、思えないんだろう。





しおりを挟む
感想 791

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

処理中です...