6 / 85
6.契約結婚。
しおりを挟む「戸籍にバツがつくのとかは、やっぱり嫌?」
うーん……?
しばらく考えて、首を傾げてしまう。
「――そう、ですねぇ……いや、そもそも、戸籍の紙なんて見ないし、別に、バツがついたからって、何の関係もないですけど……?」
「――契約結婚をしたことによって、バツがついても?」
「契約結婚……?」
「色んな事情で契約結婚をして、それを解消する時に、バツがついたら嫌かな?」
「――」
何の話だろうと思いながら、その状況を考えてみるけど。
「事情があって、それをして、バツがつくなら、別に……って感じですね。そもそも戸籍、父が父としてある時点で、別に綺麗じゃない気がしてるので」
考えながらそう答えると、北條さんは、ふ、と苦笑する。
「よっぽど、嫌いなんだね、父親のこと」
「まあ、そうですね。良い思い出もないので。だから別にバツがついても――」
そこまで言って、ふっと、この会話の意味に気付いた。
「北條さんって、今、オレに、契約結婚の話をもちかけてたりしますか……?」
「ビンゴだねぇ。さすが。賢いね」
さすがってどこから来てるんだろうと思いながら、明るい笑顔に、苦笑してしまう。
「今から事情、ちゃんと説明するから」
と、その時、部屋がノックされた。飲み物を届けにきた店員さんを、北條さんは見上げた。
「申し訳ないんだけど、今日は大事な話をしたいから、料理をなるべくまとめて用意してもらえますか?」
そう言った北條さんに、店員さんはにっこりと笑い、了解してから、部屋を出て行った。
「とりあえず飲み物だけ。じゃあ――そうだね。今日の出会いに、乾杯しよ」
そっとグラスを差し出されて、オレもグラスを持って軽く合わせた。一瞬、澄んだ音が響く。ひと口飲んだところで、北條さんがオレをまっすぐに見つめる。
「オレね、今、どうしてもやりたいことをやっていてね――三年くらいはかかるかなって、思ってるんだけど」
「はい」
「――実は、オレ……まあ、わりとモテるんだけどね……CEOになっちゃったら、本当、独身でいることが問題ある、みたいな、そんな感じで、見合いの話とかがすごい訳」
「……はぁ」
実は、わりと、とか前置きはいらないけどな。見るからに、絶対モテると思うし。
「告白されたり、そういう意味で意識されたり――Ωの子からは、ヒートで誘われたり、そういうことが、すごく多くて。やりたいことに集中したいのに、わずらわしいことが多すぎるわけ。結構偉い人からも、見合い写真とか届くから、無視するわけにはいかなくて、断るのも正直時間を取られるし、数が多いとものすごい手間なんだよね」
「……まあ、なんとなく、予想はつきます」
「結婚したら落ち着く、とも思ったけど――オレ、三年くらいは、忙しくて、今結婚したって、家庭を顧みることは出来ないと思ってさ。そんなの、結婚した相手が、不幸でしょ?」
「そうですね。結婚しない方が、相手の為ですね」
そこまで言って、ああ、そういうことか、と分かった。
オレの顔を見て、「悟ってくれたでしょ」と、北條さんが笑う。
1,411
お気に入りに追加
3,097
あなたにおすすめの小説


美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

手の届かない元恋人
深夜
BL
昔、付き合っていた大好きな彼氏に振られた。
元彼は人気若手俳優になっていた。
諦めきれないこの恋がやっと終わると思ってた和弥だったが、仕事上の理由で元彼と会わないといけなくなり....
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる