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49.子供?

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「でも、なんでそんなに真っ赤?」
 すり、と頬を撫でられて、オレの頬よりは冷たい手が、ちょっと気持ちいい。

「なんか……離さなかった、とか……ちょっと恥ずかしいなって思って」
「寝てたんだから気にしなくていいよ。つか、可愛かったし」

 クスクス笑う瑛士さんは、また目を細めてオレを見つめる。その手首をがしっと掴むと、つかつかとテーブルの方に行き、楠さんは瑛士さんを座らせた。

「――とりあえず仕事の話をしましょう」
「……どーぞ」
「やる気出してください」
「……はい、どうぞ」
 変なやり取りをした後、苦笑してから二人は、仕事の話を始めた。

 でももう結構良い時間。オレは、コーヒーを飲みつつ、夕飯の準備を始めることに。
 鍋に昆布と水を入れて、出汁をとる準備と、お米を研いで、炊飯器をセットした。
 今日は瑛士さんのリクエストで、だし巻き卵と、鯖の味噌煮、キュウリの浅漬けと、おみそ汁を作ることになったから……。
 先に浅漬けのみりん。火でアルコールを飛ばして粗熱を取る。その間にキュウリに塩を振って、まな板でコロコロしてから乱切り。調味料とキュウリを入れて、モミモミする。ごま油ちょっと多めが好き……で、冷蔵庫へ。

 サバは切れ目を入れて湯通して水をふき取っておく。二十分位あれば焼けるからこのままおいといて――。
 あっ、きんぴらも作ろう、と思いついて、せっせと下ごしらえをしていると、話を終えたらしい二人が立ち上がった。

「今日のメニューはなんですか?」

 楠さんに聞かれて、いったん包丁を置いてから、カウンター越しにメニューを話すと、美味しそうですね、と微笑む。

「瑛士さん、食べる時は食べるけど、適当な時はほんと適当なので――栄養取らせてもらえると助かりますね。でも大変だったら、無理しなくていいんですよ。食事作りは、もちろん契約には入れてないですし」

 契約には。ん、まあそうだけど。
 ――契約。うん。そうだ、契約書も、ちゃんと正式にって言ってたっけ。

「オレも、母親が亡くなってからは、適当だったのですけど……食べてもらえるの楽しいので、大変とかはないです」

 そう言うと、楠さんは、ふ、とまっすぐにオレを見つめた。

「――凛太くんが楽しいなら、もちろん、いいんですけど」

 くす、と笑う楠さんに、はい、と笑い返すと。

「――なんか京也さん、凛太に優しいね」
「……は?」

 すごく嫌そうに、楠さんは瑛士さんを見た。

「その言葉、瑛士さんには言われたくないのと――私は、基本皆に優しく接してますが?」
「そうだけど、なんか――凛太、可愛がってる?」
「ほんと、その言葉、瑛士さんには言われたくないですけど……」

 呆れたように息をついて、ちらっとオレを見る。

「まあ……なんとなく、瑛士さんが可愛がる理由、分かりますけど」

 そう言う楠さんに、瑛士さんは何でか、ちょっとムッとしてる。

「瑛士さんや楠さんから見たら、オレなんて、すっごく子供ですよね」

 まあ年も下だから、仕方ないとは思うのだけど。
 ふ、とため息をついてしまった時。楠さんは首を傾げた。

「凛太くんが、子供っぽいから、可愛いって言ってる訳じゃないですよ?」
「――」

「まあ確かに若いなとは思いますけど」

 クスクス笑う楠さん。瑛士さんも、オレを見ながら、「子供だからとか、そんなこと思ってたの?」と微笑むと、オレの隣に歩いてきた。


「なんか一生懸命で、それが可愛いし。――いい意味で、すごく、面白いからだよ」

 よしよし、と撫でられる。


「撫でられた時の、その顔が、可愛くて」
「……どんな顔してますか?」

「――嬉しそう」

 ふふ、と笑う瑛士さん。ええ……そうなの??……オレが固まっていると。
 楠さんはため息をっいた。

「ですから、接触禁止です、瑛士さん」
「いいじゃん、頭撫でるくらい」

「後ろから抱き締めるのはやめましょうね」
「というか、寒そうに震えてて、もう小動物みたいだったんだけど。抱き締めるでしょ、可愛くて」
「瑛士さん、可愛い可愛いって、どんだけ言ってるか、自覚ありますか?」
「――まあ少しはあるけど」

「ちょっと一回、拓真さんにも来てもらいましょうね」
「――あいつ、うるさいから、いいよ」

 苦笑の瑛士さんに笑いながら、ふと楠さんが瑛士さんを見つめる。

「瑛士さん、とにかく会長と話を早くして頂かないと、式のことなど全部、本格的に進められませんから」
「分かってるけど、忙しいって」
「結婚の話だとは言ったんですか?」
「いや。会う時に話そうと思ってて――だって電話で言ったら、何て言われるか……押しかけてくるよ……」
「結婚と言ったら確かに飛んできそうですけれどね。その方が早くていいかもです。とりあえず、大事なお話だと、もう一度伝えてください」

 一つ聞きたくて、その話が終わるのを待っていたら、気付いた瑛士さんに「ん?」と聞かれる。

「会長って、おじいさんなんですか?」
「ああ、そう。オレがCEOって言っても、初だし、経験の浅さは、じいちゃんがフォローってことで決まったから。重要な決定とかは、まだまだ完全にじいちゃんだし。まあ、一線は退いたけど、まだまだ、元気に飛び回ってるよ」


 なるほど。
 瑛士さん、似てるのかな。
 似てたら、超カッコいいおじいちゃんなんだろうなあ。

 なんて想像すると、ちょっと会うの楽しみ。


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