「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

悠里

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7.三年間

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「つまりね、オレは今やってるプロジェクトに集中したい。余計なことに邪魔されたくない。いろいろ申し込まれるのは困るから、結婚するのが良いと思うけど、それも出来ない。だから――三年間、結婚の契約をして、オレの番になってくれる人が居たらいいけど、そんなの居ないよな……と思って歩いてたら、君が、怪しげな店の前でウロウロしてたんだよね。運命っぽくない?」
「――はは」

 笑ってしまう。そんなタイミングで、オレを見たんだ。
 Ω専用の怪しい店の出入り口で進んだり戻ったりしてたもんな、オレ。

 おそらくお金が欲しくて、怪しい店に入るか悩んでるΩ。
 確かに、北條さんが、あ、って思うのも、なんか分かってしまうかも。

「少し話して、変な人だったらもちろん、この話はしなかったんだけど――」
「――変な人じゃなかったですか? オレ」

 面白くて聞いてみたら、北條さんはクスクス笑って頷いた。

「うん。医者になりたくて、頑張ってる人、でしょ。オレ、それも応援したいし」
「――」

「あ。ちょっと気になるのは――どうして、父親を嫌いなのか、簡単に話せる? 話せる範囲でいいけど」
「別に隠すほどのことじゃないので……えーと、ですね」

 何で嫌いか、ちょっと考えてみる。

「Ωの母は、αの父の愛人で……母が亡くなったら、オレの面倒はみるって言って、住まいとお金はくれました。父は母に、オレがαだったら引き取ったのに、とか言ってたことがあって……あ、オレは父には、βって言ってあります。Ωだったら、多分へんなとこに嫁がされそうなので。――父には他にも愛人がいて……まあ、いろいろスペックは高い人なんでしょうけど。オレの嫌いなαの典型みたいな人です」

 なんだかめっちゃすらすら嫌いな理由が出てきてしまった。
 言葉に出したの初めて。だけど、そうか、そういうのが、やっぱり、オレはすごく嫌なんだ。
 自分でもなんだか妙に納得していると。

「――ん、分かった。ありがとね」

 黙って、じっと聞いてくれていた北條さんは、静かに頷いて、そう言うと、少し黙った。

「――オレも、そういうαは、嫌いだから。よく分かったよ」
「――」
「Ωの君に契約結婚とか持ち出してて、それもとんでもないやつって思うかもしれないけど……多分、話聞いてると、利害が一致しそうだから、話してる。最後まで聞いて、断ってくれてもいいからね?」
「はい」

 不思議と、とんでもないとは、思っていない。
 ――父とは、全然違う人種な気がする。

「で、オレとしては、今、とにかく結婚をしてしまえば、色々なことに邪魔されなくてすむ。三年間、必死で取り組める状況が欲しい。――それで……君の、メリット、なんだけど」
「はい」

「デメリットは、戸籍のことが一番だと思うけど……まず、契約してくれたら、新居として、オレの部屋の隣に、めちゃくちゃ良い部屋をあげる。オレの部屋とは別ね。貸すんじゃなくて君のものにする。期間が終わっていらなかったら、オレに売ってくれたらいいよ。言い値で買い取るから。君は、父親の名義の家に住みたくないんでしょ?」
「はい。ていうか、そんなのいいんですか……?」
「結婚してるのに一緒に住んでないとおかしいから、そこに住んでほしい。これはオレのお願いだから――最上階を買い取ってるから、その階に住んでくれれば、他人にはバレないから」
「なるほど……」

 なんか話のスケールが大きすぎて、くらくらする。

「あれですか、その階に住んでる人しかとまらないエレベーターとかですか?」
「そうだよ。そのために買い取ってる」
「……なるほど」

 ただ頷く。しかできない。

「凛太くんが働かずに、勉強を続けられるのに余裕な額を、報酬として渡す。言い値でいいよ。ただ、たまにあるパーティーは、仕事だと思って、付き合って。それはまたボーナス支給する」
「――ていうか、ほんとにいいんですか」
「あのね、オレ、遺産もついで、自分でも稼いでるし、CEOになっちゃったし――掃いて捨てても困らない位、お金は持ってるんだけど……それを、オレが今一番求めてることを得るために使うだけ」
「北條さんがほしいのって」
「見合いや結婚を迫られない、告白されない、そういう目で見られない、環境。独身でいる限り、無理みたいだから」
 何だか疲れたように、ため息をついてる。

 ――うん。分かるなあ。
 トリプルSのαで、ただならぬお金持ちで、肩書きもあって、こんな感じの、いい意味でαっぽくない、やわらかい感じの人。で、若くて、独身でカッコいい。モテないわけないよな。わー。

「ていうか、オレ、恨まれないですか……??」
「ん?」
「……北條さんを好きな人に」
「大丈夫だよ。オレが大事にしてるって言ったら、そこに害をなす奴なんか、居ない。パーティーに出る時だけ着飾ってもらって、普段は今みたいに普通の感じで居て貰えば、分かんないと思うし――とりあえず、君が困ることのないよう、そのつど、最大限で援助するつもり」

「――なるほど……」

 そうか。日本で有名なグループ会社のCEOだし、偉いおじいちゃんのお気に入りとか言ってたし……逆らう人、居ないのか。ふむふむ。


「だからね、凛太くん」
「はい」

「良かったら、オレと、三年間の、契約結婚をしてもらえませんか?」

 まっすぐに、にっこり微笑んで、そう言われて。
 ふ、と笑ってしまった。



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