「恋みたい」

悠里

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8.愛しさ

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「オレさ、キスされたの――――……お前なら良かったのにって、思っちゃって……それで気付いた」

「――――……」


 ずっと葵の事、見つめてしまう。言葉が、出ない。


「本当にお前の事しか、考えられなくなって……だからオレ、ここに来た」
「…………」


「……だけどやっぱり、言わずに帰ろうかなって思ってたんだけど……」


 俯いた葵を、オレはただ、じっと、見つめていたのだけれど。
 我慢できなくなって。引き寄せた。

「……葵……」

 葵を、ぎゅ、と抱き締める。


「……お前……オレに好きやて、言いに来たん……?」
「……うん。……でも、ほんと……このまま帰ろうと思ってた」

「――――……」

「だけど、お前がオレの事好きって……言ってくれたから」

 少し離れて。葵は、再びオレを見上げた。


「……ありがと」
「――――……」


 照れくさそうに。嬉しそうに笑うのが。可愛すぎるとか。

 ……やばい。

 ……違うと思い込もうとしてた想いを、
 抑えなくていいんだと思ったら。


 なんだか、ヤバい。


「――――……葵、キス、してええ?」
「え」

 葵が驚くのも当たり前だと思う。
 たった今告白したぱかりなのに。何言ってんだと、言われても仕方ない。


「しょ……消毒やから」
「は……?? ……ああ。消毒……?」

 オレの言葉を一生懸命理解した葵は、しばらく後、おかしそうに吹き出した。


「おまえって……絶対、変……」

 クスクス笑って、オレを見上げてくる。


「やかまし……」
「――――……消毒って……先輩のキスを、てこと、だよな……?」

 ぷ、と葵が笑う。


「……あのさ」

 葵は面白そうに笑ってオレを見上げて。ふ、と瞳を緩めた。


「……消毒じゃなくて――――……普通にしてくんない?」


 そんな風に言って、嬉しそうに笑った葵の頬に触れて。

 見つめ合って。 オレは、唇をそっと重ねた。


「――――……」


 触れるだけ。すぐ離れた


 なんだかもう。心臓が、バクバク言いすぎて、キャパオーバー。
 葵に触れてた手をそのままに、思わず葵の肩に、額、埋めてしまった。 


「大和……?」

 クスクス笑いながら、少し離されて、見つめられる。
 葵の顔も――――……少し赤い。

 可愛いから。笑い続けられても、許すことにして。



 オレは、葵のその頭を、撫でて。 
 もう一度だけ、そっと唇を重ねさせた。


「――――……もっかい、消毒?」

 くす、と笑った葵に。オレは首を振った。



「……好きやから。 したいて思うただけ」
「――――……」

 葵はその言葉に嬉しそうに微笑むと。


「――――……ん。じゃ、オレも……」
「……え?」


 葵の手が、オレの項にかかって。
 くい、と引き寄せられた。

 ゆっくり、オレに唇を寄せて。触れあった瞬間。


 愛しさがMAXで。
 むぎゅ、と抱き締めていた。



「なに、大和……くるしー」

 言いながらも。葵は、腕の中で微笑む。

 ああ、もう。可愛すぎる。
 思わず、空を仰いだら。

 桜の樹と、月が、一緒に、目に飛び込んでくる。

「めっちゃキレーやで。葵」
「……ほんとだ」


 もう。
 二人で一緒に、見惚れるしか、なかった。







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