「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

悠里

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63.教授たちの診察 2

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「希少の中の希少だよ――つか、希少でいったら凛太もだな」
「同じレベルでですか?」
 そんな訳ないよねと思いながら、ふふ、と笑うと、佐川教授はふと、真面目な顔でオレを見た。

「凛太はフェロモンの分泌を妨げる何かがあるのかな――それとフェロモンを受容することができない理由は別かもしれないけど――フェロモンを出したり、感じたりは、精神状態も絡むから、幼少期に何か、とか……色々考えられるけど、心当たりはない?」
「……ないですね。そんな激しい記憶は……」

 若干、父みたいなαが嫌いだっていう潜在意識はありそうだけど、それ位のことで、こんなになるかなあ。
 父のこと言っといた方がいいかなと、思った時、内海教授がオレを見つめた。

「向こうの病院で、そんな話はされなかったのか?」

 その質問に、オレは、あ、と思い出した。

「そんなようなこと、言われました。でも結局、はっきりは分かんなくて、まあ、抑制剤とかも飲まなくていいし、楽だからいいやと思ってて」

 そう言うと、教授たちはオレを見て、ふ、と笑った。

「なんか凛太くんらしいよね。フェロモンが出ないとか、普通は悩みそうなのに」
「でも、医者になるのに、ヒートとか大変だと困りますし。都合が良かったので、悩みもしなかったですね……」

 へえ、と、笑ってから、内海教授はオレを見つめた。

「自分の体質について、どう思う? 率直に」  

 どう思うか。率直に……そんな風にはあんまり考えてこなかった。少し俯いて、考えてから。

「珍しいんだろうなあとは思うんですけど……ずっとこれで生きてきたので……フェロモンが出なくて困ったことが無かったし、そこまで真剣には考えて来てなくて」

「――結婚がしにくい、とか妊娠ができにくいかもって言われたんだよね。でもそれも――ヒートの時には多少あがるかもしれないし」

 ヒートの時には多少上がって――そしたら、妊娠できるかもっていうのを残してくれたのかな。と、佐川教授の気遣いに、笑いながら頷いた。

「まあ確かに、困ることっていうのは限られるかもしれないな」
「確かに。アルファに依存しないってことは、自立性が高いですよね」  
「となると、凛太の症状が、進化って可能性もあるのか?」

「オレ、進化一号ですか? わー、それだとちょっとおもしろいですね」

 本気でそう思って言ったのだけど、二人は「おもしろいって……」と苦笑する。

「あ。竜はどうして、僅かでも感じるんでしょうか。オレ、ヒートになる時ってものすごく具合悪くなるので、多分なる前日には休むんですけど……終わってもう大丈夫と思っても、竜にはなぜかバレる時があって」

 一番不思議に思っていたことを聞いてみると、二人は顔を見合わせてから、オレに向き直った。
 佐川教授が、「可能性の話だからね」と前置き。頷くと、ゆっくり話し始めた。

「凛太くんのフェロモンが、単なる低さではなくて、もしかしたら特定の人にだけ向けられる、ていう性質があるのかもとかは、可能性として、考えられるかなって思うけど」
「……特定、ですか?」
「例えば、相性がいい、とか……近い存在の人にだけ、向けられるし、または、それを感じ取られる。となれば――」
「竜が相性がいいってことですか?」
「――結婚しようとしてる君に言うのは少しためらうけどね。でも、誰にも感じ取れないなら数値が低いってだけで済むけど、誰かには分かるんだとしたら」

 なるほど、と考えて――クスクス笑ってしまった。

「なんかそれだと、運命の相手、みたいですね」

 ふふ、と笑ってしまうと。二人は何とも言えない顔をした。

「可能性の話だよ――この話は断定するには、難しいと思うしね」

「はい。――まあ、竜は、相性いいと思うので。信頼してるって意味では、もしかしたら、一番近いかも。なので、そういうのがもしあるなら、竜が、感じ取るのは、納得かも……でも、それだと、オレも竜のフェロモンを感じるってことになるんですか……? まだ感じたこと、ないですけど」

 顎に触れて、んー、と考えていると。


「まあ、ぼちぼちで。また検査結果、見てみようか」
「話を聞いた限りでは、言ったような色んな可能性が考えられそうだな」

「進化ってことなら、いいかも。抑制剤を飲まなくて済んで、特定の相性のいい人にだけ発せられるフェロモンなら、今みたいな問題も起きにくくなるし」

 考えながらそう言うと、「それが進化だとしても、人が皆進化していくには、ものすごい時間がかかるけどね」と、佐川教授がクスクス笑った。

「そうそう――今回、凛太くんがΩだって聞いて、Ωの薬を作りたいとか言ってる理由も、すごく納得したんだよね」
「熱心な理由も、何となくな。――お前は、偉いな、凛太」

「え」

「自分は楽で、薬が必要な訳でもないのに――苦労してでも、医者の道に進んで、だもんな。もっと楽に生きる道はいくらでもあるだろうに」
「ほんとに」

「教授たちに言われると、ほんとにこの道、長そうですね……」

 苦笑すると、「長いのは分かってるだろ、頑張れ」と内海教授。その横で佐川教授が笑ってる。







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