131 / 140
第四章
42.別の部屋*真奈
しおりを挟む食事の後、瀬戸さんが俊輔に一緒に飲む酒を買いに行こうと言った。俊輔は一瞬オレのことを見たけれど。多分、表情で察知してくれたんだと思う。
「お前はレポートだよな?」
そう言ってくれたので、うん、と頷く。
「息抜きした方がいいけどね?」
瀬戸さんのお誘いも適当にあしらいながら、俊輔が瀬戸さんを連れて、出て行った。それを見送ってから、ふーと息をつく。
瀬戸さんはいい人そうだし、別に俊輔と嫌な関係って感じでもなさそう。
……なんか、あれだよね。主人が居ないのに家に入ってきたり、突然泊まる、とか。一般人のおうちとは違う感じ。
オレには分かんないなぁ……と思いながら俊輔の部屋に戻って、とりあえず、ほんとにレポートは終わらせないと、と、一応机に座る。瀬戸さんのおかげで大分進んだ一つは、すぐ終わらせられそう。
考えても無駄そうなことは考えるのはやめて、必要なことを、やっちゃおう。
と、コンコンとノックの音。
「――真奈さん」
「あ、はい」
西条さんを振り返ると、少し首を傾げながら、入ってくる。なんか、そんな感じは珍しい。なんだろう、と思って、体も完全に振り返ると。
「若に言われまして……今日から、別のお部屋をご用意します」
「――」
「一週間ほどと言ってましたので、その期間だけそちらでお過ごしください」
「あ……分かりました」
そういうことか。瀬戸さんが居る間は、一緒に寝るとかは、しない方がいいってことか。うん。それがいいかも。あの子の時は、最悪だったしと、少し前の嵐みたいな女の子を思い出す。
「お洋服なども、そちらに移して、生活してる風を装いましょう。今出てる間にすませておくように、言われました」
「分かりました。じゃあレポートとかもそっちで……」
机を片付けようとしたオレに、西条さんは少し固まって、いえ、と言った。
「先ほど、若が居ない時には、こちらで勉強していたのでそのままの方が良いと思います。昼間は若の部屋で過ごして、寝たりするときは部屋に自分の部屋、というのも、不自然ではないでしょう。この机、広くて勉強しやすそうですしね」
「分かりました」
頷いて、勉強道具はもう一度開いた状態に戻した。
「洋服とか歯ブラシとか、用意します」
「はい。部屋を整えてきますので、準備してお待ちください」
「はい」
和義さんが部屋を出ていくのを見送ってから、ふ、と息をついて立ち上がった。
「――」
謎すぎる。
……何でここに居るのか。そもそも分かんないまま、ここに居るのに。
オレは俊輔とどんな関係で、どう隠さなきゃいけないことがあるのか。
瀬戸さんに知られたくないのは、面倒くさそう、だからかなって気がする。あの対応を見てると、詳しく言いたくないからって気が。
オレ、あんまり隠すのとか得意じゃないから、あんまり関わらない方がいいだろうなぁ。まあでも、この土日が終わったら、平日学校だし。一週間なんて、そんなに絡まずにいられるかもしれない。
俊輔と瀬戸さんが飲んでる時とかはもう、そっちの部屋で勉強するとか言って帰ればいいし。うんうん、そうしよう。そう思うと、なんとか乗り切れそうな気がしてきた。
383
★読んでくださってありがとうございます(^^)
★楽しんで頂けてましたら、ブクマ&感想などよろしくお願いします♡(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
★楽しんで頂けてましたら、ブクマ&感想などよろしくお願いします♡(好き♡とか短くても嬉しいです♡)
お気に入りに追加
1,379
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

なかなか手を出してこないαを誘惑するΩの話
加賀ユカリ
BL
なかなか手を出してこないαを誘惑するΩの話
Ωである佐竹琉生(さたけ るい)からの熱烈なアタックにより恋人になった、真田陽太(さなだ ようた)(α)と琉生(Ω)。
念願叶って恋人になったが、琉生はある悩みを抱えていた──
攻め:真田陽太(高校2年)α。真面目な性格。
受け:佐竹琉生(高校1年)Ω。明るい性格。美形であり人気者。α一族の息子でお金持ち。
・オメガバース独自の設定あります
・性描写のある話には※を付けています
19時に更新、3月上旬完結予定です

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる