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第四章
42.別の部屋*真奈
しおりを挟む食事の後、瀬戸さんが俊輔に一緒に飲む酒を買いに行こうと言った。俊輔は一瞬オレのことを見たけれど。多分、表情で察知してくれたんだと思う。
「お前はレポートだよな?」
そう言ってくれたので、うん、と頷く。
「息抜きした方がいいけどね?」
瀬戸さんのお誘いも適当にあしらいながら、俊輔が瀬戸さんを連れて、出て行った。それを見送ってから、ふーと息をつく。
瀬戸さんはいい人そうだし、別に俊輔と嫌な関係って感じでもなさそう。
……なんか、あれだよね。主人が居ないのに家に入ってきたり、突然泊まる、とか。一般人のおうちとは違う感じ。
オレには分かんないなぁ……と思いながら俊輔の部屋に戻って、とりあえず、ほんとにレポートは終わらせないと、と、一応机に座る。瀬戸さんのおかげで大分進んだ一つは、すぐ終わらせられそう。
考えても無駄そうなことは考えるのはやめて、必要なことを、やっちゃおう。
と、コンコンとノックの音。
「――真奈さん」
「あ、はい」
西条さんを振り返ると、少し首を傾げながら、入ってくる。なんか、そんな感じは珍しい。なんだろう、と思って、体も完全に振り返ると。
「若に言われまして……今日から、別のお部屋をご用意します」
「――」
「一週間ほどと言ってましたので、その期間だけそちらでお過ごしください」
「あ……分かりました」
そういうことか。瀬戸さんが居る間は、一緒に寝るとかは、しない方がいいってことか。うん。それがいいかも。あの子の時は、最悪だったしと、少し前の嵐みたいな女の子を思い出す。
「お洋服なども、そちらに移して、生活してる風を装いましょう。今出てる間にすませておくように、言われました」
「分かりました。じゃあレポートとかもそっちで……」
机を片付けようとしたオレに、西条さんは少し固まって、いえ、と言った。
「先ほど、若が居ない時には、こちらで勉強していたのでそのままの方が良いと思います。昼間は若の部屋で過ごして、寝たりするときは部屋に自分の部屋、というのも、不自然ではないでしょう。この机、広くて勉強しやすそうですしね」
「分かりました」
頷いて、勉強道具はもう一度開いた状態に戻した。
「洋服とか歯ブラシとか、用意します」
「はい。部屋を整えてきますので、準備してお待ちください」
「はい」
和義さんが部屋を出ていくのを見送ってから、ふ、と息をついて立ち上がった。
「――」
謎すぎる。
……何でここに居るのか。そもそも分かんないまま、ここに居るのに。
オレは俊輔とどんな関係で、どう隠さなきゃいけないことがあるのか。
瀬戸さんに知られたくないのは、面倒くさそう、だからかなって気がする。あの対応を見てると、詳しく言いたくないからって気が。
オレ、あんまり隠すのとか得意じゃないから、あんまり関わらない方がいいだろうなぁ。まあでも、この土日が終わったら、平日学校だし。一週間なんて、そんなに絡まずにいられるかもしれない。
俊輔と瀬戸さんが飲んでる時とかはもう、そっちの部屋で勉強するとか言って帰ればいいし。うんうん、そうしよう。そう思うと、なんとか乗り切れそうな気がしてきた。
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